時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

孤宿の人(上)

2009-12-06 | 読書
江戸から
金比羅代参で
讃岐国を訪れた九歳の少女ほうは
丸海の港で置き去りにされ
たった一人
見知らぬ土地に取り残される
幸い
丸海藩の藩医・井上舷洲宅に
奉公人として住み込むことになった
そして半年

この丸海の地に
幕府の罪人・加賀殿が流されてくることに
海うさぎが飛ぶ夏の嵐の日
加賀殿の所業をなぞるかのように
不可解な毒死や怪異が井上家と丸海藩を襲う…


久しぶりに
宮部作品を拝読しました

人間の心の
‘光と闇’‘信と疑’‘善と悪’‘慈愛と残酷’等々
相反する感情が見事に絡んでます
誰の内にも
常に表裏一体で存在している感情が
今更ながら
切なく悲しく
しかし恐ろしい

それぞそれの思惑の中
モノの見方・判断の基準を知らぬ
まっさらな九歳の‘ほう’が
この先
如何なる運命に翻弄されて行くのか

モノの道理を
世の中を
どう見極めて生きるのか

上巻は
下巻への序章的な感じなので
テンポが遅いと申しますか
江戸下町の人情モノとは
受ける印象が違いました
正直
読み進むのに多少の忍耐と我慢が必要でした

‘ほう’にしても
‘加賀殿’にしても
江戸から遠く離れた讃岐国丸海藩で
穏かな暮らしは…