政府の外交・安全保障政策の司令塔となる「国家安全保障会議」(日本版NSC)創設関連法が2013年(平成25年)11月27日の参院本会議で成立しています。
NSC法は、外交・安全保障政策の迅速な意思決定や情報の一元化を図るため、首相と官房長官、外相、防衛相による「4大臣会合」を2週間に1回程度開催し、内閣官房に事務局の「国家安全保障局」(安保局)を新設するのが柱。
NSCは米国や英国など各国の情報機関と緊密に連携して情報交換を行うため、政府は機密を漏らした公務員らへの罰則強化が不可欠と判断。同2013年(平成25年)12月6日、特定秘密保護法が成立しました。
すでに成立したNSC法と特定秘密保護法、それに閣議決定済みの集団的自衛権が実際に運用されると、こんな感じですというのが下に記載するシミュレーション・ストーリーです。まだ重要案件の決定が行われたことがないので、このストーリーの細部について、「現実的でない」と批判することはいくらでもできるでしょう。
でも、「このようなもの」というイメージをつかむことは、私たちにとって大いに有益です。このストーリーは、古賀茂明著「国家の暴走」から転載しました。古賀氏は元経済産業省のキャリア官僚ですから、このストーリーは「このようなもの」というには十分なストーリーと考えます。
「国家の暴走」(角川oneテーマ21)は新書版で読みやすいものです。本の前半は安全保障分野(≒集団的自衛権、軍事)、後半は経済と雇用について書かれています。手軽に読める内容ですので、このたびの衆院選の参考にお読みになることをお勧めします。
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<シミュレーション・ストーリー>
◎総理 「ホワイトハウスから、中東のⅩ国に対して米国の自衛のために先制攻撃をするから日本も参戦してくれと言われた。ぜひ参戦したい。集団的自衛権の行使だ」
◎A大臣 「しっかりした根拠がなければ、国民に説明できません」
◎総理 「大丈夫だ。根拠を聞かれたら『特定秘密だから明かせない』と言えばいい」
◎A大臣 「あとでガセだとわかったらどうするんですか。イラク戦争の時もそうだったんですよ、総理。とてももちませんよ。
◎総理 「だから、秘密はいつまでも延長できるようにしてある。30年後に内閣で見直すといっても、そこで延長すれば60年秘密にできる。その頃には、我々は皆、死んでるよ」
◎A大臣 「私は反対です。間違って日本が戦争に巻き込まれて多くの死傷者を出したら大変ですよ。それに、国会の情報監視審査会で、米国の情報を提出するように言われますよ」
◎総理 「そういう時のために、情報監視審査会の勧告には強制力を持たせないことにしたんだ。出せと言われても無視すればいいんだ」
◎A大臣「こんな重要なことを四人だけで決めるべきではありません。ただちに閣議を招集して下さい」
◎総理 「何を言っているんだ。そんなことをしたら公明党のⅩ大臣が反対するし、いろんな議論が出て大変だ。そもそも簡単に決めるためにこのNSCを作ったんじゃないか」
◎A大臣 「しかし、戦争開始には野党が大反対でしょう。国会が動かなくなりますよ」
◎総理 「みんなの党や次世代の党は賛成してくれるさ。維新も乗ってくれるんじゃないか。民主だって、賛否が割れるだろう。野党のご理解も頂いたと言って進めればいい」
◎A大臣「それにしても、国民は黙ってませんよ。選挙も近いですし」
◎総理「大丈夫だよ。国民は少し時間が経てば忘れるよ。今までもいつもそうだっただろう? それに、石油が止まったら国民生活が大打撃を受ける! 中小企業が倒産する! 北国の人達が冬を越せなくなる! と10回叫べば、国民はついて来るんだよ。世論といったって、反対するのは、朝日と毎日と東京だろう。気にすることはないよ」
◎A大臣 「(事務方の方を向いて)私の反対意見はちゃんと記録してくれよ」
◎事務局 「これは単なる個人メモです。議事録ではありません」
◎B大臣 「Aさん、非公開の会議の議事録は、今でも。都合の悪いところはいつも事務方でうまくカットしてくれてましたよね。ご自分もそうやって来られたんじゃないですか。今回だけ、全部正確に書けといっても、大臣、それは無理ですよ」
◎A大臣 「総理! 議事録に私の発言を正確に記録するように指示してください」
◎総理 「こういう大事なことは官僚諸君に任せた方がいいと思いますよ。議事録は作るかどうかだけの議論で終わってよかったね。録音や録画をしろと言われてたら厄介だったな」
◎A大臣 「こんなことじゃ国民をだましていることになりますよ。大嘘つきじゃないですか」
◎総理 「馬鹿なことを言っちゃ困るよ。私がいつ嘘をつけと言いましたか。単に議事録は事務方に任せると言っただけですよ。結果的に、国民が読みやすいように、多少の整理とか取捨選択というのはあるかもしれないけど、噂つき呼ばわりされるのは心外だな」
◎A大臣 「それでは私の信念にもとります。そこまで言われるなら、会議終了後に、私はこの会議で参戦に反対したことを記者会見で発表させていただきます」
◎総理 「今日の会議でどんな議論をしたかを明らかにすると、わが国の安全保障に著しい支障をきたす恐れがあるから、議論の内容は特定秘密に指定することにした。だから、そういう議論があったことを喋るだけでも、君は懲役10年の重罪を犯すことになるよ。そんなことだけはさせたくないんだ。ここはおとなしく従ってくれ」
◎A大臣 「そんな脅しには屈しませんよ。(他の閣僚に)こんなことでいいんですか? みんなで共同記者会見を開いて、この議論を国民に伝えましょう」
◎総理 「Aさん、そう興奮しないで。この会議の内容は、全面的に特定秘密に指定します。私の判断です。ですからこれは外に出してはいけないんです。冷静に聞いてください」
◎A大臣 「別に興奮なんかしてません。B大臣、どうですか、やっぱりおかしいでしょ。一緒に記者会見で真実を伝えましょう」
◎総理 「A大臣、それを言ったら、特定秘密漏洩の教唆または共謀罪ですよ」
総理がドアの方を見て、事務方を促す。ドアから私服警察官が登場。
◎警察官 「A大臣、特定秘密保護法第25条の罪(特定秘密漏洩の共謀教唆煽動)で現行犯逮捕します」
◎A大臣 「ふぎけるな。そんなことに従う義務はない!」
◎警察官 「お話は、署の方でゆっくりうかがいます」
A大臣が警察官に連行される。
◎総理 「皆さん、今のやり取りもA大臣逮捕の理由も、すべて特定秘密ですから口外しないように。もし喋ったら、A大臣と同じ運命が待っていますよ」
翌日、朝刊の一面に大きな見出しが躍った。
「A大臣更迭 原発問題で対立か」
そして、1週間後の記事。「A前大臣、収賄容疑で取り調べ」
その後、日本は米国とともにⅩ国と戦争をする世界で唯一の国となった。米国の他の同盟国は、米国の要請に対して、戦争の必要性、正当性に疑問が残るとして参戦を拒否した。この戦争でⅩ国の多数の民間人が犠牲になるが、のちに、米国が提供した情報が、Ⅹ国亡命者による捏造情報だったことが判明。それ以降、日本はテロリストに狙われる国になり、各地でテロが頻発。東京は世界で最もテロの危険性が高い都市となり、オリンピックが安全に開催されるかどうかも危ぶまれるようになってしまった――。
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<私のアピール>
安倍政治は、2012年末政権成立以後の短年月に、武器輸出3原則を廃し、特定秘密保護法の新設、憲法9条解釈変更の7・1閣議決定(集団的自衛権ほか)と、軍事関連政策ばかり急激に推進しています。安倍首相の主関心事は軍事整備にあります。
安倍首相の経済政策は単純なもので「円安一本」です。円安は輸出大企業を利しますが、その反対に輸入に大きく頼っている生活関係物価高を招きます。円安経済はわたしたちの生活費にはマイナスそのもので、良いことなどありません。