川本ちょっとメモ

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<資料> 衆議院憲法審査会参考人違憲発言に対する政府見解等への質問に対する答弁書(新三要件について)

2015-09-11 08:35:31 | Weblog



6月4日、衆議院憲法審査会において招致参考人3名の学者がいずれも、今の第189国会に提出された安全保障法案が「憲法違反」であると、意見を述べました。このことについての鈴木貴子議員提出質問主意書、質問に対する政府答弁書(以後ごのブログでは「2015年政府見解」という)を、資料掲載します。次の記事「安倍政権・自民・公明の「集団的自衛権合憲論」トリック
(3) 文章をいじって含意を逆転させる」
の材料としての意味がありますので、併せてお読みいただければありがたいです。

◇次代以後の政権をも拘束する憲法9条解釈の規範的文書

1.この答弁書は、自衛のための武力行使発動「新3要件」が、昭和47年
  10月14日政府提出資料「集団的自衛権と憲法との関係」
(以後この
  ブログでは「1972年政府見解」という)
に理論的根拠を置いてい
  る、従って「合憲である」と理由説明している。

2.この答弁書は、約1/3を「1972年政府見解」の説明に費やし、約
  2/3を新3要件が「合憲である」という説明に費やしています。整理が
  行き届いた文章であること、新3要件の説明がていねいで文字量が多いこ
  とから、次代以後の政権に対しても、「憲法9条解釈の規範的文書」
  にしたいという意図が読み取れます。

3.この答弁書は、「1972年政府見解」に立脚していることから、その
  解説書という性質があります。

4.この答弁書には、集団的自衛権を合憲にするための、文章上のトリック
  があります。これは次回『安倍政権・自民・公明の「集団的自衛権合憲
  論」トリック(3終) 文章をいじって含意を逆転させる』で述べる予
  定です。

記載順序は、答弁書を先に、質問主意書を後にしました。
答弁書本文に【1】~【10】の番号を振りました。
答弁書本文の「例外的」を含む言葉4カ所を青字表記しました。

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平成二十七年六月十九日受領
答弁第二五九号

  内閣衆質一八九第二五九号
  平成二十七年六月十九日

内閣総理大臣 安倍晋三

       衆議院議長 大島理森 殿

衆議院議員鈴木貴子君提出衆議院憲法審査会に招致された参考人の発言に対する政府の見解等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


衆議院議員鈴木貴子君提出衆議院憲法審査会に招致された参考人の
発言に対する政府の見解等に関する質問に対する答弁書



一から四までについて

【1】 「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(平成二十六年七月一日閣議決定)でお示しした「武力の行使」の三要件(以下「新三要件」という。)は、その文言からすると国際関係において一切の実力の行使を禁じているかのように見える憲法第九条の下でも、例外的に自衛のための武力の行使が許される場合があるという昭和四十七年十月十四日に参議院決算委員会に対し政府が提出した資料「集団的自衛権と憲法との関係」で示された政府見解(以下「昭和四十七年の政府見解」という。)の基本的な論理を維持したものである。この昭和四十七年の政府見解においては、

【2】(一)まず、「憲法は、第九条において、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているが、前文において「全世界の国民が・・・・平和のうちに生存する権利を有する」ことを確認し、また、第一三条において「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、・・・・国政の上で、最大の尊重を必要とする」旨を定めていることからも、わが国がみずからの存立を全うし国民が平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らかであつて、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。」としている。

【3】この部分は、昭和三十四年十二月十六日の砂川事件最高裁判所大法廷判決の「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」という判示と軌を一にするものである。

【4】(二)次に、「しかしながら、だからといつて、平和主義をその基本原則とする憲法が、右にいう自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであつて、それは、あくまで外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るための止むを得ない措置としてはじめて容認されるものであるから、その措置は、右の事態を排除するためとられるべき必要最少限度の範囲にとどまるべきものである。」として、このような場合に限って、例外的に自衛のための武力の行使が許されるという基本的な論理を示している。

【5】(三)その上で、結論として、「そうだとすれば、わが憲法の下で武力行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであつて、したがつて、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。」として、(一)及び(二)の基本的な論理に当てはまる例外的な場合としては、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるという見解が述べられている。

【6】 一方、パワーバランスの変化や技術革新の急速な進展、大量破壊兵器などの脅威等により我が国を取り巻く安全保障環境が根本的に変容し、変化し続けている状況を踏まえれば、今後他国に対して発生する武力攻撃であったとしてもその目的、規模、態様等によっては、我が国の存立を脅かすことも現実に起こり得る。

【7】 新三要件は、こうした問題意識の下に、現在の安全保障環境に照らして慎重に検討した結果、このような昭和四十七年の政府見解の(一)及び
(二)の基本的な論理を維持し、この考え方を前提として、これに当てはまる例外的な場合として、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるとしてきたこれまでの認識を改め、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合もこれに当てはまるとしたものである。

【8】すなわち、国際法上集団的自衛権の行使として認められる他国を防衛するための武力の行使それ自体を認めるものではなく、あくまでも我が国の存立を全うし、国民を守るため、すなわち我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として、一部、限定された場合において他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とする武力の行使を認めるにとどまるものである。したがって、これまでの政府の憲法解釈との論理的整合性及び法的安定性は保たれている。

 新三要件の下で認められる武力の行使のうち、国際法上は集団的自衛権として違法性が阻却されるものは、他国を防衛するための武力の行使ではなく、あくまでも我が国を防衛するためのやむを得ない必要最小限度の自衛の措置にとどまるものである。

【9】 憲法の解釈が明確でなければならないことは当然である。もっとも、新三要件においては、国際情勢の変化等によって将来実際に何が起こるかを具体的に予測することが一層困難となっている中で、憲法の平和主義や第九条の規範性を損なうことなく、いかなる事態においても、我が国と国民を守ることができるように備えておくとの要請に応えるという事柄の性質上、ある程度抽象的な表現が用いられることは避けられないところである。

【10】 その上で、第一要件においては、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」とし、他国に対する武力攻撃が発生したということだけではなく、そのままでは、すなわち、その状況の下、武力を用いた対処をしなければ、国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかであるということが必要であることを明らかにするとともに、第二要件においては、「これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと」とし、他国に対する武力攻撃の発生を契機とする「武力の行使」についても、あくまでも我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置に限られ、当該他国に対する武力攻撃の排除それ自体を目的とするものでないことを明らかにし、第三要件においては、これまで通り、我が国を防衛するための「必要最小限度の実力の行使にとどまるべきこと」としている。

 このように、新三要件は、憲法第九条の下で許される「武力の行使」について、国際法上集団的自衛権の行使として認められる他国を防衛するための武力の行使それ自体ではなく、あくまでも我が国の存立を全うし、国民を守るため、すなわち我が国を防衛するためのやむを得ない必要最小限度の自衛の措置に限られることを明らかにしており、憲法の解釈として規範性を有する十分に明確なものである。

【11】 なお、ある事態が新三要件に該当するか否かについては、実際に他国に対する武力攻撃が発生した場合において、事態の個別具体的な状況に即して、主に、攻撃国の意思・能力、事態の発生場所、その規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮し、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民が被ることとなる犠牲の深刻性、重大性などから客観的、合理的に判断する必要があり、あらかじめ具体的、詳細に示すことは困難であって、このことは、従来の自衛権行使の三要件の第一要件である「我が国に対する武力攻撃」に当たる事例について、「あらかじめ定型的、類型的にお答えすることは困難である」とお答えしてきたところと同じである。

 以上のとおり、新三要件は、従前の憲法解釈との論理的整合性等が十分に保たれている。
 お尋ねの個人の発言について、政府として見解を述べることは差し控えたい。


五について

 多くの国民の皆様に、第百八十九回国会に提出した我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案の内容を御理解いただき、幅広い御支持が得られるよう、国会審議において、分かりやすく、丁寧な説明を心掛け、今国会における確実な成立を期していく。

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平成二十七年六月九日提出
質問第二五九号

衆議院憲法審査会に招致された参考人の発言に対する政府の見解等に関する質問主意書
提出者  鈴木貴子


衆議院憲法審査会に招致された参考人の発言に対する政府の見解等に関する質問主意書


 本年六月四日の衆議院憲法審査会で参考人として招致された、自民、公明、次世代の各党が推薦した長谷部恭男氏、民主党が推薦した小林節氏、維新の党が推薦した笹田栄司氏の憲法学者三人が、集団的自衛権を行使可能にする新たな安全保障関連法案(以下、「法案」とする。)について、いずれも「憲法違反」との見解を示した。三氏はいずれも以下のような発言をしている。

〇長谷部恭男氏: 「集団的自衛権の行使が許されるというその点について、憲法違反であるというふうに考えている。従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかず、法的な安定性を大きく揺るがすものであるというふうに考えている。」(以下、「長谷部発言」とする。)

〇小林節氏: 「海の外で軍事活動する法的資格があたえられていない。仲間の国を助けるために海外に戦争に行く、これは集団的自衛権でないという人はいないはずで、憲法九条違反。また、外国軍隊への後方支援というのは日本の特殊概念であり、戦場に前から参戦せずに後ろから参戦するだけの話だ。」(以下、「小林発言」とする。)

〇笹田栄司氏: 「日本の内閣法制局は、自民党政権とともに安保法制をずっとつくってきていたわけだが、そのやり方は、非常に、ガラス細工と言えなくもないが、本当にギリギリのところで保ってきていた。ところが今回の関連法案は、これまでの定義を踏み越えてしまったということで、やはり違憲の考え方に立っている。」(以下、「笹田発言」とする。)

 右を踏まえ、質問する。

一 「長谷部発言」に関し、政府の見解如何。
二 「小林発言」に関し、政府の見解如何。
三 「笹田発言」に関し、政府の見解如何。
四 今回衆議院憲法審査会で、参考人に招致された三氏が「法案」について
 いずれも憲法違反との見解を示したことについて、閣僚や与党幹部は「憲
 法の範囲内」等、真逆の意見を述べていると承知する。政府としても同様
 に、「法案」は憲法の範囲内であると考えているのなら、「長谷部発言」、
 「小林発言」、「笹田発言」のそれぞれのどの部分が間違っていると認識
 しているのか、詳細かつ具体的に政府の見解を説明されたい。
五 政府として、三氏の指摘を受け、「法案」の今国会における成立にこだ
 わることなく、審議に今後より時間をかける、または一度「法案」を撤回
 する考えはないか。

 右質問する。


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<私のアピール>
2012年末の安倍政権成立以後の短年月、武器輸出3原則を廃し、特定秘密保護法の新設、憲法9条解釈変更の7・1閣議決定(※憲法違反です)と、先行き不安な政策ばかり急激に推進されています。安倍内閣はデモクラシー日本を食い破りつつある危険な内閣です。その政治手法は民主主義下の独裁と見えて、危険です。安倍総理退陣まで、来年7月参院選で自民党に“No”を!


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