2016/01/10 年金運用(1)株式投資もつまり、バクチの類
2016/01/13 年金運用(2)1月年初に連続下げ相場
2016/01/16 年金運用(3止)東証続落 年金積立金5兆円目減りか
2016/01/23 安倍内閣の大罪 年金積立金を 「株高」 誘導に投入
運用の株式比率は20%から50%へ(1)
2016/01/26 安倍内閣の大罪 年金積立金を 「株高」 誘導に投入
運用の株式比率は20%から50%へ(2)
2016/02/06 安倍内閣の大罪 年金積立金を 「株高」 誘導に投入
運用の株式比率は20%から50%へ(3)
2016/02/11 安倍内閣の大罪 年金積立金を 「株高」 誘導に投入
運用の株式比率は20%から50%へ(4止)
年金積立金の平成27年度第2四半期の運用成績は、収益赤字 -7兆8,899億円でした。年初来の株価大幅続落で、第4四半期も似たような規模の赤字になるでしょう。
昨年最終の東京株式市場、2015年(平成27年)12月30日の日経平均株価終値は、19,033円71銭でした。きょう、2016年(平成28年)2月12日午前日経平均株価終値は、14,874円65銭でした。こういうリスクの大きい株式に投入する年金積立金運用資産を、GPIFが前政権運用の32.4兆円(平成24年度末)から61.7兆円(平成26年度末)とほぼ倍増させました。安倍内閣の株高政策に利用されました。(2/12追記)
わたしたち国民の老後のための資産は、安倍内閣の厚生労働大臣の監督下で、政策利用されています。安倍内閣の大罪です。平成27年度の赤字がどれほどの巨額になるのか、しっかり見ておきたいものです。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が「平成27年度業務概況書」を発表するのは今年の夏、7月中旬~下旬です。参議院選投票日以前には発表しないかもしれません。〇〇兆円という規模の収益赤字、こんな悪材料を参議院選投票日前に発表したくはないでしょうから。
◆収益赤字の理由
前回(3)では、安倍内閣以前の収益赤字になった5ヵ年度すべて、赤字の原因が株式にあることが明らかになりました。
平成13年度の収益赤字は市場にIT不況の影響が残っているからでした。平成12年、ITバブル崩壊で株価は内外ともに大幅下落したのです。
平成14年度は、GPIF 平成26年度業務概況書(8)昭和61年度以降の運用環境等73ページに、「国内株価は金融不安で大幅下落」したとしています。
平成19年度は、米国でサブプライムローン問題が起きて、国内株価は大幅下落。外国株価も下落しました。そして平成20年度は、米国発リーマンショックへと続いて、世界的金融不安と株価下落がありました。
平成22年度は、GPIF 平成22年度業務概況書15ページに、「下期においては、景気対策の終了に伴う反動、米国景気の停滞、欧州周辺国の財政懸念等からマイナス成長となり、さらに中東、北アフリカ情勢緊迫化による原油等の資源高、年度末には東日本大震災発生により、厳しい経済環境となりました」と、説明されています。
要するにどうしたって、リスク資産である株式の運用は、経済環境の影響を強く受ける。
それがわかっているから、安倍内閣以前までは、株式運用の比重を小さくし、安全度の高い債券運用に大きく比重を置いていました。
◆収益黒字の理由
8兆円以上の大幅収益黒字になった年度は、平成17年度、平成21年度、平成24年度(以上「安倍内閣以前」)、平成25年度、平成26年度(以上「安倍内閣時代」)の5ヵ年度分です。
平成17年度は、平成17年度 資金運用業務概況書(年金資金運用基金)の「はじめに」で、「平成17年度においては、世界的な景気回復基調を受けた国内外の株高の影響から、総合勘定において8兆9,000億円余りの収益を計上し」と述べています。
平成21年度は、GPIF 平成26年度業務概況書(8)昭和61年度以降の運用環境等74ページに、「国内株価は外国株の上昇で大幅反発。外国株価はリーマン・ショック後の世界的な経済対策で大幅上昇」と述べています。
平成24年度は、上と同じ74ページに、「積極的な金融緩和や経済対策への新政権に対する期待から、国内株価は大幅上昇。外国株価はグローバルな追加金融緩和で上昇。円安により債券・株式ともに好リターン」と述べています。
これも上と同じ74ページに、平成25年度は、「日銀の量的・質的緩和や先進国の景気回復や円安で、内外ともに大幅株高」。平成26年度は、「国内株価は日銀の追加金融緩和による円安や原油価格低下により大幅上昇。外国株価も、日欧における追加金融緩和から大幅上昇」としています。
ただし、平成24年度末の株式運用資産は32兆4,333億円。平成25年度は24年度に比べて8兆円も多く株式投入していますし、平成26年度は24年度に比べて29兆円も多く株式投入しています。平成25年度分以後は、安倍内閣時代の運用です。
「安倍内閣の大罪 年金積立金を 「株高」 誘導に投入 運用の株式比率は20%から50%へ(2)」で叙述しているように、特に平成26年度については、年金クジラの巨額投入増加そのこと自体が、株価を押し上げたという事情が大きいでしょう。しかし今後はそれが織り込み済みのことになるので、それ自体で株価水準を押し上げることは期待できません。1回こっきりのことです。
このように、収益黒字の理由も、収益赤字の理由と同じように、外部の経済環境の流れに支配されています。年初からの株価続落を予測できていた専門家はわずかでしょう。日銀マイナス金利が円高・株安に振れていることは日銀当局でさえ予測していなかったでしょう。
こういうわけですから、運用資産の株式比率を安倍内閣前対比で倍増させたことは、危険度を倍増させたことになります。国民の老後のための資産である年金積立金を株ギャンブルにつぎこんだことは、安倍内閣の大罪です。
◆表3・4からわかること――巨額増額投入しても成果は見合っていない
下の表3、表4をご覧ください。資料出所はGPIFの「平成26年度 業務概況書」で、表を再構成しました。平成24年度までは「安倍内閣以前」、平成25年度から「安倍内閣時代」です。
▽平成17年度、21年度、24年度、25年度の株式運用収益高は、7兆円台、8兆円台です。しかし、前3ヵ年度分の各年度末株式運用資産高が、平成25年度に比べて10兆円前後低いことに注目です。
▽平成26年度だけは、株式運用収益高が11兆6,968億円と10兆円の大台を超えました。しかしこれは、年度末株式運用資産高が61兆7,476億円と、前前3ヵ年度分各々のそれに比して倍額であることに注目すれば、驚くほどのものではありません。
▽前3ヵ年度分と安倍内閣時代2ヵ年度分の株式運用資産収益対比を見ると、安倍内閣時代2ヵ年度分のそれは20%未満であり、前3ヵ年度分は概算22%、27%、29%という好成績です。
平成24年度~26年度は経済環境に恵まれていました。それに加えて、平成26年度は、年金クジラ自らの巨額資金投入増加で株価水準を押し上げるという臨時効果にも恵まれました。その結果が、収益率約19%です。運用資産構成比50%レベルまで、飛躍的に株式投入を増額しても、それに見合う成果は上がっていません。
それなのに、株価下落局面では巨額であればあるほど、損失額は巨額になります。それが平成27年度で進行している形です。年金クジラは巨体ですから、株式市場から急速に大きく資金を引き揚げることができません。
以上4回にわたって、安倍内閣が国民の老後資金である年金積立金を政策目的に利用し、危険にさらしていることを述べました。
表3:市場運用大幅黒字年度と収益金額(億円)・各運用資産対比率
運用資産 運用収益 |
平成17年度末 2006.3.31 |
平成21年度末 2010.3.31 |
平成24年度末 2013.3.31 |
債券株式運用資産 計 |
102兆8,701億円 | 121兆1,148億円 | 118兆6,815億円 |
債券株式運用収益 計 |
8兆6,795億円 | 8兆8,928億円 | 11兆 415億円 |
債券運用資産 計 |
73兆1,295億円 | 93兆1,128億円 | 86兆2,482億円 |
債券運用収益 計 |
11億円 | 1兆3,594億円 | 3兆9,481億円 |
債券運用資産 収益対比 |
0.00% | 1.46% | 4.58% |
株式運用資産 計 |
29兆7,406億円 | 28兆 20億円 | 32兆4,333億円 |
株式運用収益 計 |
8兆6,785億円 | 7兆5,334億円 | 7兆 934億円 |
株式運用資産 収益対比 |
29.18% | 26.90% | 21.87% |
表4:市場運用大幅黒字年度と収益金額(億円)・各運用資産対比率
運用資産 運用収益 |
平成25年度末 2014.3.31 |
平成26年度末 2015.3.31 |
平成27年度末 2016.3.31 |
債券株式運用資産 計 |
124兆7,349億円 | 136兆6,328億円 | 期中 未発表 |
債券株式運用収益 計 |
10兆 672億円 | 15兆1,809億円 | 推測収益赤字 |
債券運用資産 計 |
84兆1,557億円 | 74兆8,852億円 | 期中 未発表 |
債券運用収益 計 |
2兆1,430億円 | 3兆4,841億円 | 期中 未発表 |
債券運用資産 収益対比 |
2.55% | 4.65% | 期中 未発表 |
株式運用資産 計 |
40兆5,792億円 | 61兆7,476億円 | 期中 未発表 |
株式運用収益 計 |
7兆9,242億円 | 11兆6,968億円 | 推測収益赤字 |
株式運用資産 収益対比 |
19.53% | 18.94% | 推測 マイナス% |
--------------------------------------------------------------------------------
<私のアピール>
安倍内閣はデモクラシー日本を食い破る強権内閣です。安倍総理退陣まで、国政で安倍自民党に“No”を ! 安倍内閣のお伴政党、安倍総理を支持するお伴政治家、安倍総理にすり寄る候補――次の参院選・衆院選で彼ら彼女らに“No”を !
デモクラシー日本は今、安倍内閣の強権支配にやられて喘ぎ病んでいます。
安倍首相は「戦後レジームからの脱却」をめざしています。
安倍首相の抱く国家像は「明治維新リメーク型日本」です。
それは、平和であり続けたおかげで栄えてきた、戦後日本70年の価値を捨てる道です。
2012年12月26日、安倍内閣が成立しました。
アベノミクス効果で円安・株高が実現しました。
それは、日銀の過剰な国債購入、GPIFの過剰な株式買い入れを伴っています。
円安効果で輸出大企業が栄えました。同じ円安効果で食品など生活関連品、電気代などエネルギー費が値上がりして、大衆には生活費切り詰め効果がありました。
アベノミクスの円安・株高効果の本質は、多数派である国民大衆の生活費で、少数の大企業や株投資家の金庫を富ませていることに繋がっているのではありませんか?
安倍内閣下で特定秘密保護法が成立しました。安保関連諸法が成立しました。内閣法制局長官と、自民党・高村副総裁と、公明党・北側副代表の三者で手を握って、憲法違反の集団的自衛権を合憲だと、押し通しました。NHKの経営委員や会長には、安倍首相の息のかかった人が座りました。
政府を批判するテレビ論調に「公平でない」と、政府・自民党の圧力がかかりました。
政府に賛成基調のテレビ論調に、政府・自民党の圧力はありません。
テレビ局や公共の会館管理者などに自主規制が広がっているように見えます。
デモクラシー日本は今、安倍強権内閣にやられて喘ぎ病んでいます。