川本ちょっとメモ

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<加計学園> 今になってわかる安倍官邸の怖さ(3終)――文科省を懲らしめ、前川次官を貶め、官邸関係有識者群で追い打ち

2017-09-07 23:29:39 | Weblog

2017-05-28
<安倍親友 加計学園> 「前川ショック」官房長官 記者会見 5/17~5/26 文字起こし
2017-07-26
<加計学園問題> 今になってわかる安倍官邸の怖さ (1) ――文科省天下り摘発の動機は獣医学部特区の厄払いだったのかもしれない
2017-07-29
<加計学園問題> 今になってわかる安倍官邸の怖さ (2) ――衝撃走る「総理のご意向」文書報道 対抗する読売「出会い系バー」報道
2017-08-14
加計戦略特区ダイアリー 今治市獣医学部新設を巡る経緯




2015年(H27年)4月2日。首相官邸を加計学園事務局長、愛媛県職員、今治市企画課長と課長補佐らが柳瀬唯夫首相補佐官(当時)に面会しています。同6月4日。愛媛県今治市が国家戦略特区で獣医学部新設をする計画を申請しました。

このあたりが加計問題の具体的なスタートでしょう。

その1年後、2016年(H28年)1月29日。愛媛県今治市を国家戦略特区に正式指定しました。

構造改革特区で15回も申請しつづけてきた経過があるので、今治市と加計学園が獣医学部新設計画でワンセットになっていることを、今治市地元では多くの人が知っています。

1月の終わりに今治市が国家戦略特区に指定されて、早くも2ヶ月余り後の4月11日。今治市の担当者が市議会の非公式会合で「最速2018年4月に開学を想定している。あくまでも内閣府主導で」と説明したことがわかっています。

注目するべきは、加計学園の岡山理科大学獣医学部新設計画が2016年(H28年)4月時点で既に、「2018年(H30年)4月開学」とスケジュール化されていたという事実です。

2016年(H28年)の夏休みが終わると、「2018年(H30年)4月開学」計画が一気に加速します。同時に、獣医学部新設に煮え切らない態度の文部科学省への圧力が高まります。


<2016年9月10月の文科省への催促と官房副長官「出会い系バー」注意>

2016年9月9日。和泉洋人首相補佐官が「総理は自分の口から言えないのだから代わりに私が言う」と、文部科学省の前川事務次官(当時)に催促します。和泉首相補佐官は10月17日にも「早く結論を」と前川事務次官(当時)に重ねて催促しています。 ※前川証言、和泉首相補佐官は「発言していないと否定。」

この9月、10月のころに(前川氏は「このころ」とあいまいな表現をしています)、杉田官房副長官が前川事務次官(当時)を呼んで、「出会い系バー」に出入りしていることを注意しました。前川氏は恐縮し詫びて、以後、取りやめました。この件は一旦、これで終わりました。

杉田官房副長官は警察庁公安畑出身の警察官僚です。警察庁警備局長のあと、内閣情報調査室長、内閣危機管理監を務めた経歴があります。

杉田官房副長官は当然、何かの理由なり必要があって、前川事務次官(当時)の素行を調べたのです。それは何だったのでしょうか? これは前川氏への牽制球だったのではないか。

文科省リーク文書(複数)の日付は9月下旬~10月のもので、杉田官房副長官の「出会い系バー注意」と時期がほぼ重なっています。文部科学省への圧力が集中した時期と重なっています。


これら官邸及び内閣府から文部科学省への牽制、要請、圧力のようすが明らかになっている9月・10月が終わった2016年11月9日。国家戦略特区諮問会議(議長=安倍首相)が「広域的に獣医学部が存在しない地域に限り新設を可能」と認める規制緩和を決定しました。

文科省リーク文書で明らかになっているような数々の催促や杉田官房副長官「注意」は、この11月9日「広域的に獣医学部が存在しない地域に限り新設を可能」規制緩和決定と関係していたであろう、と見ることができます。

この決定による国家戦略特区制度の枠組みで獣医学部新設をできるのは、事実上、「加計学園=岡山理科大学」だけとなりました。


<「出会い系バー」蒸し返し>

「出会い系バー」注意のことは、前川氏もすぐに行いを改めて、杉田官房副長官と前川氏との間の秘密のままで終わったはずでした。しかし、半年以上も前に終わったそのことが、2017年(H29年)5月22日の読売新聞一面で報道されます。読売のこのニュース報道は取扱の異常さが話題になりました。そして官邸筋がリークしたのだろうと憶測を呼びました。

引き続く菅官房長官記者会見で、読売記者から水を向けられた菅氏が前川氏の出会い系バー通いを批判します。読売報道をきっかけに、前川氏の人格批判が大きく広がります。だから「加計学園批判」をする資格がない、前川はとんでもない奴だ、というように、それらはすべて「加計戦略特区」と安倍首相と政府を擁護するものばかりです。

前川喜平氏は文部科学省天下り問題の責任を取って、今年1月20日に事務次官を辞職。無職になりました。無職になって4カ月後の人間をここまで追い詰めていく。加計学園問題のどこに、その必要性があるのでしょうか。

杉田官房副長官注意から半年以上過ぎた後に、降ってわいたように、「出会い系バー」蒸し返し。そして、官房長官や政府系識者群を先頭にして前川人格攻撃がくり広げられていることに、注目しておきたい。これが、意のままにならないことに対する安倍政権の怖いところです。


<2017年1月文科省天下り摘発 ニュース第1日>

○毎日新聞2017.1.18.14:16
○再就職等監視委員会が厳正処分求める「勧告」も検討

 文部科学省が2015年、元幹部を早稲田大に再就職させる「天下り」をあっせんしていた疑いがあり、政府の再就職等監視委員会が文科省幹部らから事情を聴くなど調査をしていることが18日、関係者の話で分かった。人事課が関与した組織的なあっせんとみられるという。あっせんを禁じた国家公務員法に違反する可能性があり、同委は関与した幹部の厳正処分を求める「勧告」を行うことも検討している。

 勧告が行われれば、08年の同委発足以来、初めて。

 菅義偉官房長官は18日の記者会見で、同委が調査していることを認め、「(あっせんが)実際に行われていたとすれば、極めて遺憾なことだ」と述べた。

 関係者によると、文科省の元高等教育局長が15年、退職の2カ月後に早稲田大の教授に就任した。同委が経緯を調べたところ、文科省人事課が関与していたとみられることが判明した。同委は昨年末から、事務次官経験者を含む複数の幹部に事情を聴いているという。(記事終わり)


<天下り摘発は文部科学省狙い撃ち、他省庁は「問題なし」>

2017年1月18日。文科省天下り摘発のニュースが一斉に報道されました。この日から文科省天下りニュースが続々と伝えられました。

上掲の毎日新聞記事では、再就職等監視委員会が昨年末から文科省OBなど関係者に事情聴取をしています。わたしはこの記事を読んで、2016年師走のころから調査していたとのだと受け取っていました。

しかし、天下り問題の調査が始まっていたのは、2016年(H28年)8月でした。

2017年(H29年)1月23日放送「NHKクローズアップ現代」。

吉田大輔元文部科学省高等教育局長が2015年(H27年)8月退職、同年10月早稲田大学教授に再就職しました。これに注目した再就職等監視委員会が2016年8月、早稲田大学に赴いて調査したと、「クローズアップ現代」が伝えています。

2016年4月11日。「2018年4月獣医学部開学予定」と、今治市が市議会に明かしました。

2017年1月20日。加計学園が今治市戦略特区の事業者に正式認定されました。


この9か月の間に、再就職等監視委員会によって文部科学省天下り問題の調査が始まり、杉田官房副長官から前川文科省事務次官(当時)への素行注意があり、文科省リーク文書で明らかなように文科省への催促(圧力)が続いています。

2017年1月20日。加計学園正式認定と同じ日、前川文科次官が引責辞任しました。

前川氏が素行注意を受けたこと自体には、文科省事務次官という立場を考えれば指弾を受けるのは当然です。

しかしそれは、政権中枢(安倍首相側近)から前川事務次官(当時)への「けん制球」でありました。

天下り問題摘発では、世論も沸きました。「この際、全省庁への徹底調査」を求める声が広がりました。文科省は政府内でも国民世論の上でも、袋叩き状態でした。これも、指弾を受け、さらに何らかの懲罰を受けても、当然のことでしょう。

しかし天下り問題摘発にも、同時に、「政権中枢の意向に消極的な文科省に懲罰を下す」意義がありました。どちらかというと、こちらが本当の狙いだったと窺えます。

上の1月18日毎日新聞記事に「2008年の再就職等監視委員会発足から初めてのこと」とあります。初めてのことが、この時期に、文部科学省に集中して、なぜ行われたのか?

1月20日毎日新聞は文科省内の空気を伝えています。

――一方、省内には不満もにじむ。「他省庁ではもっと大規模に天下りのあっせんがされている。『なぜ文科省だけが責められるのか』と多くの職員が感じているのではないか」(記事引用終わり)

1月20日。安倍首相が山本国家公務員制度担当大臣に対し、全省庁について徹底的な調査をするよう指示しました。

6月。これの全省庁調査結果が「内閣人事局」名で公開されています。(ここをクリックして見られます。

結論は、他省庁について、「規制違反を疑わせるような事実はみられなかった」。(内閣人事局「全省庁調査報告の概要P3」)

文科省の天下り数や条件は、財務省や経済産業省にくらべれば可愛いものといわれている実態を考慮に入れるなら、全省庁で同じようなことが行われていると言われる現状を見るならば、文部科学省だけに問題があって、ほかの省庁にはそれがないというのも信じがたい。

天下り問題は、加計問題の観点では、官邸の意向にしたがわなければこうなるという文部科学省いじめだった。今後の天下り防止という本来の目的の観点では、他省庁に一罰百戒見せしめのためのいけにえでした。

一罰百戒のための1省庁限定の天下り見せしめ摘発なら、天下りは全省庁のうちでいちばん規模が大きいと言われている財務省をやってもいいようなものです。

しかし加計学園問題の関係で、文科省を一度たたいておきたい。それには天下り摘発をするのがよかった。正義の実行になりますから。

財務省は和森友問題で佐川前理財局長がサンドバッグになって安倍首相を守りました。もちろん財務省の不祥事となれば麻生財務相副総理にも影響が出てきますから、総理・副総理お二人を守ったことになります。彼は貢献度大だったので、順調に国税庁長官に昇進しました。

その後の「佐川」と「前川」の間には際立った開きがあります。

佐川氏は財務省で次の事務次官の定席と言われる国税庁長官に昇進。前川氏は文科省事務次官を引責辞任して無職になった後に、さらに、省ぐるみの天下りをとりしきった悪人、出会い系バーに隠密行していた男として非難されつづけています。まさに、石もて追われる姿です。

同じように「加計学園問題」に関わった高級官僚のこの違いはどこから来るのでしょうか。



<官邸関係有識者群で追い打ち>

さらに、加計問題では、安倍首相側に立って文部科学省批判、前川氏批判をする識者群がいます。
これについては、次回(4)でまとめます。


<警察官僚が闇の力を行使する――詩織さん事件>

最後にもう一度、安倍政権における警察の使い方を復習しておきたいと思います。

警察の内部事情はなかなか表に出てきません。警察組織のうちの公安警察については、その動きは警察内部でもわからないようになっていると聞きます。

警察官僚が闇の力を行使することがある。その一つが今年5月29日、表に出ました。「詩織さん事件」です。このニュースをご存知の方も多いと思います。

2015年4月に元TBS記者で安倍首相御用ジャーナリストの山口敬之氏から準強姦被害に遭ったという女性・詩織さん(28)が5月29日、検察の不起訴処分を不服として検察審査会に審査を申し立てました。そして、引き続きに司法記者クラブで記者会見を開きました。

この問題のポイントは、詩織さんを強姦したと言われている山口敬之氏がTBSワシントン支局長を務めた経歴があり、安倍首相の御用ジャーナリストとしてテレビでも顔の売れた人物だったことです。

そして、当時の中村格(いたる)警視庁刑事部長が、高輪署による山口敬之氏逮捕直前にストップをかけ、捜査から高輪署を外して、山口敬之氏を救いました。

中村格氏は、2015年(H27年)3月23日まで菅官房長官秘書官。中村警視庁刑事部長(当時)は、安倍首相御用ジャーナリストが婦女暴行容疑逮捕では安倍首相のプラスにならないと判断して、山口敬之氏の頼みを受けたものと思われます。山口氏は同じ警察官僚出身の杉田官房副長官にも電話をしています。


この事件のあらましは次のようなものです。

 本件では、捜査段階で逮捕状は出ていて、高輪署の捜査員が空港で帰国する山口氏を待ち構えていたのに、急きょ「上」からの指示でストップがかかった。

 今回の事件で特異なのは、逮捕状の執行直前に捜査方針が変更された、本件捜査の経緯だ。


 「週刊新潮」(新潮社)の取材に対し、当時警視庁の刑事部長だった中村格(いたる)氏が「(逮捕は必要ないと)私が決裁した。(捜査の中止については)指揮として当然だと思います。自分として判断した覚えがあります」と答え、自身が逮捕にストップをかけたことを認めている。

 その対応は、本当に「指揮として当然」なのか。捜査を経験した人たちからは、疑問の声が挙がっている。

 たとえば、元検事の落合洋司弁護士によれば、通常、逮捕の方針は捜査を行っていた警察だけの判断ではない。

「告訴事件で逮捕する場合は、警察は検察に相談して了解をとる。それは、いったん逮捕してしまうと、(検察が処分を決めるまでの)時間が限られてしまうからです。(相談に対して)検察は、必要を感じた場合には、『もっと補充捜査をするように』などと助言します。特に、警視庁はそういう事前の相談は丁寧に行っています」

 つまり、検察のチェックと了解を得たうえで高輪署が逮捕状を請求し、裁判所はそれを交付したことになる。

 「直前に人違いがわかったとか、容疑者が急病の場合ならともかく、(逮捕状の)執行寸前にとりやめ、というのは普通ありえない。しかも、本部の刑事部長が介入して(執行を)止めるなんて、異例中の異例」(落合弁護士)

 警視庁のベテラン刑事もこう言う。
 
 「(任意の事情聴取ではなく)最初から逮捕状を取ったというのは、証拠に自信があったからだろう。その逮捕状の執行を直前に止められるなんて、今まで聞いたことがない。高輪署がやっていた捜査を、署長を飛び越えて本部の刑事部長がストップをかけるなんて、ありえない」

 そこに、「安倍首相と親しいから」という疑念が生じる余地がある。

 「週刊新潮」などによれば、民主党政権の時代に官房長官秘書官を務めていた中村氏は、自民党が政権を奪取した後、菅義偉官房長官に続投を懇願。それが受け入れられ、その後も菅氏の覚えめでたく、将来の警察庁長官にと評価されているとのこと。中村氏は、菅官房長官や安倍首相への忠義立てから、「忖度」したのではないかとの噂も立つが、真相はいまだ闇の中だ。

 ―略―

 刑事部長の介入の後、高輪署の捜査員は担当を外れた。告訴事件は検察へ書類送致しなければならないと刑事訴訟法で決められており、本件は捜査一課が捜査を引き継いで、東京地検に書類を送致された。それから約11カ月後、同地検は「嫌疑不十分」として不起訴処分を決めた。
 
 これについても、落合弁護士は「検察はずいぶん長く(未処理のまま)事件を持っていた、という印象」と語る。検察官は、書類送検されてから3カ月以内に起訴・不起訴を決めて処理をするように言われており、1カ月超えるたびに、それが遅れている理由や事情を上司に報告しなければならない、という。処分を決めるまでに11カ月というのは、確かに長い。

 (文) ジャーナリスト・江川紹子
 http://biz-journal.jp/2017/06/post_19339_2.html


この事件は安倍首相の太鼓持ちジャーナリストの性犯罪に関わることで、政治的なことではありません。しかし、中村格氏も公安畑の警察官僚であり、公安警察が人脈の関係や政治的な見通しに配慮した政治的な動きをすることを示しています。

ここから、警察庁の公安畑出身である杉田官房副長官が前川喜平事務次官(当時)に注意したことには、「政治的な警告」という意味があったであろうことに思い及びます。



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