森友学園への国有地破格値売却について、野党は昨年2017年通常国会を通じて、不審な事柄を政府に質してきました。しかし通常国会 2017(H29)1.20.~6.18.の間、政府は野党の指摘を一蹴するばかり。
ところが昨年秋以後、政府の姿勢に変化が出ました。政府というよりも、安倍政権・安倍自民党に変化が出たというのが正しいでしょう。
これには、2017(H29)8.1.~9.18.にわたって関西テレビ「報道ランナー」が放送した「音声データ」が大きく影響しているかもしれません。音声データが大阪地検の手に渡るのはまちがいないでしょうから。
この音声データは近畿財務局が籠池側と国有地値引き方法を話し合っている肉声を伝えています。この放送は今でも見ることができるので、下記をクリックしてぜひご覧ください。
◎交渉現場録音を聴けます クリック → 徹底ツイセキ/森友学園問題シリーズ
■出始めた文書開示
昨年9月に入って以後、文書公開請求に対して引き延ばされてきた開示・不開示の決定が出始めました。
上脇博之教授(神戸学院大学)が文書開示請求を大阪地裁に提訴したことに対応したものと思われる文書についても、文書類の種類内容は別として、大阪地裁の判断が下る前に開示されました。
毎日新聞の文書公開請求にも開示がありました。
2018.1.20.毎日新聞夕刊は毎日の公開請求に対して開示された文書について、「明らかになった。国は「記録を廃棄した」として詳細な過程を説明してこなかったが、文書からは強硬に値引きを迫る学園に対し、財務局職員らが右往左往する様子が浮かび上がる」と、報道しています。
月刊誌「Hanada」「Will」は、通常国会後の7月26日発売の9月号から朝日叩きを強めています。その熱心さには感心します。
2017.11.22 23:58 産経ニュースは、注目すべきニュースを伝えました。
民進党や朝日新聞が森友問題疑惑追及の過程で、森友学園の小学校設置趣意書に記載された校名が「安倍晋三記念小学校」ではないかと追及したが、財務局による校名は「開成小学校」だった。記事には、自民党の和田政宗参院議員が同日22日、財務省から資料を入手し、自身のツイッターで公開した、とあります。
2017.11.24.20:02 毎日新聞が同じことについて、近畿財務局が24日、森友学園が計画した小学校の設置趣意書について、これまで不開示としていた学校名「開成小学校」を含めて全て、情報公開請求していた上脇博之・神戸学院大教授に開示した、と伝えました。
2017.11.25.05:01 朝日新聞も毎日と同じく、「開成小学校」設置趣意書を含む文書が情報公開請求者である上脇神戸学院大教授に開示され、財務省は22日の立憲民主党の会合でも同じ文書を開示した、と伝えました。
朝日はさらに加えて、(*1回目の開示文書では) 校名などが当初、黒塗りになっていたため、朝日新聞は籠池氏への取材に基づいて、籠池氏が「安倍晋三記念小学校」の校名を記した趣意書を財務省近畿財務局に出したと明らかにした、と5月9日付朝刊で報じた――と事情を説明しています。
産経新聞のニュースは23日朝刊に間に合う時刻であり、毎日新聞のニュースは25日朝刊に間に合う時刻です。
産経のニュースソースは自民党・和田政宗参院議員のツィッターであり、毎日のニュースソースは近畿財務局の公開情報か上脇教授人脈筋のどちらかでしょう。
ここでは、産経の報道が他紙にくらべて、朝刊単位で比較すると、他紙の25日に比して23日と抜き出た早さであること、産経のニュースソースが和田政宗参院議員で、和田議員は22日に財務省から情報を入手したことに目が行きます。
和田政宗参議院は自民党本部の広報副本部長を務めています。NHKアナウンサーという出身からでしょうか、ネット・SNSのほかメディア対策を含めて自民党の世論対策で活躍している政治家です。
■森友逃れの作戦転換――朝日攻撃と籠池嘘つき呼ばわり
和田議員はこの「開成小学校」開示のことから、11/22 3回、11/23 1回、11/24 5回、朝日新聞を批判し、民進党も批判しています。そしてそれ以後、自身のブログを含めて党内や国会、ネットメディアなど、あらゆる機会をとらえて朝日批判をくり広げています。
安倍首相もそれに合わせて、和田議員と同じ内容の朝日批判とそれによって安倍首相夫妻ともに被害を受けたと、国会答弁で長々と訴えています。安倍首相のこの種の答弁に特徴的なことは、質問者の質問事項とは無縁に、勝手に一方的にしゃべることです。
このように、ネットを含む多種多様なメディアが朝日攻撃に加わっています。自民党本部広報副本部長である和田参院議員が朝日批判に注力していること、安倍首相が同じラインで国会答弁においてくり返して、朝日誤報と籠池嘘つきの被害者であると訴えていること。
昨年通常国会で、森友・加計問題についてあれほど野党の追及を受けながら、破棄して不存在であることを主要な理由にして情報開示を拒否してきた安倍政権。それが、不十分とはいえ情報開示を始めたこと。
そして、森友学園の籠池夫妻が補助金不正請求の容疑で逮捕されて以来、半年を過ぎた今でも夫妻各々が独房に拘禁され、家族や弁護士の接触も禁じられていること、大阪地検特捜部の捜査が進んでいるはずであることなどを考え合わせると、昨秋以後の情報公開請求に対する文書開示や昨年11月22日の「開成小学校」名が明らかにされて以後の集中的な朝日攻撃、籠池嘘つき呼ばわりが、安倍首相を中心とした政権・自民党の作戦だろうと見ることができます。
■朝日攻撃、籠池嘘つき呼ばわりの目的は何か<
■有罪者を大阪出先機関で留め政権の体力を温存する
安倍首相の国会答弁での森友問題に関する直線的な朝日攻撃は、誰が見てもわが国の総理大臣にふさわしくないものです。
安倍首相が先頭に立って敢えてそれを行うのはなぜなのか? 安倍昭恵夫人救済が主目的か。
森友問題では安倍昭恵夫人の塚本幼稚園訪問、そこでのスピーチ、名誉校長、昭恵夫人の籠池詢子夫人へのメールや電話のやり取り、昭恵夫人付き谷氏によるファックスなど、隠しおおせない安倍昭恵夫人の関与を否定して、公判の証人出廷も必要ないようにすることが最大の目的ではないでしょうか。
そして、たとえ微罪であるとしても、森友問題で有罪になる者を近畿財務局や大阪航空局の公務員にとどめること。まかりまちがっても、財務省本省の理財局長だった佐川宣寿氏や財務省理財局の国有財産審理室長だった田村嘉啓氏に責任や罪が及ばないことが安倍政権の目的だろうと思います。
安倍首相が目指す日本の形は、アジアの強国として必要に応じて公明正大に、戦争ができる大日本国であると言えます。悲願は、そのための憲法改正(改悪)。
そして悲願を成すためには今年2018年9月の自民党総裁選で3選されなければなりません。そのためには安倍政権全体として、森友問題で無疵でなければなりません。
国有地処分問題で有罪公務員が出る場合であっても、それはなんとしても大阪出先機関で終わらなければいけません。公判における安倍昭恵夫人の証人出廷でさえ、あってはならないことです。
大阪府・市は総務省の所管、大阪府警は警察庁の所管、大阪地検特捜部は検察庁、検察庁は法務省の所管です。政権中枢にとって捜査の進展情報を取るのはたやすいことであるうえ、検察の考える公判維持の道筋情報も入手できます。安倍首相およびその側近たちによる朝日攻撃は軽はずみなものでなく、しっかりした状況分析の結果としての作戦ではありませんか。
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安倍首相の悲願は憲法改正(改悪) → 自民総裁3選が必須 → 安倍政権強勢維持 → 政権無疵を装う → 森友問題から昭恵夫人と財務省本省の高級官僚を守る → 森友問題の有罪者を近畿財務局・大阪航空局の交渉担当者に留める → 安倍首相直々に国会で朝日攻撃、籠池(森友)罵倒