◆住宅地の小さい川の遊歩道から鯉を見て蛙を見て
◆サギの低空飛行にうっとりしてヘビが跳んでギョッ
我が家の裏に幅数メートルの川が流れています。丈の長い草が密生していて、夏に橋から写真を撮ると、整備されたグリーンベルトに見えます。きれいな川でもありませんが、50センチ以上あると見える鯉がどっさり生息しています。土色のカエルがのんびり浮いていたり泳いでいたりするのを見ます。腰痛防止にこの川の遊歩道を1000歩、歩くよう心がけています。そうではありますが、歩かない日も多々あって。
電線の上でカラスが見渡していたり、高度制限で3階しかないビルの上にハトが群がっているのが見えます。出色なのは、毎朝、体が白く羽根が灰色をした大きなサギが一羽だけ来ることです。きれいな白鷺は琵琶湖の湖西でよく見たけれど、サギをこんなに目近に見るのはこの川が初めてです。目近にすると、大きい鳥ですね。
サギは川の中に立って動きません。ほんとうに身じろぎもしません。そんなときは、こっちもそうっと立って見惚れています。来るときの姿も見たことがあります。川沿いの遊歩道より低い高さを数十メートル、水平飛行でやってきて音もなく降り立ちました。
半月ほど前のことでした。この川の遊歩道を歩いていて、右肩すぐ後方からこっちへ何か跳んだのが、川と反対側になる右目の端に微かに見えました。反射的に身を避けながら右後方を振り向きました。その瞬間、ギョッ。
見えた瞬間、それは細い若草色のきれいなヘビでまだ宙に浮いていました。そして川と反対側の遊歩道側溝に落ちて、向こうは向こうで焦っている。側溝の底を必死になってくねくね走り、それから上に向かって這いあがって、側溝の上の低い植え込み擁壁の水抜きパイプに逃げこみました。
のんびりと植え込み擁壁の上の繁みから下りかかっている目の前を思いがけず人間の大きな男が通りがかった。そのヘビはよほどびっくりしたのでしょう。這って下りかかっているところでびっくりしてビクンとして、宙に浮いてしまって側溝に落ちたのだと思います。私はその宙に浮いて落ちるところを見たのです。ヘビが跳ぶのを見たのは初めてです。向こうは焦りに焦り、こっちはこっちで、ああびっくりしたあ。
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◆「ヘビににらまれたカエル」は怖がっていなかった?
◆危機脱出の隙を狙うカエル‥‥京大チームが新解釈
(毎日新聞 2020.7.7.記事から)
恐ろしさで身がすくむ状態の例えとして知られる「ヘビににらまれたカエル」。この慣用句の意味が塗り替えられるかもしれない新事実を、京都大の研究チームが突き止めた。カエルが天敵のヘビを前に動かないのは尻込みではなく、駆け引きの結果だった。にらみ合う両者の間には生き残りや捕食をかけた高度な戦略が隠されていた。
捕食者と被食者(獲物)の攻防は先手を打って動き始めた方が有利になる――。生物学の世界ではこの考え方が一般的だが、カエルの多くはヘビと向き合うと、至近距離に近づかれるまで静止する。対するヘビも急襲せず、両者が1時間近くにらみ合うこともある。こうした行動は従来の「先手有利」の見解では説明できず、カエルの「尻込み」が俗説として広まった。
研究チームはこの謎を解き明かそうと、トノサマガエルとシマヘビを屋内で対峙(たいじ)させ、両者の動き方を何度もビデオ撮影。野外での観察結果も踏まえて分析した。(上右写真)
実験の結果、カエルはいったん跳躍すると空中で進路を変えられず、ヘビに動きを読まれて捕まる恐れがあることが分かった。一方、ヘビもかみつく際に折り曲げた体を一気に伸ばすため、先に動くと方向転換できずカエルによけられやすい。かみつきに失敗すると体が0・4秒前後硬直し、カエルを追走できないことも判明した。
5~10センチの距離 先手後手を使い分ける両者
さらに、カエルがヘビの先制攻撃をかわせない距離(5〜10センチ)では、両者ともに先に仕掛ける動きを見せた。両者は相手との距離に応じ、戦術的に先手か後手かを巧みに使い分けることで、状況によって我慢比べのような足踏み状態になっていることが推察されたという。
研究チーム代表だった基礎生物学研究所の西海望さん(当時は京大理学研究科博士課程)は、「『ヘビににらまれたカエル』は恐怖で動けない例えではなく、危機を切り抜ける瞬間を虎視眈々(たんたん)と狙う状態の比喩として使う方が、生物学的には正しいかもしれない」と話した。
研究論文は今春、カナダの国際学術誌「カナディアン・ジャーナル・オブ・ズーロジー」の電子版(https://doi.org/10.1139/cjz-2019-0164)で紹介された。同誌は6月、優れた論文に選出した。【田畠広景】