この前に行ったのは2008年の12月初め。紅葉は終わり、境内に人影なし。その前に行ったのは1968年の今頃。紅葉には早かった。
40年の間にはいろいろなことがあった。でもまた生きて再訪できたのを良しとしなければ。いろんなことは忘れたのに、奥の、誰も来ない静かな庵、ご住職の若いころの話。それとその時の自分の服装を憶えている。
いつか古知谷のことを書きたいと思って、もう四年もたった。心の中をすっきりと片付けてからと思ううちに時間ばかりが過ぎて行く。
本に書かれていることは誰がどうしたということ、世の中と自然界の過去、現在、未来の仕組み。簡単に言うとそうかもしれない。普遍的なものをつかんで顕にしたときにだけ人の感動を呼ぶ。
生きている人もまたその人らしく生き、その人らしさに向けて成熟していくもの。それは一つの物語だと言った後で、気恥ずかしくなる。40年の歳月でその程度の分別は身についたらしい。
読解不能の長い長い構文。そんなこと言わなければもっと付き合いやすい人だったけど、それがその人。誰も、別の誰かとは替われない。
変わらないということはとても大切。日本国中、この40年間、目まぐるしく変わったから。場所が変わらないから、自分の境遇の変わったことがわかる。そこを訪ねて、このものを考えない私も少しはいろんなことを考える。