本日はこれでございます。帯には「日本にとって最大の"脅威"は安倍政権だ」
著者は左翼でも右翼でもなく、第一次安倍内閣で内閣官房副長官補(安全保障担当)を務めた防衛官僚、実務官僚の立場から安倍政権の安保政策が、周辺の国々を刺激し、軍事的脅威を煽ることにしかならないことを豊富な資料を基に分かりやすく分析する。
一読嘆息。今の政権にあるのは冷静な情勢分析でもなく、長期的なこの国の未来へのビジョンでもなく、ただ、最近強国になった来た隣国へ、軍事力を増大したら睨みがきくのではないかという短絡的な思考である。
なぜそんなに憲法解釈を変えてまで集団的自衛権を行使したいのか、一切の反対意見に耳を貸さず、何の感情も読み取れない首相の表情がいつも不可解だった私。本書を読んでなるほどと思った。
彼はそうしたいからするのだと。理念というか妄想だけが先走る。大陸間弾道ミサイルを日本から迎撃するなんて、ミサイルは日本の上は飛ばない。飛行機だって、ヨーロッパ行くときもアメリカ行くときも北を廻るはず。迎撃ミサイルより速い、日本からどんどん離れるミサイルをどうやって撃ち落しますか、無理でしょと丁寧に説明してくれている。
だいいち、今どこの国がアメリカに向けてミサイル打ち込む?そんな危機が迫っているわけでもないのに、あり得ない前提。全く国民をバカにしているというものです。理屈が初めから破たんしているので、次は感情に訴える。温厚な私も←どこが!!呆れます。
アメリカも中国も戦争をしようとは思っていない。お互い落としどころを探り合うことがこれからも続くはず。日本が国際社会で「名誉ある地位」を得ようと、軍事バランスの一角に食い込もうとするのは間違い。
外交の力で根気よく戦争を回避してもらいたいもの。尖閣諸島について、口では聞くに堪えない強気なことを言っても、用心深く衝突を避けているのが中国。日本が挑発に乗って何かを起こすと、相手が先に手を出したということになりがちと、この本ではいさめている。
政治家はもっともっと賢くなるべき。政権の中にも昔はいろいろな意見があってバランスが取れていたけれど、今はノーと言う人がいない。
靖国参拝も一部国民と右翼以外に誰も賛成せず、アメリカからも失望されたのに、前もってなぜそれが分からないのかと思ってしまう。合祀したのは、前に分祀していたのだからまた出来るはずとは全くそうだし、神様も仏様も結局は人間が自分の都合のいいように作ったものだから、どのようにでも替えられずはず。
これからの日本は米中の大国の間にあって、その時々で様子見ながら妥協しながら、時には二国間の安全弁になって独自の平和国家として生き延びるべき。
132ページとハンディな本だし、著者も岩波の編集者はさすが優秀で、必要にして充分な内容です。是非、ご一読ください。
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