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ある方のブログを見ていたら、香川県庁が。確か昭和30年代初め、丹下健三設計で竣工したはず。
いい衣服が人を気持ちよくさせ、いい家が人を心地よく過ごさせるのと同じ意味で、香川県庁の本館はとても癒される建物でした。
通っていた高校がすぐ近くにあったので、よく遊びに行きました。県庁で遊ぶというのも変な話だけど、一階は道路からそのまま入れる広いピロティで、陶器や石の椅子テーブルがあり、自転車停めて友達とよくしゃべったものです。
エレベーターに乗って屋上へ行くと、その頃は高い建物がないので、市内が一望でき、港を出入りする宇高連絡船に、島も見えたと思う。
今は廃止になったらしいが、屋上にはパーラーがあり、これまた友達とかき氷なんか食べながら、いろんなこと喋ったものです。確か一番高い宇治金時が50円くらい。
昼休みは県庁の食堂へご飯食べに行く子もたくさんいて、県庁から苦情が来たほど。
いえいえ食べることはどうでもよろしい。
この建物の最大の特徴はすべて吐き出し窓で、ぐるりとベランダが取り囲んでいること。ベランダは下の階の深い庇となり、風を通し、直射日光を遮り、誠に南国四国の海辺の街にふさわしい建築になっていること。
鉄筋コンクリートの建物なのに、木の建物のようなぬくもりのある不思議な建物でした。
高校の卒業写真は好きなところで撮ったけど、殆どのクラスは県庁の庭で。どこをどう写しても納まりのいい庭でした。
そうそう、たまに帰省して男の子と会うときにも屋根があって無料で休めるので、そう構えずに話が弾んだりする。ちょっと気取って、それ以上に心が安らぐ。それも建築の力かも。
父が亡くなったのも県庁の近くの病院で、窓からは建築中の新館がよく見えていた。父は二週間前まで元気に話ができていたので、病室にカメラを持ち込み、見舞いに来てくれた人や窓からの景色をせっせと写していた。
それを現像して見ることはかなわなかったけど。
田舎の人の義理堅さ、次から次へといろんな方がお見舞いに来てくれて、いつも病室は賑やかで、私の知らない昔話もいっぱい聞けて、楽しいというのとは違うけど、どんな無名の人間にもドラマがあり、人と人のつながりがあるのだと勉強させてもらって、中身の濃い日々でした。
本当に近い人の葬式で、泣きますか。それまでに充分泣いているので、私は涙の一粒も出ませんでしたね。亡くなった時も「よく頑張ったね。もう楽になってよかったね」と心の中で語りかけました。
「人前で泣くな」と私があれほど言っていたのに、喪主は大泣き。ああっみっともない。泣く場面が違うだろと思ったけど、でもまあ、どこかで泣かないと気持ちが次に向いて行かないからね。
おやおや、県庁から話がそれてしまいました。
同じ病院に母が入院した時には新館は落成。県庁の横を歩くといろんなことを思い出して胸に迫った。楽しいことも悲しいことも丹下建築とともに。
日本の見ておくべき100の建築に入ってるそうです。あとの99はどこでしょう?