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「人世に疲れたらスペイン巡礼」 小野美由紀

2016-04-25 | 読書

スペイン巡礼者のための宿の跡、目印のホタテ貝の飾り。2014年6月、フランス、ピレネー山中のコンクで。

この村もスペインに向けて、リュックにホタテの貝殻を付けた巡礼者が歩いていました。


1985年生まれの若い著者。就職してしばらくしたころ、パニック障害に陥り、会社に行けなくなったそうで、人世を見つめ直すため、一人でスペイン巡礼の旅に行ったそうで、その体験記ですが、巡礼の歴史や装備、宿のアドバイスなど、過不足なく網羅していて、たいそう面白い読み物になっています。

歩いたのはスペイン国境に近いフランスのサン・ジャン・ピエド・ポーから聖地サンチャゴ・デ・コンポステーラまでの800キロ、三回に分けて歩いたそうです。途中高い山も越え、ハードな旅ですが、道はよく整備され、途中の集落には必ず巡礼宿があり、相部屋の素泊まりだと千円くらいから泊まれるとか。

歩きながらいろいろな人と知り合いになり、夜は食材持ち寄って自炊して、楽しく情報交換、いゃあ本当に楽しそう。そして、各自それぞれの動機で巡礼をしている人から含蓄に富む言葉を聞いたり、ただ歩くことで、自分の心と向き合い、何が必要で、何が要らないのか分かってくるという。いわば心の洗濯ですね。

老人も歩いているとか。荷物だけは次の宿に送ってもらって身軽に歩いたり、ガイド付けたり、それぞれのスタイルで巡礼を楽しんでいる。

で、この巡礼、11世紀からあるけれど、ずっとすたれていて、1980年代から人気が復活したという。

1985年、2491人、2010年にはなんと272,135人がゴールの証明書貰ったそうで。

文明社会に疲れたら一度自分の足で歩いてみる、日本のお四国遍路に通じる魅力がありそうですね。

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