初心者の老人です

75才になって初めてVISTAを始めました。

千切りカットの監督

2009年01月17日 17時19分33秒 | Weblog
   昨日の原稿で間違いがありました。『誠意』→『聖衣』です。

 映画の助監督はファースト(チーフ)。セカンド、サード、フォースの四人です。チーフは監督代行で宣伝用の予告編なども任されます。
 あるチーフ助監督の予告編が会社内で評判になりました。本編のNGカットを短く拾い上げて作りました。予告編に割り当てられたフィルムは本編に繰り入れました。映画一本のフィルムの割り当ては仕上がりの二倍ぐらいでしたから、予告編用のフィルムは本編にとってありがたいのです。

 その後、この助監督さんは監督に昇進しました。そして予告編のように短いカットの積み重ねで作り上げていきました。
 立ち回りで、両方の剣士が刀を交えると、切りつける剣士のアップ、切られた剣士の顔に血糊を塗ってアップを撮るという具合で立ち回りの全景シーンがすくないのです。この短いカットの連続で、絵にスピード感が出て、興行的にヒット作もたくさん作られました。

 この監督の仕事はいつも、短いカットの積み重ねでしたから、“千切りカット”と陰であだ名が付けられました。出演する俳優さんの長いセリフはありません。そのうち、スタッフも俳優さんもこの監督は長回しはしないなと考えるようになりました。

 あるとき、この監督は意欲を燃やして、ワンシーンを長く回そうと考えました、スタッフ、キャストはどうせまた短いだろうと思っていましたから、セリフはとちるし、うまくゆきませんでした。監督の仕事スタイル、イメージがスタジオ内で定着するとそれを壊すことが難しくなります。

 映画に限らず、世間一般で、いつも熱心に仕事をしている人がたまに手を抜くと、怠けているように見えますし、いつも加減して仕事をしている人がたまに熱心に仕事をすると、えらい熱心だなあと評価されます。みんなのなかで仕事をしていくのは難しいものです。