満洲、新京に来て初めての春を
迎えることになったのですがある日、
親父にゴーグルを買ってもらいました。
「当分、春には必要になる…!」と
云われました。
ゴーグルとは水泳の水中眼鏡や
スキー選手が競技で使う眼鏡の
ことです…
プラスチック万能の現在では
格好いいデザインがありますが
当時はガラスだけでしたから実用本位です。
親父に貰ったゴーグルは
水中眼鏡ほど気密ではありませんが
なぜ、ゴーグルが必要かわかりません、
… … …
初春のある日、登校時の朝
窓の外を見ると強い西風とともに
あたりが真っ黄色になって、何も見えません
真っ黄色の原因は、細かな砂粒が強い風で
舞い上がっているのです…
ゴーグルは、この強烈な砂粒から
目を守るのだと、はじめて気が付きました
私は登校のため、ゴーグル(水中眼鏡風)を
着けて外へ出ました…
私の前、1、2メートル先を歩いている人が
ボンヤリと黒っぽく見えるだけです…
この強い風と黄色い砂煙の道を歩いて
学校へ到着しました。登校してくる生徒達も
全員ゴーグル姿です。そして校舎に入って
学生服についた砂粒を払っています…
… … …
日本へ帰ってから、
「黄塵万丈(こうじんばんじょう)」と
いう四字熟語を知りました。