■■経営理念のチェック 連載小説 経営コンサルタント竹根好助の「先見思考経営」 No.96 昼休みのブログ
昼は休みに読むブログ連載小説です。経営コンサルタントとどのようにつきあうと経営者・管理職として、プロ士業として一歩上を目指せるのか、小説を通じて体感してください。
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【本書の読み方】 脚注参照
■9 顧問契約 7 通算96回 経営理念のチェック
印刷会社であるラッキーの社長である幸と竹根は靖国神社境内を散策しながら、二人が再会した1980年代のことを思い出している。
ラッキー取締役を対象とした取締役研修は、ビジネスドックという竹根が開発した思考ツールを使いながら進められる。研修方法も多種多様で、初めての体験をしたラッキーの取締役は始めは戸惑った。次第に、幹部研修の雰囲気が分かった頃には研修は終わった。しかし、個別課題は宿題となった。社長の幸も「経営理念」という課題が与えられた。
研修後、初めて竹根がラッキーの社長室を訪問した。顧問契約書を交わすためである。契約書の内容を竹根が説明し始めた。その一つにコンピュータ・システムの導入の件があった。その話の中で、橋上の幸は、竹根のコンサルタントとしての姿勢を感じ取った。
【回想2 1980年代】
数日後に竹根が荻野を連れて改訂した契約書を持参してきた。そのときに、荻野は印刷業界の出身であり、業界での実績があることを知った。また竹根自身も商社マン時代に印刷業界と関わりがあることは先刻承知で、竹根の人選にますます信頼感が高まった。
契約の調印が済むとその日からコンサルティングが開始された。事前にその旨を聞いていたので、幸は時間も打合せ通りに確保しておいた。先般からやりとりしている経営理念の問題である。竹根からは、経営理念構築には、自分の思いや経営に関するキーワードを列挙し、それをベースに文章にしていくことを教えられていたので、そのように進めてきた。
「稚拙な経営理念でお恥ずかしいのですが、こんな形にまとめてみました」
「では、拝見させてもらいましょうか」
竹根は、じっと幸が書いたA4サイズの用紙を見つめている。幸は、何を言われるのか、NGがでるのでは、と、受験生が合格発表を待つ以上に緊張した心地で次の言葉を待っている。
幸の方を向いてニッコリした。しかし、竹根の笑顔は必ずしも朗報とは限らないことをこれまでのつきあいで知っている。幸は、覚悟をして言葉を待った。
――はじめから、合格点をもらえると考えること事態ありえないのだ。それに少々少々虫が良すぎる――
腹が決まると、――どうすれば良くなるかを考えればいい――と自分に言い聞かせた。
「社長が、平素考えているキーワードが盛り込まれていて良いのではないですか?」
「先生、そんな気休めを言わないでください。先生がニッコリしたときには裏があることくらい、昔経験してますからね」
「それはまた、変な誤解をさせているようですね。素直に受け入れてください。強いて言えば、少々文章が長い点が気になります。また、いろいろと盛り込みすぎている嫌いがあります。しかしはじめは、むしろこのくらいかみ砕いた方が社員にはわかりやすいですね。ちょっと手を入れてみましょうか」
< 次回に続く お楽しみに >
■■ 脚注
本書は、現代情景と階層部分を並行して話が展開する新しい試みをしています。読みづらい部分もあろうかと思いますので、現代情景部分については【現代】と、また過去の回想シーンについては【回想】と表記します。回想シーンも、回想1は1970年代前半にはじめて幸が竹根に会ったときと、回想2は、その十数年後、二度目にあったときの二つの時間帯があります。
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