■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 経営に必須の『SDGs』入門 理解し活用する意義
「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。
日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。
■ 今日のおすすめ
『SDGs入門』
(〈株〉日本総合研究所 村上 茅・渡辺 珠子著 日本経済新聞社)
■ 企業経営にとって「SDGs」を理解し活用する意義(はじめに)
【「SDGs」とは何か】
「SDGs(Sustainable Development Goalsの頭文字)」と言う文字を最近新聞等でよく見かけるようになりました。なんとなくイメージは沸きますが、「SDGs」の内容の正確な把握はできているでしょうか。紹介本が示す定義の要点をご紹介しましょう。
「SDGs」は2015年9月25日の第70回の国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」です。分かり易く表現すれば「2030に向けた、全世界共通の、『持続可能な成長戦略』」となります。
「SDGs」は17の目標(ゴール)、169のターゲット、232の指標(ターゲットの進捗状況の計り方)から成り立っています。尚、ターゲットには“2・5”あるいは“2・b”といった符号がついています。前者は「ゴールの中身に関するターゲット」、後者は「ゴールの実現方法に関するターゲット」と使い分けられています。合わせて169になるのです。目標1~6は「住みやすい社会を作ろう」、目標7~12は「持続可能な経済圏を作ろう」、目標13~15は「我々を取り巻く環境を守ろう」です。更に、この目標1~15の目標を達成するために必要なのが、目標16の「平和を維持すること」と目標17の「お互いのパートナーシップ」です。
【「SDGs」と企業経営の繋がりを理解する】
著者は『経営者が感じる「SDGs」の3つの魅力』を挙げています。①「新規事業開発や既存事業の拡大につながりそうだ」②「新たな人材獲得の武器になりそうだ」③「コミュニュケーションツールとして有効だ」です。
この3つの魅力を実現するツールを著者が紹介しています。分かり易いツールの例として、『「SDGコンパス」+「PDCAサイクルによるSDGsの取り組み」』や『ロジックツリーを応用した「ロジックモデル」+「KPIマネジメント」』などが示されています。是非ご関心のある方は本書を手にして、読取・活用して頂ければと思います。
ちなみに、2018年12月の経済産業省関東経済産業局「中小企業のSDGs認知度・実態等調査結果」によれば、「SDGsを全く知らない」+「内容を知らない」が92.2%との結果が出ています。中小企業の経営者に「SDGs」を良く分って頂くことで、課題である、生産性の向上の契機にできると思います。
それでは、「3つの魅力」を実現した企業の実例を次項に記します。
■ 企業が「SDGs」を有益に活用している事例
「SDGs」の経営への活用・成功事例は最近急速に増えています。字数の関係もあり、紹介本に記述されている多くの活用事例、マスコミで取り上げられている多くの活用事例の中から、「3つの魅力」につき1事例のみ記させていただきます。それ以外の活用事例については、紹介本に加え、WEB等を是非参考にして下さい。
【「新規事業開発」と「既存事業拡大」の事例】
セイコーエプソンでは、使用済みの紙を投入するとその場で100%の再生紙を製造する「ペーパーラボ(PaperLab)」と言う機械を開発しました。このペーパーラボは、 1時間でA4サイズ使用済用紙915枚を処理し、720枚の再生紙を作り出す事が出来ます。
この処理は、水をほとんど使わず(通常はA4サイズの紙を1枚作るのにコップ1杯程度の水が必要)、外部への委託処理もありません。
この結果、「SDGs」のターゲット8.4「消費と生産における資源効率を改善し経済成長と環境悪化の分断を図る」、12.2「天然資源の持続可能・効率的利用」、12.4「環境上適切な廃棄物の管理」、12.5「廃棄物の大幅削減」に貢献するだけでなく、ターゲット6.4「水の利用効率の大幅な改善」、9.4「資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大」、15.2「森林減少の阻止」等、様々なターゲットに貢献している画期的な製品と言えるのではないでしょうか。
【「新たな人材獲得」の武器として活用】
「・・誰もがやりがいを持って働き続けること・・」をミッションとして「女性の再就職」を支援している株式会社ワリス(Waris)の事例です。
ベンチャー企業は成長するに伴い、バックオフィス(管理部門)業務を派遣に任せ、本業に注力できる体制にする必要があり、バックオフィス職はベンチャー企業からの引き合いが多く、再就職する女性にはチャンスです。そこに注目したワリスは、ベンチャー企業のニーズを把握し、それに対応できるstaff(人材)、skill(能力)、style(リーダーシップ)などの独自のプログラムを有し、バックオフィス職に相応しい人材を確保し、或いは必要な教育等を実施し派遣プログラムを充実させています。それと同時に、インターンシップの導入、働く時間・場所を柔軟に選択できる体制の構築もしています。この結果顧客数は1700社、派遣登録者は1万人と大きく成長しています。
ワリスは、この様にバックオフィス職の人材を豊富に有していることから、大小を問わず、企業がバックオフィス業務のみを切り出して、派遣に切替え固定費の人件費を変動費化するニーズにも応えています。
ワリスの再就職支援や専門人材の活用支援は、ターゲット8.5「生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事」に加え、柔軟な働き方を支援することで8.5「安心な労働環境を促進する」を達成し、社会に貢献しているのです。
【「コミュニュケーションツール」として活用】
大和証券グループは、社内に「SDGs推進委員会」を立上げ、中期経営計画にも取組み強化を盛り込んでいます。その結果、新しいSDGs商品の売り出しや、新しいSDGs事業への参入に成果を出しています。
この様な成果は、SDGsへの取組み中で、社員にSDGsに係る取組み事例を募集したところ、直ちに120人もの社員から4200個を超える応募がベースとなっています。応募が多数にのぼった事は、SDGsの目標(ゴール)、ターゲット、指標が「コミュニュケーションツール」になっていることの証左ではないでしょうか。(「日経朝刊2019.9.30大和証券グループ広告」より)
■ 必ず企業経営にプラスになる「SDGs」を早速はじめよう(むすび)
SDGsの『経営にとっての「3つの魅力」』を実現するには、現在実施しているISO1400・9000等の中に「SDGs」を取込むことで直ちに始めることが可能です。勿論、前述した紹介本のツールを使って新たにスタートするのも良いでしょう。
いずれにしても、SDGsを経営に取込むことで必ず経営の革新をもたらすと同時に、新たな企業価値の力強い発信力になるのではないでしょうか。
【酒井 闊 先生 プロフィール】
10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。
http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm
http://sakai-gm.jp/
【 注 】
著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。
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