ごっとさんのブログ

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ダウン症マウス生まれる前に改善薬

2017-09-10 10:20:02 | 健康・医療
京都大学の研究グループが、妊娠中のマウスに与えることで生まれてきたダウン症の子供マウスの症状を改善する化合物を発見しました。

ヒトの場合ダウン症は千人に1人の割合で生まれ、通常は2本である21番目の染色体が3本あり、遺伝子が過剰に働く影響で知的障害や先天性の心臓病などを引き起こします。妊娠中胎児がダウン症かどうかは調べられますが、根本的な治療法はありません。

研究グループは、ダウン症で過剰に発現し神経幹細胞の増殖を妨げるタンパク質に着目しました。ダウン症モデルのマウスの神経幹細胞に約700種類の化合物を作用させ、このタンパク質の活性を抑制し、神経幹細胞の増殖をうながすタイプの化合物を見出しました。

余談ですがこういったタンパク質の活性阻害剤の探索で、この程度の化合物数でヒットするというのはかなり運が良いといえます。この化合物の情報は全くありませんが、既知のタンパプ質の阻害剤などかもしれません。

研究グループはこういった化合物の中で、胎盤を通じて脳に到達しやすい化合物を、ダウン症の胎児を妊娠している母マウスに投与しました。胎児のマウスの大脳皮質は、健常なマウスと同じ厚さとなり、生まれた子マウスは迷路テストで健常なマウスと差のない学習能力を示しました。

またダウン症患者から作ったヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って、化合物の作用を解析すると、ヒトの神経幹細胞を増殖させる機能が回復していました。研究グループは、ダウン症だけではなく脳梗塞やパーキンソン病など、ほかの病気にも応用できるはずとしています。

今回の実験は、出生前に薬を投与しダウン症の脳の発達を促す可能性を示しましたが、先天性疾患の専門家は「実際に人へ投与するには効果や安全面での確認すべきハードルがたくさんある」としています。

またダウン症の子供を持つ母親からは「豊かな感情などダウン症の人の魅力は大きい。知的な発達を一概に治療対象にすべきではない」というような意見も出ているようです。私はダウン症というのは、明らかに遺伝性の疾患であり、検査法もできている時代に治療に慎重になる意味がわかりません。

現在は妊婦の血液でダウン症などの染色体異常を調べる検査が行われており、染色体異常が確定した人の9割以上が人工妊娠中絶をしている状況で、治療を慎重にする必要はないと思われます。妊婦に投与して胎児の病気を治すというのは、今までにない新しい方法ですので、臨床試験に入る前に確認すべきことは多いと思われますが、今後の進展を期待しています。

こういった遺伝子疾患を、化合物という薬で改善できる可能性を示した今回の研究の意義は大きいと考えています。