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降圧剤で肺がん発症率が上昇?

2018-12-24 09:22:56 | 
降圧剤の一種である「アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤」の服用により、肺ガンのリスクが増すという衝撃的な論文が発表されました。

カナダのジューイッシュ総合病院の研究グループは、1995年から2015年に降圧薬の服用を開始したイギリス人の高血圧患者99万2061人を追跡調査した結果をまとめました。

それによると、ACE阻害薬を服用した患者は、同じく降圧剤の一種であるアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を服用した患者より、肺ガン発症率(ハザード比)が14%高くなりました。さらに服用期間が10年を超える患者に限定した調査では、発症率は30%増になったと報告しています。

日本では国立がん研究センターが、肺ガンを発症する患者数が年間12万5100人にのぼると推計しており(2018年予測)、年間の死者数は約7万7500人で、全ガン中1位となっています。

その肺ガンと降圧剤に何らかの関係があると結論付けた論文は、医学界にインパクトを与えています。日本高血圧学会理事の医師は、「大規模で追跡期間も長い調査で、今後イギリス以外の国でも同じような傾向が明らかになれば、日本の高血圧治療ガイドラインが推奨する治療薬が変更される可能性も出てくる」と述べています。

国民病と呼ばれる高血圧患者は約4300万人で、そのうちACE阻害薬を服用しているのは9%で、約200万人と推計されています。高血圧治療ガイドライン(最新は2014年版)では。降圧作用を持つ第1選択薬として、ACE阻害薬、ARB、カルシウム拮抗薬、利尿剤の4種類を示しています。

降圧剤は血管を広げて血圧を下げるタイプと血液量の増加を抑えて血圧を下げる対応に大別されます。ACE阻害薬は、血管を収縮させるホルモン「アンジオテンシンII」を作らせないことで、血管を広げて血圧を下げるタイプとなります。

このACE阻害薬のメリットとして、タンパク尿を減らして腎臓を保護する作用や、心不全などの予後を改善する効果があるとされています。このような優秀なACE阻害薬に、なぜ肺ガンリスクが指摘されたのか、色々推測しています。

その一つがACE阻害薬による、ブラジキニンというタンパク質の増加作用です。これが空咳を引き起こす原因ですが、ブラジキニンには肺ガン細胞の増殖を促進する働きがあるという見方をされているようです。

しかし私は今回の発表をそれほど気にすることはないと思っています。こういった疫学調査ではある病気との関連を探すと、この程度の数値は出てくるのですが、それがどの程度信頼度があるのか疑わしいと感じています。一つの研究結果が出たという程度で良いような気がします。