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腎細胞ガンに特異的なタンパク質を発見

2019-12-23 10:05:52 | 自然
腎細胞ガンの細胞に特異的に発現して転移にも関わるタンパク質を見つけたと、千葉大学の研究グループが発表しました。

このタンパク質が腎細胞ガンの腫瘍マーカーや抗ガン剤に使えると期待されています。研究グループが着目したのは「アミノ酸トランスポーターLAT1」と呼ばれるタンパク質です。

アミノ酸トランスポーターは細胞の中にアミノ酸を運ぶ役割を果たしており、人体の維持に必要な必須アミノ酸(ロイシンなど)を取り込む役割があります。LATには1~4までの種類がありますが、中でもLAT1は様々なガン細胞に発現することで近年注目を集めています。

研究グループは腎細胞がんの手術を受けた患者のガン組織と正常組織をそれぞれLAT1の反応する抗体で染色しました。するとガン組織にはLAT1が多く発現しており、ガン組織での発現が多いほど転移や再発が多いことが分かりました。

私の大学時代の友人も数年前に腎臓ガンになり、片側の腎臓を摘出しましたが、残りの腎臓にもすぐ転移をするだろうと言っていました。しかし幸いにも転移や再発もなく、昨年会いましたが元気にしていました。

研究グループは既に製薬会社と共同で、LAT1の働きを抑える阻害剤を開発していました。今回その阻害剤を腎細胞ガンの細胞に投与する実験をした結果、ガン細胞の増殖が抑制されることが明らかになりました。

これまで腎細胞がんの腫瘍マーカーはなく、研究グループは今回の成果からLAT1が腎細胞がんの初の腫瘍マーカーとして活用できる可能性があるとしています。またLAT1の阻害剤が抗ガン剤として使える可能性を検討するとしています。

腎細胞ガンの細胞に対して阻害剤を投与すると、細胞の中に入るアミノ酸の量が減少します。また必須アミノ酸の流入が減少することにより、アミノ酸により活性化されガンの細胞増殖に重要な役割を果たすリン酸化酵素の活性が低下し、その結果腎細胞ガンの細胞増殖が抑制されることが分かっています。

腎臓のガンには腎細胞ガンと腎盂ガンとがあり、腎臓ガン患者数は約30年にわたって増加傾向にあります。患者の男女比は約2:1で男性が発症しやすく、男女とも50歳代から増えており社会の高齢化とともに今後も患者が増えると見られています。

今後は腎細胞ガンだけでなく前立腺ガン、膀胱ガンなど他のガンへの応用研究や、ヒトへの阻害薬投与を行う臨床研究を計画しており、実用化に向けて研究を進めるとしています。

ただしLAT1は正常細胞にも存在するタンパク質ですので、大量発現しているとはいえガン細胞との区別が問題になるような気もします。