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悪玉脂質をつくる腸内細菌が肥満や高血糖を悪化

2023-02-28 10:45:28 | 健康・医療
近年腸内細菌の研究が盛んになり、単に消化吸収に関与しているだけではなく、非常に様々な現象が明らかになってきました。

腸内細菌の種類や数ははっきりしていませんが、種類は500〜1000、数は40兆とも100兆ともいわれています。その総重量は1〜2キログラムに達すると推定されています。

理化学研究所は大学と連携してこの分野でも多くの研究成果を上げており、健康に悪影響を与える「悪玉脂質」であるトランス脂肪酸を産生する特定の腸内細菌が肥満を悪化させることを突き止めました。

研究グループによると、腸内細菌は食事成分の一部を代謝して低分子化合物を産生します。このため食事がもたらす健康や病気と密接に関係しており、たとえば肉などに含まれるリン脂質は腸内細菌によって代謝された後に体内に吸収され、動脈硬化を悪化させる物質に変換されることが知られています。

研究グループは、腸内細菌による産生物質に着目することで、肥満や高血糖などと腸内細菌を結ぶ新しい仕組みを見つけられると考えました。そして肥満や高血糖の実験マウスから単離されたF1という細菌に注目しました。

肥満で糖尿病患者と健常人それぞれ34人の便を調べたところ、患者がF1菌を持っている率は健常人よりも約2倍高く、保菌者のF1菌数は空腹時血糖値や肥満度と相関性を示していました。

また無菌状態のマウスに大腸菌だけを定着させたマウスと、F1菌と大腸菌の両方を定着させたマウスの両群に通常の食事と高脂肪食をそれぞれ与える実験を行いました。

その結果F1菌があるマウスは大腸菌だけのマウスと比べ、高脂肪食を与えたときに体重と脂肪重量が目立って増加して血中コレステロール値が悪化しました。さらに血糖値も悪化する傾向になることが分かりました。

F1菌が多くあるマウスを詳しく調べると、トランス脂肪酸の一種「エライジン酸」などが増加していることなども判明しました。トランス脂肪酸はLDLコレステロールを増加させて、血管などに悪影響を与えることが分かっています。

研究グループは、高脂質食を多く摂取すると腸内細菌のF1菌が悪玉脂質を代謝物として産生します。これが腸管の機能(腸管バリア機能)に悪影響を与えて肥満や高血糖という代謝疾患を悪化させるとしています。

今回の研究成果に先立って、腸内細菌が歯周病や多発性硬化症を悪化させることも明らかにしています。2021年には新潟大学と共同で、肥満による腸内細菌の変化が歯周病を悪化させる仕組みを解明し発表しています。

このようにいわば悪玉の腸内細菌の代謝やその機能などが明らかになりつつありますが、腸内細菌叢を人為的に変えることは可能なのかなど、課題は多いような気がします。


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