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変異株に効くエイズワクチンの突破口

2021-05-23 10:25:17 | 健康・医療
日本ではあまり問題になっていないエイズですが、比較的良い治療法が開発されたとはいえ、世界的にはまだ難しい課題が多いようです。

エイズはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)というウイルスによって発症するわけですが、このウイルスの特徴は非常に変異が早いという点です。

通常ウイルス性疾患はウイルスが体内に入ってくると、それに対する抗体が作られウイルスを撃退することができます。現在の新型コロナもこのメカニズムによって大部分の患者が自然に治ります。

しかしHIVの場合は感染者が抗体を作ってもすでに変異しており、効果を出すことはできないほど速い変異で、エイズ患者は自力で治すことはできないとされています。

当然HIVが発見されてからワクチンを作る研究は行われているのですが、50年以上たった現在でも有効なワクチン候補は存在しません。2021年2月に米スクリプス研究所などの研究者らが、新たなエイズワクチン戦略における第1相試験の有望な結果を発表しました。

まだ実用化には程遠いもののエイズワクチン開発への光明が見えてきたのかもしれません。エイズワクチンの探索は、1984年にウイルスが分離され、それがエイズの原因であることが確かめられた直後から始まりました。

最初の波では、最も確立されていた手法に焦点が当てられ、人間の免疫系を刺激してウイルスを不活性化する中和抗体を作らせるというものです。

抗体はウイルス表面にある特定のタンパク質を標的にしますが、HIVの変異性は極めて高く抗体は認識できない変異株を素早く作り出し、常に免疫系に一歩先んじていました。2000年初頭にエイズワクチンの開発には2番目の波が訪れました。

これは抗体ではなく、体内の兵士ともいえるキラーT細胞を目当てにするというアイデアに基づく戦略でした。T細胞は抗体の産生を助けますが、同時に感染した細胞も破壊します。しかし2007年このアイデアは、「STEP」と呼ばれる第2相試験において、予防効果を発揮することはできませんでした。

エイズワクチン開発の3番目で現在の波は、2000年代末に始まりました。きっかけはHIVに感染した人のごく一部から、HIVの多様な株を一度に中和できる特に強力な抗体が見つかったことです。

新たな発想として、血液中のナイーブB細胞をターゲットにすれば、ウイルスに先んじる効果的なワクチンを作れる可能性が出てきました。これをもとに2010年、NIHワクチン研究センターは「VRC01」と呼ばれる広域中和抗体の研究を開始しました。

詳細は省略しますが、このB細胞により、かなり変異したHIVも攻撃できるようになったようです。こういった変異しやすいウイルスに対するワクチンの開発は、現在のコロナワクチンの開発にも応用できる手法と言えるのかもしれません。


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