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肝機能の検査値「γGPT」だけ見ても不十分

2023-12-10 10:35:05 | その他
現代病の一つに位置づけられる肝臓病は、アルコールの指標であるγGPTを注意するだけでは不十分という記事が、東洋経済に掲載されていました。これを紹介しますがその前に、肝機能検査について触れてみます。

私は現役のころ、一時臨床検査薬の研究開発グループとオフィスを共有していました。このグループのボスは私の後輩でしたが、臨床検査のプロで本当に肝機能を表わす検査法の開発に取り組んでいました。

当時から現在も使われている肝機能検査としてALT(GPT)やAST(GOT)、γGPTがあります。この数値が高くなると肝機能が落ちてきたと判断されますが、実際は肝機能との相関はないようです。

例えば腎臓に関してはBUNやクレアチニンが測定されますが、こういった物は通常腎臓がろ過して除いている老廃物の一種です。こういった物が血液中に増えるという事は、腎臓の排除機能が衰えているためであり、腎機能と直結しているといえます。

ところが肝臓に関してはそういった物質が見つかっていません。そこで肝機能のマーカーとして前述の3種類が使われていますが、これらは単に肝臓だけに存在する酵素なのです。

つまりこういったマーカーが血液中に出てくるというのは、単に肝細胞が壊れて内容物が出てきたにすぎません。確かに酒を飲みすぎたりすると、その代謝のために肝細胞が働きその結果壊れてしまうことがありますので、γGPTなどは上昇します。

これは肝機能が正常であっても起こる現象ですので、単にどのくらい肝細胞が壊れたかを見ているにすぎません。γGPTはグルタチオンという解毒に関する物質を作る酵素ですので、いつの間にかこれが飲みすぎると上がるというような判断をされていますが、実は全く関係がないのです。

確かに解毒のためこの酵素が増えることはあるのですが、通常は肝臓内に留まるため、血液中には出てこないのです。つまり肝機能検査として3種のマーカーがありますが、ほぼ同じように上昇してしまうものなのです。

この様な肝機能マーカーの意味を知っている医師はほとんどいないと思っています。ただしこの肝機能マーカーが高くなるという事は、幹細胞が破壊されて炎症を起こしている肝炎や、肝臓内の線維組織が増えて硬くなる肝硬変である可能性を示していますので、ある程度の役割は果たしています。

この私の後輩の研究員は、肝機能が低下したマウスで血液中に出てくる特殊な物質を見つけたのですが、これを肝機能マーカーとすることはできませんでした。主に血液検査での簡単な測定法の開発が難しかったようです。

肝臓病の話を書くつもりが検査薬の話になってしまいましたが、単なる血液検査といってもその実情は難しい問題があるといえます。


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