ごっとさんのブログ

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新しいがん免疫療法

2015-10-28 10:32:55 | 健康・医療
昨日テレビの番組で、新しいがん免疫療法が紹介されました。テレビで取り上げられると、確立された方法のようなイメージがありますが、ある一部の研究者の成果だけで科学的に検証されているものではないものも多くあります。昨日の免疫療法は、臨床試験でそれなりの効果が出ているようですので、ある程度は信頼できるもののようです。

ここで取り上げられた方法は、免疫チェックポイント阻害剤という面白い名前の治療法でした。この治療法のそもそもの発想は、免疫学の研究者がPD-1というタンパクに注目し、この機能を調べたところ、免疫の暴走を止める役割を担っていることがわかりました。一方免疫細胞は、がん細胞を攻撃するのですが、がん細胞が免疫細胞のブレーキを押してしまうので、それ以上の攻撃ができなくなるということがわかっていたようです。

従来のがん免疫療法の研究は、いかに免疫細胞の活性を高くするか、いわばアクセルの研究だったわけです。ですからうまくアクセルを踏んで、がん細胞を攻撃しだしても、がん細胞がブレーキを踏んでしまうため、がん細胞をやっつけることができなかったようです。少なくとも現在まで、このような免疫療法は、科学的に効果があるとは言えなかったわけです。

ところがこのPD-1タンパク質が、いわば免疫細胞のブレーキの役割を果たしている可能性があり、この阻害剤を用いれば、免疫細胞ががん細胞を完全に殺すことができるはず、ということでこの阻害剤が開発されたわけです。まだ臨床試験の段階のようですが、これによってメラノーマの縮小が確認されたようです。このようにブレーキの作用をするタンパクを働かなくさせることによって、抗がん作用を高めるというのは画期的な手法というわけです。

ただしこれは免疫療法の根本的な問題ですが、がんの種類によっては遺伝子の異常部位が少ないようながんがあり、例えば大腸がんなどは免疫細胞が異物と認識できず、あまり効果がないようです。

このチェックポイント阻害剤自身は、がん細胞には何もしませんので、副作用は当然ないのですが、PD-1を抑えてしまいますので、免疫の暴走が起きる可能性があり、そのための副作用、いわゆるアレルギー疾患がいろいろ出る可能性があるようです。まだ臨床試験段階では、症例数も少なく副作用の把握は難しいのですが、この治療法が認められるかどうか期待しています。

このようにがん細胞が免疫を抑えてしまう、いわゆる免疫のブレーキ押してしまうということは、面白い知見ですので、これを基にした新しい取り組みができるはずで、これからのがん免疫療法に期待ができるかもしれません。

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