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オオスズメバチの女王のフェロモンを特定

2022-04-17 10:34:33 | 自然
フェロモンという言葉がどの程度一般的かは分かりませんが、私にとっては非常になじみ深いものです。

昆虫フェロモンがよく研究されていますが、ホルモンが自分の身体に色々な働きをするのに対して、他の個体に働きかける微量物質としてフェロモンは定義されています。

私が大学にいた50年ほど前にこの研究が活発になり、国内外を問わずフェロモン探しが過熱していました。

天然物化学をテーマとする研究室の先輩が、ゴキブリの集合フェロモンを探していたのですが、ゴキブリは2,3匹が集まると皆そこに集まるという習性があり、生物検定が難しいと嘆いていた記憶があります。それでもこの先輩は集合フェロモンを特定できたようです。

その後フェロモン研究は下火になったようですが、最近カリフォルニア大学などの研究チームが、オオスズメバチの女王の性フェロモンを特定することができたと発表しました。

オオスズメバチはミツバチを捕食することや、刺されるとかなり危険である(ハチ毒にアレルギーがある人には致命的)ことで知られています。アジア原産ですが、近年には米国にも分布していて、2020年8月にワシントン州で初めて捕獲されてからアメリカ北西部に広がりました。

スズメバチはほんの数時間でミツバチの巣を壊滅できるので、この侵略は憂慮されています。研究チームは中国雲南省にあるオオスズメバチのコロニーから未交尾の女王バチとオスバチを大量に捕獲し、女王バチの分泌物を採取しました。

ガスクロマトグラフィー質量分析法を用いて、6匹の女王バチからのフェロモンを特定しました。この成分やブレンドを粘着トラップで試したところ、何千匹ものオスバチが捕まったようです。

またこのようなトラップは特異性が高く、他種の昆虫やオオスズメバチのメスですら捕まりませんでした。研究チームが特定したフェロモンの成分はヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸という比較的一般的な短鎖脂肪酸でした。

ヘキサン酸(カプロン酸)は油臭い尿のようなにおいで、オクタン酸はわずかに鼻に突く匂いで動物の乳に含まれており、似たような刺激臭のデカン酸は人工果実味などに使われています。

この様な単純な脂肪酸の混合物が性フェロモンの役割を果たしているというのは、非常に珍しいことといえます。一般にフェロモン類は特異性が高い必要もあり、多くはテルペン類と呼ばれる揮発性の複雑な構造を持ったものが知られています。

研究チームは、フェロモンのもともとの性質をさらに模倣するために他にどんな化学成分が重要か絞り込むとしています。

この研究結果を疑うわけではありませんが、このほかの成分の中に本当の性フェロモン物質が隠れているような気もします。


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