ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

唐辛子の辛み成分のはなし

2015-10-25 10:13:57 | 化学
今日は唐辛子の辛み成分のカプサイシンの話です。

カプサイシンはカプサイシノイドと呼ばれる一群の化合物の一種で、無色透明の結晶です。唐辛子の成分というと赤い色のイメージがありますが、実際の辛み成分には色はなく、唐辛子の他の成分の赤い色です。

化学的に言いますと、カプサイシンはバニルアミンという物質の、脂肪酸とのアミドという構造を持っていますので、バニロイドの仲間でもあります。バニラのあの甘い香りと、激しい辛み成分が同じような構造を持っているというのも面白いところです。カプサイシンは脂溶性の物質で、アルコールにはとけますが、水にはほとんど溶けないという性質を持っています。これは口の中の受容体活性化チャネルという部分に結合し、灼熱感を与えますが、実際には温度は上昇していません。

この作用は、はっかの成分であるメントールが逆に冷却感を感じるとのメカニズムは同じようなものです。カプサイシンは発汗作用がありますので、食べると体が熱くなり汗が出ますが、やはり実際の体温は上がっていません。若干毒性もあり、急性毒性を示すLD50も出ていますが、人間の数値としては、唐辛子を一度に数Kgというオーダーですので、実際には問題はないと思われます。

作用としては食べたときの辛みというのが最も特徴的ですが、血液中から脳内に入り、内臓感覚神経に働き、副腎からアドレナリンの分泌を活発にして、前述の発汗作用を起こすとされています。そのため強心作用が認められるようです。またこの受容体に結合すると、痛みの伝達を抑えるため、痛みを感じにくくすることが知られており、この性質を利用して、帯状疱疹後の疼痛の改善や、糖尿病性神経障害の痛みの治療に使われたこともあるようです。しかしこのカプサイシン軟膏は、塗った直後に激しい刺激があることなどから、現在は使われていないようです。

しかしこのような知見から、カプサイシンの受容体に働く、新しい鎮痛剤がいくつか開発されています。この体が熱く感じ汗が多量に出ることから、脂肪を燃焼させダイエットに有効ということで、いろいろ出ているようですが、どうも人間に対しての科学的根拠は明らかではないようです。むしろ唐辛子のような刺激物を頻繁に食べる、韓国などではその副作用を問題とするような研究結果も出ているようです。

用途としては催涙スプレーに使用されたり、高齢者の嚥下作用の低下を改善する目的で、カプサイシントローチなども開発されているようです。このようにカプサイシンは、単に辛み成分としてだけではなく、天然有用物質の一つといえます。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿