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「血友病」の治療に新たな薬が続々と登場

2023-08-05 10:34:48 | 
私が小学校のころですので、もう半世紀以上前のことですが一学年下にM君という血友病の患者がいました。

当時は血友病という言葉さえ知りませんでしたが、体のいたるところに皮下出血があり、やや気持ち悪かった記憶があります。その後中学に行くとM君を見かけなくなり、消息は分かりませんでした。

血友病は出血がなかなか止まらなくなる主に遺伝性の病気で、患者はほぼ男性となっています。19世紀の英ビクトリア女王が保因者で、血縁があるスペインやロシアの王家の男児が発症したことでも知られています。

体内では血を止めるために「血液凝固因子」という12種類のタンパク質などが機能します。このうち「第8因子」が働かないのが血友病Aで、日本国内に患者は約5800人いるとされています。このほか第9因子が働かず、国内に約1300人の患者がいる血友病Bも知られています。

患者の生活の質に大きな影響を与えるのが、出血を繰り返すことによる関節障害です。関節内の出血が「滑膜炎」と呼ばれる関節の炎症に繋がります。繰り返すと軟骨や骨がボロボロになり、曲がる範囲が狭まったり強い痛みが伴ったりします。

血友病の治療は、転んだときなどに血液凝固因子を静脈注射で補う「出血時補充療法」が中心でした。特に重症患者の場合は、出血時の注射だけでは関節障害になってしまう場合もありました。そこで近年普段から定期的に注射をする「定期補充療法」が広がっています。

これによって多くの患者が、他の人と同じような生活を送れるようになっています。これは2007年に発表された論文で、関節障害のリスクが下がると科学的に示され、一つの契機になったようです。効果が長く続くものが開発されるなど、治療薬の改良も進みました。

この10年で投与回数が減らせる新しい治療薬の開発も進み、関節障害を予防するという考えに基づく定期補充療法が広く認識されているようです。

注射した凝固因子を異物として排除しようと、体内の免疫の仕組みが作るインヒビターが出てしまい、従来の注射が効きにくい人もいます。そんな患者にも効果が期待できるのが、中外製薬が開発した「ヘムライブラ」で、日本では2018年に承認されました。

第8因子の本来の働きは、別の二つの凝固因子(第9因子と第10因子)を繋げて活性化することですが、ヘムライブラはこの繋げる機能が発揮できるように設計されています。

投与方法は皮下注射で使いやすく、注射の頻度も少なくでき、インヒビターの有無にかかわらず、患者にとって画期的な治療薬になったようです。

近年さらに血友病患者に対する遺伝子治療薬が欧米で承認されるなど、血友病も完治できる日が近付いているのかもしれません。


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