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人間の寿命は「55歳」ヒトにだけ「老後」がある理由

2023-08-25 10:33:56 | 自然
死ぬ直前まで活発に過ごしてパタリと亡くなる、いわゆる「ピンピンコロリ」という死に方が理想といわれますが、実はこの世に存在するほとんどの生物の死はピンピンコロリとなっています。

たとえば産卵のために生まれた川に遡上するサケは、卵を生んだ直後から急速に老化が進み、数日で死に至ります。これはやや極端な例ですが、基本的に生殖可能期間が終わった個体はすぐに死んでしまいます。

それ以降長い「老後」を過ごすヒトは、生物学的には非常に珍しい生き物です。日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.54歳ですので、生殖可能期間(女性の閉経に相当)を終えると約30年もの老後が待ち受けています。

生物としての人の本来的な寿命はおそらく約55歳で、数十万年前にはそれくらいの年齢になる前に生殖を終えてサケと同じく老後を迎える前に死んだと考えられます。一般的に大型の哺乳動物の主な死因は心不全で、ケガと感染症が続きます。

しかしヒトの場合は栄養状態が改善され医療も進歩したことで、そういった原因で死ぬケースは激減しました。その代り急増したのがガンです。ガンは長年蓄積された遺伝子の変異によってDNAが壊れることで発生しますが、ガンで死ぬ野生動物はほとんどいません。

遺伝子に変異が蓄積されてガンになる前に、捕食されるか心不全やケガで死ぬからです。DNAが壊れるまで長生きしたために、ヒトはガンで苦しむようになってしまい、本来の寿命を超えて「長生きしすぎ」だと言えるかもしれません。

生殖が終わった個体が生きていても子孫は増えず、ガンに侵されるリスクが高まってしまうのに、ヒトの老後が長いのは長生きする個体が集団内にいた方が、ヒトという種の生存に有利だったからと考えられています。

生物学には「おばあちゃん仮説」と呼ばれる説があります。ヒトの赤ちゃんは生き物の中でも特に手がかかるため、産後の母親にとって子育ての負担は非常大きくなります。そこで活躍するのがまだ元気で育児の経験が豊富なおばあちゃんです。

祖母が子育てを手伝えば母親の手間は激減し、次の子供を産む余裕も出て来るでしょう。こうして自身が生殖を終えた後も、出産以外の方法で集団の繁栄に貢献できる個体が現れました。

ヒト生存に貢献したのは年長の女性だけではなく、集団が大きくなり社会が発展していくにつれて、男性を含む経験豊富な「シニア」の役割が大きくなっていきました。

子供を産んで集団の維持に直接貢献することはなくても、「調整役」として公共的な役割を果たすシニアが集団内にいた方が有利だったからこそ、ヒトには老後という期間ができたと考えられるようです。


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