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ワニやフクロウの涙のはなし

2020-09-10 10:26:51 | 自然
涙を流すのは人間だけかと思っていましたが、涙は泣くためだけにあるのではありません。

健全な視覚を保つため、爬虫類や鳥類を含めあらゆる脊椎動物が涙を分泌します。2020年に学術誌に発表された研究によると、動物の涙も人間の涙とあまり変わらない組成を持つようです。

他の動物の涙の組成や環境への適応を調べることで、人間の眼の病気やその治療法に役立つ可能性もあります。これまで涙の詳しい研究が行われたのは、イヌやウマ、ラクダ、サルなどの一部の哺乳類だけでした。

今回の研究では鳥類や爬虫類について初めて涙の詳しい分析を行いました。涙は涙腺やそれに似た腺から分泌され、目の表面に薄い膜を作ります。この膜は粘液層、水層、油層で構成されています。

粘液層は眼球表面を覆い、涙液を角膜表面に留める役割を持ちます。水層は重要なタンパク質やミネラルが含まれる体液からなり、油層は目が乾くのを防いでいます。

涙は泣くこと以外にも重要な役割があり、目の表面を潤して滑らかにしたり、ごみやほこりを取り除いて視力を保つだけでなく、目を感染から守ったり角膜に栄養を与えたりしています。今回の研究を率いたのは、ブラジル、バイーア連邦大学のグループです。

ワニの仲間であるクチヒロカイマンは、最大で2時間まばたきをせずに目を開きっぱなしにできますが、ヒトは10秒から12秒ごとにまばたきをします。まばたきをすることで、涙は目の表面にまんべんなく行きわたり、これによって水分が保たれ視力が安定します。

研究グループは、クチヒロカイマンをはじめ、ブラジル国内の動物保護施設や飼育業者で飼育されている鳥や爬虫類65体から涙を採取しました。10人の健康な人間のボランティアからも涙を集め、涙に含まれる電解質(ナトリウムや塩素など)やタンパク質などを測定しました。

測定の結果、鳥類、爬虫類、哺乳類では涙を分泌する仕組みが異なるにもかかわらず、ヒトを含むすべての種で涙の化学組成は類似していました。電解質の量も似ていますが、ヒト以外の動物ではやや濃度が高い傾向にありました。

鳥や爬虫類は空を飛んだり水中にいる時間が長いため、電解質の濃度を高くすることで炎症を防いでいるのかもしれません。

ヒト、カイマン、フクロウの涙に含まれるタンパク質は、その他の種よりも高く、カイマンとフクロウは目の露出が大きいため、タンパク質濃度が高い可能性があるようです。

このように爬虫類や鳥類が涙をどのように使っているかを知ることで、ドライアイなどの新しい治療法が生まれるかもしれません。ドライアイは涙の油分が不足する現象で、ネコやイヌ、ヒトによく見られ、時には失明につながることもあります。

現在は目からの情報量が圧倒的に多いため、目を守る研究の重要性は増しているようです。


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