ごっとさんのブログ

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清潔だとアレルギーになりやすい

2019-07-31 10:34:47 | 健康・医療
前に放映された「インハンド」というテレビドラマで、「衛生仮説」が扱われていたという記事を見ました。

私はこのドラマは見ていませんが、どのように衛生仮説が扱われていたのか見てみたい気がしています。

このブログでも「衛生仮説」的な、清潔にしすぎるとアレルギーになりやすいという事は何度か書いてきました。お腹に回虫を飼うことによって花粉症を治した教授のことを紹介した気がします。

「衛生仮説」は1989年にイギリスの疫学者が提唱した概念です。1958年のある週に出生したイギリスの小児17,414人を23年間観察していった結果を報告し、生まれたときの上の兄弟の数が多いほど花粉症や湿疹が少ないことを示しました。

その理由として、兄弟からの感染症が多くなる環境だとアレルギーが少ないのではないかと推測しました。これまで衛生仮説は、感染症が減ることでTh2(アレルギーに関与する細胞群)に傾きやすくなるという「Th1/Th2バランス説」で説明されていました。

これには若干矛盾もあるようですが、現在でもある程度通用する概念になっています。ある調査研究では、酪農家で育った子供は、ぜんそくを発症するリスクが減るという事も報告されています。

たとえばスウェーデンの前向きコホート試験に参加した4,777人に対する検討では、4歳時に家畜と農場で生活すると、アレルギー性鼻炎の発症するリスクがおよそ半分になっていました。

これは農村部で育てられた子供は、家畜の周辺に増える微生物にさらされたためではないかと考えられています。酪農業そのものだけではなく、その周辺の微生物が多い環境で、その細菌から放出されるエンドトキシンという毒素の量が、ぜんそくを予防するという事が明らかになっています。

この理由として、最近ユビキチン修飾酵素A20という特殊な酵素の報告がされています。少量のエンドトキシンをマウスの気道上皮に「慢性的に」作用させると、ユビキチン修飾酵素A20が出てきて、アレルギー体質になることをブロックし、喘息発症を抑制したという結果になっています。

このようにエンドトキシン量が高いという事は、細菌も多い環境という事で、感染症の危険も増えてしまいます。この衛生仮説がそのまま日常診療に応用しにくいのはこの辺りにあるようです。

ですから掃除をしない不衛生な環境と、衛生仮説で言う不衛生な環境とは異なるわけです。衛生仮説はとても興味深い仮説で、様々な研究結果があるのですが、実生活に応用するのはなかなか難しいといえそうです。

それでも徹底した除菌や抗菌で清潔にする必要もないような気もします。


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