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膝軟骨を他人の細胞で修復

2017-12-14 10:44:59 | 健康・医療
大阪大学と中外製薬などは、膝の軟骨を損傷した患者に、他人の細胞から作った組織を移植して治療する臨床試験を始めたと発表しました。

大阪大学病院など全国の9施設の患者70人で安全性や効果を確かめ、数年以内の実用化を目指すとしています。

膝の軟骨は、激しい運動や加齢に伴って損傷してもほとんど再生しないため、治療は非常に難しいものでした。今回の臨床試験では、別の患者の手術で出た不要の膝の組織から、軟骨に変化する「間葉系幹細胞」を採取して培養しました。

これは通常の平面細胞培養と浮遊培養法を組み合わせることで、間葉系幹細胞が合成する細胞外マトリックスのみを利用して、分化能に富み、しかも組織接着性の高い三次元人工組織としたものです。

このようにして厚さ3ミリの組織を作り、患者の軟骨に貼り付けます。この組織は動物由来材料や化学合成品を一切用いておらず、バイオマテリアルを使用した従来の組織工学技術に比べて、移植後の安全性、費用対効果の面で強い競争力を保持しています。

これまでの前臨床研究などの結果により、軟骨再生の有効な治療法となることが期待されているようです。特に一人からとった細胞が1,000人以上の再生医療に役立つ、他家移植用細胞製剤を使用するという点で、わが国最初の再生医療治療法といえるようです。

今回、治療目的の他家細胞の保存を目的に、大阪大学未来医療センターに幹細胞バンクが設立されました。これまで関節軟骨は、血行に乏しく傷つくと治らない組織と考えられており、有効な治療法がありませんでした。

世界中で幹細胞や組織工学的手法を用いた治療法の開発がすすめられていますが、修復組織の質、移植先の母床との生物学的融合を同時に向上させることが困難であるという課題がありました。前述のように今回の人工組織は、容易に軟骨細胞に変化し、強い組織接着性を有しています。

これは間葉系幹細胞のアクチン細胞骨格の収縮能を利用して、組織の自己収縮を誘導する技術を用いています。この技術の利用により、これまで困難であった低侵襲で短時間(関節内視鏡手術)の移植による軟骨再生治療が可能となりました。

従来の自家移植に比べ、患者の受ける侵襲治療は1回で済み、体の負担が軽く、製造コスト削減ができるメリットを持つ治療法として期待されています。これまで患者自身の細胞で5例の移植を行い、いずれも半年〜1年後に軟骨再生を確認しています。

整形外科の専門科は、備蓄する他人の細胞を使えば必要なときに移植できる利点はあるが、感染症などのリスクに注意すべきだとしています。


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