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「セミ」共生菌で栄養補給

2018-06-29 10:48:11 | 自然
日本に生育するアブラゼミなどに、漢方薬の原料となるキノコの一種「冬虫夏草」に近い菌類が共生し、栄養を補っているという研究成果を、産業技術総合研究所などの研究チームが発表しました。

「冬虫夏草」そのものに寄生されたセミは死んでしまいますが、セミに進化の過程で、一部が共生するように進化したと考えられます。

この冬虫夏草というのは、かなり昔の話ですが、不老不死の妙薬としてこれをめぐる争いの漫画を読んだことがあり、興味を持っていたことを思い出します。結論としては昆虫やその幼虫に寄生するキノコで、漢方薬や薬膳料理にも使われ、特に不老不死という程のものではないようです。

現在では健康食品(サプリメント)としても売られている、ありふれたものになってしまいましたが、当時は非常に珍しい高価なものになっていたようです。

研究チームが国内に生息するセミ24種を調べたところ、アブラゼミやミンミンゼミ、ヒグラシなど15種の体内に共生する菌類を検出しました。この共生菌の遺伝子配列を調べたところ「冬虫夏草」に近いことが分かりました。

キノコの類は担子菌と分類され菌類(カビ)の仲間の一種です。ツクツクホウシから取り出した共生菌は培養にも成功し、必須アミノ酸やビタミン類を合成する能力を確認できました。一方ニイニイゼミなど9種からはこういった共生菌は検出されませんでした。

アメリカのセミを対象とした研究結果では、セミには体内に微生物を保有する器官があり、必須アミノ酸やビタミン類を合成する2種の細菌が共生し、地中にいる幼虫期に必要な栄養素を補っているとみられています。

今回の研究で、寄生関係から共生関係への進化が繰り返し起こったことが実証され、寄生微生物と共生微生物の間の予期できない深い関係が明らかとなりました。つまり冬虫夏草はセミの幼虫や蛹に一方的に寄生し、寄生されたセミは死んでしまうわけですが、この菌類が進化することによって、セミとの共生関係が出来上がったようです。

セミの成虫は樹木から、セミの幼虫は根から植物の導管液を吸って生きていますが、導管液にはわずかなアミノ酸や糖を含む程度で栄養的には極めて乏しいものです。またセミの細胞内の共生菌はゲノムが著しく縮小し、セミの体外では生存できません。

こういった菌類はいくつかの必須アミノ酸とビタミンの合成に特化しており、こういった共生菌の助けによりセミは導管液という栄養的に貧弱な食物でも生存できているようです。

冬虫夏草からはいくつかの生理活性物質が見つかっており、こういった共生菌も面白い化合物の探索源となるかもしれません。


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