ガンの中に住む細菌がガン細胞を助けている可能性

このブログでもガンを攻撃する細菌の話を書きましたが、ガン細胞中にも多くの微生物が存在することが明らかになってきました。

私は若干疑っているのですが、ピロリ菌が胃ガンを引き起こすことが話題となっています。ある種の口内細菌は、多くの消化器ガンで頻繁に見られ、ガンの経過の悪さや治療の失敗と関連付けられています。

また研究により腸内細菌のバランスの乱れが消化器ガンを誘発する可能性も示唆されています。ガンと細菌については、10年以上前DNAを解読する技術が進歩し普及し始めてきたころから、人間の腫瘍組織内に細菌が存在する可能性が示唆され始めました。

2022年に発表された研究により、口腔ガンと大腸ガンの中に生息している細菌は、人間の免疫反応を抑制しガン細胞がより速やかに広がるのを助けることによって、ガンの進行を直接促していることが示されました。

また同じく2022年に発表された研究では、5－フルオロウラシルなどの一部の抗ガン剤が有効なのは、腫瘍が大きくなるのを助けている細菌も殺すためである可能性が示されています。

腫瘍の中に細菌などの微生物がいる可能性を示した研究は過去にもありましたが、懐疑的な見方をする人が多かったようです。

また腸内の「善玉」細菌が多かったり多様性に富んでいたりするメラノーマ患者ほど、免疫療法に良く反応することを発見したという論文が2017年に発表されています。

テキサス大学の研究では、細菌と腫瘍が共存し協力してガンの進行を促しており、細菌がどこにいるかが重要な要素になることを示しています。今回の研究は特定のガンと闘って消滅させるには、腫瘍とそこに生息する微生物との関係を理解することが不可欠であることを示しているようです。

もし細菌がガンの発生や進行に関わっているのなら、その細菌を標的にすればガンの治療や予防に役立ちそうですが、細菌がどのようにして腫瘍の中に集まるのかは分かっていません。そこで細菌の関与が明らかになっている口腔ガンと大腸ガンに焦点を当てました。

11人の患者から腫瘍のサンプルを採取し、16SリボゾームDNA解析という手法を用いて腫瘍サンプルの中のすべての細菌を特定し特徴を明らかにしました。その結果細菌は腫瘍の中で均一に分布していないことが分かりました。

ここでも細菌感染がガンの進行を直接促し、腫瘍が免疫系から逃れるのを助けているという観察結果が得られています。今回の研究で微生物を殺すことができる1846の生理活性物質のうち15％が抗ガン剤になる可能性を持つことを示しています。

こういったガン細胞と微生物との関連が明らかになれば、抗菌性を持った新しい抗ガン剤の開発も期待できるのかもしれません。