ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

iPS細胞から心臓組織の評価法を開発

2020-12-09 10:24:53 | 健康・医療
最近はコロナ関連のニュースばかりで、iPS細胞などあまり出てきませんでしたが、久しぶりのiPS細胞の話題です。

理化学研究所生命機能科学研究センターのグループが、人工多能性幹細胞(iPS細胞)の技術を使い、ヒトの心臓組織の機能を高感度に評価するデバイスを開発したと発表しました。

この文章は「サイエンスポータル」に記載された記事をもとに書いています。
これはあくまでも評価であり、実際に移植などを行ったわけではありません。iPS細胞由来の心筋細胞を使い、再生医療や創薬を目指す研究が進んでいます。

ただ心臓組織は血管細胞や繊維芽細胞などさまざまな細胞が立体的に組み合わさっており、心筋細胞だけでは本物の心臓を再現したことにはなりません。研究グループは2017年にヒトの心臓の多様な細胞をiPS細胞から作り、シート状の人工心臓組織にまとめることに成功しました。

これを移植や創薬に利用するには、血液を送り出すポンプとしての人工心臓の機能を確かめる仕組みが必要となります。私はiPS細胞のような万能幹細胞を、どうやって目的とする細胞に変えるのかに興味を持っていました。

これを分化誘導といいますが、自然界ではサイトカインと呼ばれるタンパク質がこの役割を担っていることが分かっています。

この場合例えば万能細胞から心筋細胞に誘導するには、ひとつのサイトカインがあるわけではなく、何種類かのサイトカインの混合比率を変えることで、心臓になったり肝臓になるというメカニズムとされています。

このサイトカインというタンパク質はごく微量のため、人口的に誘導するのは非常に難しいとされていました。ただし万能細胞は、周りにある種の細胞例えば皮膚細胞があるとその細胞に分化するという性質も知られていました。

現在iPS細胞をどうやって分化誘導するかの詳細は分かりませんが、簡単に誘導する手法が確立したのかもしれません。

さて研究グループは、ヒトiPS細胞から作り培養して150〜200マイクロの厚みを持たせたシート状の心臓組織と、蛍光粒子が流れる血管のような流路を組み合わせ、極小の装置「ハートオンチップ型マイクロデバイス」を開発しました。

心臓組織が拍動し収縮するとボタンが押し下げられて流路に影響を与え、これに応じて蛍光粒子が動く仕組みです。このデバイスを使って拍動の速さや強さ、細胞内のカルシウムイオン濃度、薬を投与した時の反応などを調べ実際の心臓の機能を十分に再現していることを確認しました。

デバイスはiPS細胞由来の人工心臓組織の機能評価に利用できる可能性があります。また抗ガン剤などは心臓への副作用に個人差があるため、患者本人の細胞から作ったiPS細胞でこのデバイスを作れば、実際の投与前に薬剤の毒性を調べることができます。

患者の細胞から作ったiPS細胞でデバイスを作り、様々な化合物で反応を調べれば、難病のための創薬にも役立つとしています。

iPS細胞の作製からかなり年月が経ちますが、基礎研究は進んでいるものの実用化というのはまだまだ先のようです。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿