
五木寛之の『新・風に吹かれて』を読んでいる。若い頃は『青春の門』や
『朱鷺の墓』などの小説、またエッセイ類も読んでいたが、最近はちょっと
ご無沙汰していた。『新・風に吹かれて』は、2004年から2006年にかけて
書かれたエッセイで、老境を迎えた作者の身辺雑記…でしょうか。
一読快笑 再読苦笑 可笑しくてやがてジンと胸に来る 五木エッセイの
真骨頂…と帯紙に書かれているが、まさしくその通り

人が生きていくということは、ゴミの山を作ることだ…と始まる“簡素な生き
方に憧れて”や、中学当時の受験勉強を題材にした“努力が苦手な言い訳”
などは、思わず「そうそう」と共感し嬉しくなるテーマだった。
ずぅっと以前に、A市の文芸講演会で五木氏の話を聞いたことがあったが、
強く印象に残っているのは、講演の内容より素敵なオー・デ・コロンの香りを
漂わせるお洒落な作家だったってこと…

図書館に五木寛之文学全集を寄贈してくれたこと。かれこれ35年前の話だ。
『風に吹かれて』というタイトルは、文壇デビュー当時に発表したエッセイの
タイトルであり、ボブ・ディランの代表曲でもある。いま『風に吹かれて』という
生き方のすすめと題した『新・風に吹かれて』。
座右の書と言うほど大仰な意味では無いが、常に見近かに置いておきたい
一冊と思う。