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久しぶりに映画『ベニスに死す』を観た。1971年にR・ヴィスコンティ監督が
製作した作品で、原作はドイツの文豪トーマス・マン。
老境に差し掛かった高名な音楽家が、静養のため訪れたベニスで美少年に
魅せられ、蔓延していたコレラに罹患して命を落とすストーリーだが、如何にも
頽廃美の具現者ヴィスコンティ監督らしい、妖しい美しさに彩られている。
以前テレビ放映された際に一度観ていたが、いま再び観てみると、受ける
印象がかなり違うことに気づく。美少年タッジオに魅惑される主人公の心境が
痛い程よく分かる。それって…もしかして…やっぱり…
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とにかくタッジオが美しい。永遠の…、究極の…、比類なき…、美の化身。
ドイツの名高い音楽家にストーカー紛いの行動を取らせる、神秘的な魅力を
放つ美少年。T・マンの原作によれば、タッジオは、“金髪で、整った蒼白い顔、
端正な鼻、優しい口元、彼の顔は高貴な時代のギリシャ彫刻を想起させた。
その優美さは魅力に溢れ、自然にも造形美術にも存在しない完璧さ。
上体の姿勢、白い靴の運び、それは優美そのもので、軽やかに自信に満ち、
優しさに溢れていた。子供らしいはにかみ、エロス像のような愛くるしい首、
思索的な眉、こめかみと耳には直角に垂れた巻き毛が覆っていた”…と。
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ヴィスコンティ監督は、タッジオを探してヨーロッパ数カ国を旅し、遂に
スウェーデンでイメージ通りの少年を見つけた。
当時15歳だった、ビョルン・アンドレセン。原作では12歳だったタッジオを
15歳に変更してでも、監督はこのビョルン少年に固執したのだろう。
確かに完璧な美少年
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ドキュメンタリーフィルムが残っているらしい。
何故かヴィスコンティ監督が、音楽家アッシェンバッハに重なって見える。
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この15歳の少年とは思えない妖艶な頽廃美は、ヴィスコンティが作り上げた
マジック…
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原作から引用すると、“少年タッジオはアッシェンバッハの前に現れ、彼を死を
もって完結する人生の昇華へと導く”とあり、“生の象徴であり、頽廃的な美の
象徴でもある”と、記されている。
製作後にヴィスコンティ監督は、この映画を「真実と想像の平衡を保ちつつ、
リアルでありながら同時に幻想的に描いた、美しい悲劇の物語」と述懐したそう。
愛する少年の姿を遠く眼で追いながら息絶えた主人公の、『究極の美』への甘く
激しく切ない妄執
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全編に流れるマーラー作曲のアダージェットと共に、海辺でのラストシーンが、
深く印象に残る『ベニスに死す」。映画好きkimitsukuの、お勧め作品です。