内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

東洋大学・ストラスブール大学協定三十周年記念シンポジウム

2015-09-18 17:18:54 | 雑感

 16日からの三日間、1985年に締結されたストラスブール大学と東洋大学との間の協定三十周年を記念するシンポジウムが開催された。先ほど三日目の最終日のプログラムを無事終えて、東洋大学からいらっしゃった先生方にご挨拶して、帰宅したところである。
 東洋大学は、日本の大学の中で、ストラスブール大学が最初に協定を結んだ大学ということもあり、ストラスブール大学側もかなりこの記念シンポジウムを重視していた。それもあって、初日の開会セレモニーには、在ストラスブール総領事やストラスブール都市圏の代表者などが特に招待され、その他にも大学内外の関係者数十人が出席していた。
 その開会セレモニーで、東洋大学長の日本語での挨拶を日本学科長が仏語に、ストラスブール大学長の仏語での挨拶を私が日本語に、それぞれ逐次訳した。前者は学科長が完全翻訳を作ってあって読み上げるかたちだったので、それは見事な翻訳だった。私の方は、原稿が送られてきたのが前々日で、しかも前日にまた訂正があったりして、授業の合間に完全原稿を作る時間がなく、またこれは正直に言わなくてはいけないが、なくても大丈夫だろうと、仏語の元原稿の脇に言い間違えてはいけない名称などを書き込んだだけで会場に臨んだ。しかし、これが甘かった。何度かその場で言い直したり、言い淀んだりして、お世辞にもできの良い翻訳ではなかった。後でみんな優しく労をねぎらってくださったが、ひどく反省した。
 ただ、学長が最後に引用した二つの文章 ― 一つはストラスブール大学建学の祖とされる Jean Sturm の1538年の開学の辞の中の一節、もう一つはアナール学派の創設者の一人マルク・ブロックが1944年、ドイツ軍に銃殺刑に処される数カ月前に書き残した言葉 ― だけは、予め訳し、別紙にプリントアウトしておいたので、ここだけは少なくともきっちりと読み上げた。その二つの言葉をここに記念として再録しておく。

或る特定の教えについての知識を、その他の諸々の教えを無視して、完全な仕方で身に付けた人は実際誰もいない。[…] 或る一つの教えを完全に知る者は、その他の諸々の教えを無視することはないと宣言することであろう。

フランスの伝統は、長い教育の歴史の中に溶けこんでおり、それは私たちにとって大切なものだ。私たちはその伝統の中のもっとも貴重な財産を保持していきたいと思う。それは、人間への愛、精神の自発性と自由の尊重、私たちの精神の風土そのものである芸術と思想の諸形態の継続である。しかし、その伝統に忠実であるためには、その伝統自身が私たちに未来に向かってそれを延ばし広げていくことを求めていることを私たちは知っている。