擦弦楽器は松脂が音を作り出します。
試しに新品の松脂の塗っていない弓で、弾いてみてください。かすかに鳴るか鳴らないかです。
要するに馬毛に付いた松脂の微粒子が弦を振動させているのです。
松脂の種類によって音の出も変わり音色も変わりますが、毛の種類あるいは質によって松脂の付き方もかわります。
ヴァイオリンの人たちが良く言うのに、毛を張りかえにだしたら、今までの松脂を使っているのに音色と弾き心地が変わった、仕方がないので松脂を変えてみた、などという話もあります。
これ普通の松脂ですね。左はかなり赤いです、これは光舜堂でほぉさんが作っていた松脂です。
赤いのは、かなりの長時間加熱して、これ以上はもう内部に含まれている揮発成分が蒸発しないというところまで加熱したものです。
何故わかるのかというと、松脂を最初に熱しているとドンドン煙が出てきます、それは揮発成分が揮発しているのです。それを続けると、ほとんど煙は出なくなります。
右のは、単に、100度近くまで熱して固形だった松脂が溶けてそれが冷えて再度固まったものです。これにはかなり揮発成分もまだ含まれます。そのおかげで粒子が均一になりにくいです。
これも松脂です。ヴァイオリンなどの松脂の中にはこのように黒いものもあります。カーボンが混ざっているのです。
カーボンは松脂の代わりにも使えます、現に松脂アレルギーの方の為にカーボン製の松脂なども販売されています。
この黒い松脂の左の物は、昨年弦堂さんが中国から京胡の方達が使うという、30年物の天然に熟成された松脂を持ってこられて、それをほぉさんが、不純物を取り除き成形したものです。
10ケくらいきり作れなかったのですが、使ってみると、繊細な音が出るしなおかつ音も強い。その上松脂の付きがとても速い。
どうやら松の木の下にたまってそれが何年もたって自然に揮発成分が失われ熟成されたもののようです。中国でも相当貴重品のようです。
私も、その中の一つをこのところ作る弓に最初に施すのに使ってきています。最近作っている福音弓はこの松脂を使ってきています。
私の様に日々弓を作って試していますと、やはり良い状態の鳴りにしてお客様に届けたいし、作業的にも最初に新しい弓に松脂を施すというのはかなり気を使います。
それにはやはりきめの細かい、安定した音の出る松脂を使いたいです。
ところが、この松脂この一年近く毎日のように使っていまして残ったのがこの一個。
次に何時この松脂が入ってくるのかは分かりません。
そこで例のごとく、作ってみることにしました。
ところがどんなに時間をかけて熱をかけてもこのように黒くはなりません。単にね熱処理の問題ではなく何らかの科学的な変化が起きているのでしょうね。そこで、森林の中でどのように松脂樹脂が変化するのか考えまして、作ってみました。
粉末にしてある液体の中に付け込み、固まりますのでそれを更に粉砕してそれから洗い出します。それを乾かして粉末にして、それから加熱します。
出来上がったものを、天然ものと光に透かして比べてみてみました。
これは左の天然熟成されたものを光で透かして見た状態。
これは今回私が作った松脂を光で透かして見た状態。
かなり近づいたかなと思います。しかし自然の力は偉大です!
使ってみると、ほぼ変わらないものが出来たと考えています。難点と言えば、これはとても割れやすいです。でも、すぐ付きますが熱処理で
ただこれ、作るの大変!です。販売するかどうかは、弦堂さんと話してみてからですね。
またまた、こんなことやり始めて!売れないもの作ってどうするの、西野さん!
とほぉさんに怒られそうです。
二胡工房光舜堂&ほぉ!