楽器を育てる、その２

二胡に使う木は、油分の多い、ローズウッド（紫檀）系や黒檀（柿科の木）が殆どです。

中には花梨のように、バラ科の物もありますが、それにしても、硬く油分の多いという特徴を持っています。

マホガニー（紅木　コウボク）も同じことが言えます。

普通の広葉樹、楓や桜、桑などは、５００年前後でかなり硬化が進みます。

木が硬化すると、だんだん動かなくなり、粘りが無くなりボロボロになってきます。

特に風雨にさらされていると、その表面は、１００年ぐらいでもうボロボロになります。

京都や鎌倉などのお寺の柱の表面が、ボロボロになっているのをご覧になった方も多いと思います。

鎌倉の建築は出来上がってから、７００年ぐらいです。

処が、二胡に使う紫檀や黒檀などの油分の多い木というのは、もう少し持ちそうです。

油分の多い分、乾燥が非常に悪い為、普通の広葉樹より、３、４倍も長持ちするといわれていますが、どうなのでしょう。

しかし二胡の中には、清の時代や明の時代の家具を解体して、作られた物も多いと聞きます。

かの国のことで、これは明の時代の家具を解体した木を使っていますといわれても、、、、

ただ私が見た中ではそれほど古いものは殆どありませんでした。

、これは４００年前の明の時代の木を削った紫檀二胡と言われた物は,明らかにもう少し新しい物の様な気がします。

理由は、木は伐採して加工されると、空気に触れて、ドンドン酸化します。

最初は鮮やかな、紅色だったものでも、しまいには、黒ずんできます。

時代がたてばたつほど、その酸化は内部に浸透していきますから、

古い時代の物は、家具を解体して削ったとしても、鮮やかな色は出てきません。

５ミリくらい削ったとしても、内部は黒ずんだ茶色という感じなのですが、

私の見た、明の時代の木を使ったと言われる二胡は、かなり酸化状態の進んでいない鮮やかなローズ色が少しは感じられるくらいの物でしたから、それほど古いものとは思えませんでした。

と話が飛びました。

いずれにせよ、二胡に作る木は、うまくすると、１０００年ぐらいその良い状態が続くのかもしれません。

ましてや楽器に仕立てて、弾きこんできた物は普通の楓等より良い状態が長く続きそうです。

それから、これはバイオリンなども同じことが言えるのですが、

接着剤の耐久度の問題と、木の乾燥、そして狂いというのが有ります。

接着剤は、バイオリンも二胡も同じく膠を使います。

膠は、紀元前から木の接着や布皮などに広く使われてきています。

当然正倉院に残っている弦楽器なども膠を使っていることだと思います。

ということは、膠の耐久力というのは、１３００年は有るという事が出来ます。

しかし木はそのまま大人しくしているわけではありません、いくら１００年、２００年と乾かした木でも、自然に乾かした物は、必ず狂います。

ましてや、現代のエアコンの生活の中ですから、必ず、狂ってきますし、痩せてきます。

ここで話は飛びますが、

今の二胡を販売している人で、かなり楽器に詳しい人でも、この木が狂うということに気がついていないか、

あるいは大した問題ではないと思って、販売している人がほとんどだという事です。

あるいは壊れたら、また購入してもらった方が良いと思っているかです。

現実、中国では壊れたら、買い換えるというのが普通で、

皮を張り替えるなどというのは修理項目に入っていませんし、

修理その物も殆ど受けていないようです。

鳴るからいいじゃん。という感じの様です。

ですから保証期間という考え方もありませんし、

あったとしても、１年ぐらいでしかないというのは、家電ではあるまいし、、、、という感じも否めません。

いずれにせよ、木も狂いにくく、膠もキッチリ付いているとすると、

二胡の木の部分は楽器としては、もしかすると１０００年は使えるのかもしれません。

この項続く