二胡工房 光舜堂

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二胡の二胡たる所以、調整が必要な事。

2023-05-17 11:41:43 | 二胡の救急箱に書かなかったこと
二胡が他の擦弦楽器と違う事の一つに、楽器が全分解できるということがあると思います。
全分解できる楽器は、沖縄の三線、日本の胡弓、中国の三絃、そして日本の三味線などがあります。
みな、振動板として皮を張る楽器ですね、たぶん棹が皮を張る時に邪魔になるのでしょうね。
ラバナストロンなどは、皮を張ったものと板を張ったものとあるようです。
そして韓国のヘグムも板を張ってあるにもかかわらず、全分解できる楽器の一つです。(ベトナムやタイにある二弦の擦弦楽器も皆分解できるようです)
分解できるということで、一つ問題が起こります。
あるいは、その分解できることがその楽器の音に独特の響きを持たせているともいえるかと思います。
三線や三味線のような撥弦楽器には、それほど大きくは問題が出ないとも聞きました。
三味線の棹など3つに分解できます。
組み立ててみても、びくとも動かないほどの精巧な木工技術に支えられています。
組み立てられるという事は、三味線の様な技術がない限りどこかしらに隙間ができるということですね。
二胡と同じように二弦の擦弦楽器のヘグムは分解すると、木軸と棹と胴になりますが、木軸は動かすのにとても苦労するほど密着しています。
隙間があるとすれば、胴と棹の刺さる穴だけですが、そこには工夫していてかなりしっかりと棹が支えられるようにできています。
二重になっているのですね。
このおかげで少しはしっかりします。
二胡の場合は棹と木軸と胴と台、この4つが比較的簡単に外れます。
この簡単に外れるおかげで、あちこちに隙間ができます。
楽器は全体が鳴ることで、より大きく振動し良い響きになるはずなのです。
弾き方にもよります。
素のあちこちにできる隙間が雑音の原因にもなります。
特に、木軸と台。
棹は最初のころは問題がなくとも、木の乾燥で次第に緩くなってきます。
直すのはこれが一番難しいです。
木軸はそもそも構造として抜けやすい角度に設定されています。ヘグムやヴァイオリンのようにもっと平行に近い止まりやすい角度に何故しなかったのかの家が分かりませんが、綺麗にできている場合はかなり回しやすく微調整器もいらないほどになるのですが。
そして台、これはもう問題の山というくらいにガタツキが多いですね。
ネジ一本で止まっていますから、ネジが緩むともうガタつきます。
かといってネジをいくらいしめてもガタつくものも沢山、本当にたくさんあります。
これらの動いてしまうところをしっかりと固定しそして動かすものはより動かしやすくしていくのが、まずは基本的な調整になります。
それと、蛇皮ですね。
これも経年変化で、使い方で、環境で緩んでいきます。
この緩んでいくことに合わせていかないと楽器としての健全な鳴りというのは得られません。
基本的には駒の高さの問題です。
駒の高さというのは、ヴァイオリン系の楽器でも相当に音の変化をもたらします。
ヴァイオリン系の楽器にしても全く表板が変化しないわけではありません。
湿度にによっては厚みも増えます、経年変化では駒の立っているところがへこんできたりもします。
あまりにも凹んだときは,木の細胞そのものがつぶれてきてしまい、反発力も無くなるのだと思いますが、、この辺は様々またヴァイオリンつくりの友人たちとも知識を交換する必要があると思います。
蛇皮は完全にへこんでいきます。
へこみ方も駒のところだけがへこむ、(同じ駒を長い間つけっぱなしでいた時)経年変化で弾きこみでへこむというより全体に緩む、これは良い状態でしょう。もう一つは皮のどこの部分を押しても指の痕通りその部分だけが沈んでしまう。これは基本的な蛇皮の加工そのものが違うのです。
いずれにせよ、皮がへこんできた時には駒の形状を大きなものに取り換えて
本当に鳴らなくなってきて皮を張り替えるまで間に合わせるしかないでしょうね。
後は弦の寿命の確認でしょう。
今まで出ていた高音部の音が出なくなったり、押し弓と引き弓で音程が変わるなどし始めたら弦の寿命だと考えても良いかと思います。
その弦の振動を駒や皮により良い圧力で伝える役目をするのが、千斤です。
千斤は音程を決めるだけでなく、駒の圧力を決める役に立っているのです。
それは駒の高さとも関係しますし、この辺は皮のゆるみなども考えあわせないといけませんし。ましてや演奏上それぞれの弾きやすい高さもあるでしょうから、実際に楽器委を見てみないと分からないです。
そしてフェルト、これも雑音吸収しなくなるくらいに硬くなったら交換ですね。化学製品の布地やスポンジなどは半年くらいでしょうか。
そして弓、特に弓毛の傷み。
これらを総合してみていくのが二胡音調整となります。
今週末の神戸の「あーるふぅ」さんでの調整会にいらっしゃる人がもしこの文章を読んでいたら、西野の楽器のと調整というのはこのようなことをやるのだと考えてください。
工房光舜堂西野和宏&ほぉ・ネオ

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