以前「空の高さ」という本に書きました。(商店建築社刊)
様々な素材を扱ったデザインの本です。
その中に、木は力だという分を載せました。
これ7年ほど前に製材して乾かしておリグナムバイダ(緑檀)とフェルナンブーコです。
上のリグナムバイダは木目に沿って曲がってしまっています。
この木を300㎏のアンビル(金床)の下においても真っ直ぐには戻りません。
更に強靭なのは下のフェルナンブーコでしょうね。
このように隙間を開けておいても全くと言って曲がりません。
流石にヴァイオリンの弓を作る材料になるわけです。
以前リグナムバイダを手に入れて嬉しくて早速に二胡に作ったことがあるのです。
ところが、数カ月で胴はバラバラ。
そこで考えたのが、ヤマト二胡にして、リグナムバイダは細く使ったらその力は削がれるのではないかと。
以前、是非リグナムバイダで二胡を作って欲しいという方がおられ、そのご要望に応えるべく
作り上げたのがこれ!
実はその時に、2台は予備に作ったのです。
なにしろこれだけ強い木ですから、いくら細く作ったとはいえどうなるか分からないとお客様にも納得して頂いて、それでも怖いので予備を用意したのです。
そして昨年はまた別のお客様に頼まれて、娘さんに良い楽器はないかということで、CDMのリグナムバイダとシャム柿の胴を作りました。
可愛いだけでなく音色も良いのが、このシマリスちゃんです。
流石に強い木だけあって、強い鳴りとシャム柿の良い響きとを併せ持った楽器になりました。
リグナムバイダ、材料は持っているとはいえ、良い乾燥をしないととてもではないですが、楽器にも家具にも作れないのです。
二胡を作るのは、単に材料を切って削って組みあげるだけではないのです。
良く皆さんネットなどで調べて、木の値段など知って、このくらいの材料があればできるのに、なんでそんなに西野の作るのは高いの??と思う方もいるようです。
ネットなどで販売されているのは、あくまでも端材なのです。そしてどのくらいの乾燥度か分かりません。
勿論丸々一枚、あるいは丸太一本というのがあれば問題ないです。
その中から棹に合ったもの胴にあったものを選んで、それが生きるように乾燥させていくというのが目に見えない部分での仕事なのです。
寧ろこの製材の段階から仕事が始まります。
棹に合わないものを使えばいずれは曲がりますし、胴に合わないものであればよい音色にはなりません。
そこまでこだわらずにも作れるのでしょうが、折角日本で二胡を作り始めたのですから、量産ではなく一台一台作っていきたいのです。
ヴァイオリンなども同じでしょう、今大量に中国では年間20万台ぐらい作られていると言われます。
それらの需要もあるでしょうが、やはり良い楽器、一生付き合っていけるのはハンドメイドで、材料も選別して作られているものです。
量産と違うところは、実はこの材料の選別なのです。
皆さんが料理をするときと同じですね、同じ料理でも材料の良し悪しが決定的に味に係わってくるのは皆さんもご存知だと思います。
その材料の下ごしらえは、どんな料理を作り上げるかで変わってくると思います。それと同じなのです。
楽器はそのように作られるべきだと私は考えています。
工房光舜堂西野和宏&ほぉ・ネオ