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持続可能的計画経済論[統合新版](連載第54回)

2025-01-30 | 持続可能的計画経済論[統合新版]

第3部 持続可能的計画経済下の生産・労働・消費

 

第11章 計画経済と企業形態

(4)企業の内部構造②
 経営と労働が分離する社会的所有型の生産事業機構に対して、自主管理型の生産協同組合は、労働者自身が経営にも当たる構造となる。そのため、生産協同組合では全組合員で構成する組合員総会が最高経営機関となる。
 こうした自主管理が可能な企業規模はどのくらいかということが一つの問題となるが、最大で組合員数1000人未満が限度かと考えられる。あるいはより限定的に500人といった水準まで下げることも考えられるが、これは政策的な判断に委ねられる。
 組合員数500人を超える生産協同組合の場合、全員参加による総会を常に開催することが現実的でないとすれば、生産事業機構の労働者代表委員会に準じた組合員代表役会を設置することが認められてよいだろう。また500人未満の場合でも、委任状による代理参加が認められてよい。
 いずれにせよ、生産協同組合では組合員が総会を通じて直接に経営に当たるが、零細企業よりは大きな規模を持つ以上、経営責任機関としての理事会は必要である。理事は組合員総会で選出され、総会の監督を受ける。監査制度については、生産協同組合でも業務監査と環境監査が区別され、それぞれに対応して業務監査役と環境監査役が常置されなければならない。
 以上に対して、組合員数が1000人を超える大企業となると、もはや生産協同組合の形式では律し切れないため、社会的所有企業に準じた生産企業法人を認める必要がある。従って、生産協同組合が組合員の増加により、生産企業法人に転換されることもあり得ることになる。
 この大企業形態は、生産事業機構に準じて経営と労働が分離され、経営役会と労働者代表役会が常置される。その余の内部構造も生産事業機構に準じたものとする。
 他方で、組合員20人以下のような零細企業(要件となる員数は政策的判断)に対しては、生産協同組合の形式では融通が利かないこともあり得ることから、こうした場合はより自由な協同関係を構築できるように、協同労働団(グループ)のような制度がふさわしいだろう。
 この場合、監査役を最低一人は置くこと以外(業務監査役と環境監査役を区別する必要はない)、企業の内部構成については任意とし、経営はメンバー全員の合議によるか、数人の幹事の合議によるか選択できるようにする。

 

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持続可能的計画経済論[統合新版](連載第53回)

2025-01-29 | 持続可能的計画経済論[統合新版]

第3部 持続可能的計画経済下の生産・労働・消費

 

第11章 計画経済と企業形態

(3)企業の内部構造①
 前回まで、共産主義的な企業形態として、大きく社会的所有型公企業としての生産事業機構と自主管理型私企業としての生産協同組合の種別を見た。ここからは、これら諸企業の内部構造に立ち入って考察する。
 まず計画経済の主体ともなる社会的所有型の生産事業機構は企業規模に関しては最大であり、それは資本主義経済における一つの「業界」の大手企業すべてを統合するに匹敵するような規模を擁する。 
 こうした大規模企業体を運営していくうえでは、労働者が自ら経営に当たる自主管理型の経営と労働の合一は現実的に無理であるので、株式会社と同様、経営と労働は分離せざるを得ない。
 そこで、経営責任機関として株式会社の取締役会に相当する経営委員会が置かれるが、企業規模が大きいことに加え、民主的な企業統治を保証するためにも、最高経営責任者のような独任制の経営トップは置かず、経営委員長を中心とした合議制型とする。
 ここで経営と労働の分離といっても、資本主義的な労使の指揮命令関係ではなく、経営と労働の共同決定制を確立する必要がある。こうした共同決定制は進歩的な資本主義諸国ではかねて株式会社形態でも導入されてきたが、労使の上下関係からこうした共同決定は事実上形骸化しているのが実情である。
 これに対し、共産主義的な公企業では、共同決定制を実質的なものとするため、労働者の代表から成る労働者代表委員会を常設し、特に労働条件や福利厚生に関わる分野では、経営委員会と労働者代表委員会の共同決議を議案の有効成立要件とする。その他の議案についても、経営委員会は労働者代表委員会に事前開示し、労働条件に関わる限り共同決定事項とするよう要求する機会が保障されなければならない。
 ところで、およそ共産主義的企業には株式会社の総監督機関である株主総会に相当するようなオーナー機関は存在しない。しかし、社会的所有型の生産事業機構の場合、究極のオーナーは民衆であるから、民衆代表機関が究極のオーナー機関となるが、これは多分に政治的・象徴的な意義にとどまり、実際上は職員総会が総監督機関となる。従って、上記経営委員会及び労働者代表委員会の委員はいずれも職員総会で選出され、両機関の活動は職員総会で監督される。
 ただし、職員総会といっても、生産事業機構は大規模であるため、全員参加型の総会開催は技術的に無理があり、総会代議人による代議制的な制度となるだろう。その代議人の選出法は抽選または投票によるが、それぞれの企業ごとに選択できるようにする。
 さて、最後に株式会社の監査役会に相当する監査機関として、業務監査委員会が置かれるが、これは主として法令順守の観点からの監査機関である。
 加えて、持続可能的計画経済下では企業活動に対する環境的持続可能性の観点からの内部監査制度の確立も求められるから、業務監査委員会とは別に、環境監査委員会が常置される。両監査委員会の委員も、職員総会で選出される。

 

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持続可能的計画経済論[統合新版](連載第52回)

2025-01-27 | 持続可能的計画経済論[統合新版]

第3部 持続可能的計画経済下の生産・労働・消費

 

第11章 計画経済と企業形態

(2)自主管理企業
 持続可能的計画経済の対象である環境高負荷産業分野以外の分野は、自由経済に委ねられる。もっとも、自由経済といっても、貨幣経済を前提としないため、貨幣交換経済ではなく、経済計画の規律を受けないという意味での「自由」である。
 こうした計画経済の対象外となる自由経済分野の生産活動は、私企業によって担われる。この点で、その純粋形態においては私企業の存在を容認しないソ連式の社会主義体制とは異なることが留意されなければならない。
 私企業であるということは、設立が自由であること、その活動が経済計画に拘束されず、関係法令を順守する限り自由であることを意味する。ただ、私企業といっても、もちろん株式会社ではなく、共産主義社会に特有の私企業である。
 共産主義社会特有とは、第一に株式会社のように利益配当を目的とする営利企業ではなく、非営利企業であることを意味する。第二に、株式会社のように経営と労働が分離され、経営者が労働者を指揮命令して生産活動に従事させるのではなく、生産活動に従事する労働者自身が自主的に経営に当たる労働と経営が一致した自主管理企業である。
 このような企業形態は会社というよりも組合であり、こうした共産主義的私企業の法律的な名称を「生産協同組合」としておく。名称の点ではマルクスが想定していた生産協同組合と重なるが、マルクスの生産協同組合が計画経済の運営主体と位置づけられていたのに対し、ここでの生産協同組合は計画経済の外で活動する自由な私企業である点において相違する。 
 こうして共産主義的生産様式の下での生産活動の基軸は、公企業として計画経済の主体となる生産事業機構―設立は認可制―と、自由経済分野を担う私企業としての生産協同組合―設立は登記制―の二本立てとなる。企業規模で言えば、前者は大企業、後者は中小企業である。
 ただし、私企業でありながら、その規模が大きいために自主管理を文字どおりに実行することが困難であり、社会的所有企業に準じた内部構造を持つ中間的な企業形態や、反対に組合よりも小さな零細企業に特化した協同労働形態も存在し得る。こうした修正型企業形態の法律的な名称と内部構造については改めて後述する。

 

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持続可能的計画経済論[統合新版](連載第51回)

2025-01-25 | 持続可能的計画経済論[統合新版]

第3部 持続可能的計画経済下の生産・労働・消費

 

第11章 計画経済と企業形態

(1)社会的所有企業
 近現代の主要な生産活動は、労働力と物財を集約した企業を拠点に組織的・継続的に行われる。計画経済にあっても、この点は変わらないが、その企業形態は生産活動の様式(生産様式)に応じて定まってくる。
 資本主義的生産様式の下では、民間から広く投資資金を調達しやすい株式会社形態が代表的な企業形態となる。他方、ソ連式の行政主導型計画経済による社会主義的生産様式の下では、国家が直接投資し、運営する国有企業形態が代表的な企業形態となる。
 これに対して、生産企業が主体的に策定した共同経済計画に基づく共産主義的生産様式では、株式会社でも国営企業でもない公企業が代表的な企業形態となる。
 この点に関して、マルクスは共産主義社会を「合理的な共同計画に従って意識的に行動する、自由かつ平等な生産者たちの諸協同組合からなる一社会」と定義づけている。
 この定義によると、マルクスが構想する共産主義社会の生産活動は生産協同組合という企業形態によって行われるであろう。実際、マルクスの計画経済は、こうした協同組合企業の共同計画に基づくことが想定されていた。
 しかし、この定義と構想はいささか理想主義的に過ぎる感がある。現代の基幹的産業分野では大規模かつ集約的な生産活動が要請されるし、環境的持続可能性を組み込んだ計画経済を実行するためにも、計画経済が適用される環境高負荷産業分野については協同組合よりも大規模な企業体を活用することは不可欠と考えられるからである。
 仮にマルクスの構想を生かしつつ、基幹的産業分野の生産活動に照応する生産企業体を設計するとすれば生産協同組合合同のような形態が想定できるが、このような企業合同は統合的なガバナンスの点で問題を生じる恐れがあり、一つのモデル論にとどまるだろう。
 そこで、より現実的な企業形態としての共産主義的公企業は、株式会社のように投資家株主が所有者となるのでも、国有企業のように国家が所有者となるのでもなく、社会的な共有財として社会に帰属するという点で、社会的所有企業と規定することができる。その法律的な名称を、ここでは「生産事業機構」と命名する。
 こうした生産事業機構が生産する分野は、計画経済が適用される環境高負荷分野に限られる。言い換えれば、計画経済の運営主体は公企業である生産事業機構である。

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持続可能的計画経済論[統合新版]・総目次

2025-01-24 | 持続可能的計画経済論[統合新版]

本連載第1部及び第2部の連載は終了致しました。下記目次各「ページ」(リンク)より全記事をご覧いただけます。第3部以降は、引き続き連載します。


統合新版序文 ページ1

第1部 持続可能的計画経済の諸原理

第1章 計画経済とは何か

(1)計画経済と市場経済 ページ2
(2)計画経済と交換経済 ページ3
(3)マルクスの計画経済論 ページ4

第2章 ソ連式計画経済批判

(1)曖昧な始まり ページ5
(2)国家計画経済 ページ6
(3)本質的欠陥 ページ7
(4)政策的欠陥 ページ8

第3章 環境と経済の関係性

(1)環境規準と経済計画 ページ9
(2)科学と予測 ページ10
(3)環境倫理の役割 ページ11
(4)古典派環境経済学の限界 ページ12
(5)環境計画経済モデル ページ13
(6)環境と経済の弁証法 ページ14
(7)非貨幣経済の経済理論 ページ15

第4章 計画化の基準原理

(1)総説 ページ16
(2)環境バランス①:「緩和」vs「制御」 ページ17
(3)環境バランス②:数理モデル ページ18
(4)物財バランス①:需給調整 ページ19
(5)物財バランス②:地産地消 ページ20
(6)物財バランス③:数理モデル ページ21
(7)自由生産領域の規律原理 ページ22

第2部 持続可能的経済計画の過程

第5章 計画経済の世界化

(1)非官僚制的計画 ページ23
(2)グローバル計画経済 ページ24
(3)貿易から経済協調へ ページ25
(4)世界経済計画機関 ページ26
(5)汎域圏経済協調機関 ページ27

第6章 計画経済と政治制度

(1)経済体制と政治制度 ページ28
(2)政経二院制 ページ29
(3)世界共同体の役割 ページ30
(4)世界共同体の構成単位 ページ31

第7章 経済計画とエネルギー供給

(1)エネルギー源の民際管理 ページ32
(2)エネルギー供給計画 ページ33
(3)エネルギー事業体 ページ34
(4)エネルギー消費の計画管理 ページ35

第8章 計画組織論

(1)総説 ページ36
(2)世界計画経済の関連組織 ページ37
(3)領域圏計画経済の関連組織 ページ38
(4)地方計画経済の関連組織 ページ39

第9章 計画化の時間的・空間的枠組み

(1)総説 ページ40
(2)計画過程の全体像 ページ41
(3)計画の全般スケジューリング ページ42
(4)領域圏経済計画のスケジューリング ページ43
(5)領域圏経済計画の地理的適用範囲 ページ44

第10章 経済計画の細目

(1)生態学的持続可能性ノルマ ページ45
(2)産業分類と生産目標 ページ46
(3)世界経済計画の構成及び細目 ページ47
(4)領域圏経済計画の構成及び細目 ページ48
(5)広域圏経済計画の構成及び細目 ページ49
(6)製薬計画の特殊な構成及び細目 ページ50

第3部 持続可能的計画経済下の生産・労働・消費

第11章 計画経済と企業形態

(1)社会的所有企業 ページ51
(2)自主管理企業 ページ52
(3)企業の内部構造① ページ53
(4)企業の内部構造② ページ54
(5)企業の内部構造③ ページ55

第12章 計画経済と企業経営

(1)公益的経営判断 ページ56
(2)民主的企業統治 ページ57
(3)自治的労務管理 ページ58

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持続可能的計画経済論[統合新版](連載第50回)

2025-01-23 | 持続可能的計画経済論[統合新版]

第2部 持続可能的経済計画の過程

 

第10章 経済計画の細目

(6)製薬計画の特殊な構成及び細目
 薬剤は広義の食品に含まれるが、その特殊な用途から独立の品目として、広域圏の消費計画には含まず、固有の製薬計画に基づき、製造・分配される。薬剤は多くの場合、全世界で普遍的な共通需要を持つため、製薬計画の起点は世界共同体計画である。
 その際、普遍的需要がある基本薬剤と、少数の難病患者向けの特殊薬剤、さらに特定地域に固有の風土病に対応する風土薬剤が区別される。
 基本薬剤と特殊薬剤は世界共同体の薬剤規制機関により有効性と安全性が確証されることを条件に、世界共同体製薬計画に基づき、世界共同体傘下の世界製薬事業機構が製造し、全世界に公平に供給される。
 それに対し、風土薬剤は、その需要がある汎域圏(例えば、汎アフリカ‐南大西洋圏)の供給計画に基づき、世界共同体製薬計画に登載され、製造・供給される。
 また、感染症に対応するワクチンについては、パンデミックやエンデミック等の流行事象が発生したつど、その流行形態に応じた世界共同体の緊急ワクチン計画に基づき、製造・供給される。
 これら世界共同体の認証にかかる薬剤に対し、各領域圏の薬剤規制機関が独自に認証した薬剤については、各領域圏の製薬計画に基づいて、各領域圏の製薬事業機構が製造・供給される。
 その限りで、製薬計画は世界共同体計画と領域圏計画とに二元化される。ただし、領域圏計画に基づいて製造・供給されていた薬剤の有効性と安全性が世界共同体でも認証され、新たに世界共同体製薬計画上の品目に登載される可能性は常にある。*その逆に、領域圏計画に基づいて製造・供給されていた薬剤の有効性と安全性が世界共同体で否定、禁止されるケースや、稀であろうが、世界共同体計画に基づいて製造・供給されていた薬剤の有効性と安全性が特定領域圏では否定、禁止されるケースもあり得る。
 この領域圏計画としての製薬計画の対象は全薬剤ではなく、医師の処方薬に限定されるとともに、その中でも特に基幹的な薬剤(上掲区分の基本薬剤に相当)に絞られる。その余の薬剤は公的承認審査に基づく製薬企業体による自由生産と供給に委ねられる。

 

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選挙制独裁政治への対抗

2025-01-22 | 時評
世界で最も長い時間をかける人選プロセスを通じて行われてきたアメリカ大統領選挙で「独裁者」が誕生したことは、選挙を民主主義の唯一最高の手段と理解する常識にとっては、ショックである。トランプ自身が自らの政治を「常識の革命」と呼ぶように、まさに「選挙=民主主義」という常識も転覆されたと言えるだろう。
 
今後、深刻に懸念されることは、トランプ式の「常識革命」が世界を触発し、同様の反動的政策パッケージを引っ提げた選挙制独裁者が従来、民主主義の天使をもって任じてきた欧州諸国や、欧米圏外では相対的に民主的と評価されてきた諸国でも続々出現し、地球全域がドミノ倒しのように選挙制独裁に覆われていく事態である。
 
従来から、選挙は利害団体を介した金権政治の手段と化しており、中でもアメリカ大統領選挙は巨額の資金が投入される金権選挙の典型でもあり、民が主人公となる民主主義の本旨からは技術的な面で既に逸れていたのであるが、今回の逸れ方は、民主主義そのものが内部から瓦解するという本質的な現象である点で深刻である。
 
それでも、選挙が政治学の教科書どおりに正しく機能する限りは、間接民主主義という制約を伴いつつも、一応民主主義として機能するはずだという点に期待をかける向きもいまだ少なくないのであろうが、インターネット選挙はそうした期待を虚しいものにしている。
 
インターネット、中でも検証抜きのSNSを活用した近年の選挙は虚偽、事実の歪曲や誇張による大衆扇動を通じて権力を獲得するための有力なプロセスであり、独裁者にとって最高の武器である。ファクトチェックも追いつかず、十分な効果はない。選挙過程での大衆扇動は今後、ますますはびこるだろう。
 
真の民主主義を志向する限り、選挙への未練をきっぱり棄て、選挙によらない新しい民主主義への道を本格的かつ早急に模索すべき時である。━選挙制独裁への実践的な対抗法として、(怠慢や諦念、無関心からでなく)ある種の市民的不服従の意思表示としてあえて投票しない集団的な「不投票」運動を各国で組織することも、今後は一考以上に値するだろう。
 
その点、くじ引き=抽選は誰からも異議の出ない最高かつ最も簡明な選出方法である。実際、民主主義の祖である古代ギリシャのアテナイでは要職者をくじ引きで選出していた。とはいえ、現代社会にこうした古代民主制をそのまま導入することには無理がある。
 
複雑化した現代の政治行政運営に従事するには、政策立案と立法に関する一定以上の素養・知見と人格的・倫理的適性が必須であるので、それらの資格要件の有無をチェックする試験と免許制の導入は必要である。そうした免許を持つ市民の中からくじ引きで抽選された代議員が民主的な討議を通じて政策立案・立法に当たることが、選挙制に代わる新たな民主主義の骨子となるだろう。
 
ちなみに、大統領、知事、市長村長のように単独で行政を執行する職務は一人に権限が集中しがちで、たとえこれらの公職位を如上の免許‐抽選制で選出したとしても、独裁の危険がつきまとうので、こうした独任型行政長官の制度はそもそも民主主義にそぐなわないと考えられる。代議員で構成された会議体形式の代議機関が最も民主的な意思決定システムであろう。
 
こうした考えも、ある意味においては―「革命」という名の「復古」であるトランプ的な方向とは真逆的な―「常識の革命」と言えるかもしれない。しかし、これは民主主義がこれまでの民主主義の「常識」であった選挙を通じて腐食・崩壊していくという逆説的な流れを断ち切るための、前進的・進歩的な―その意味では真の含意での―「常識革命」である。
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持続可能的計画経済論[統合新版](連載第49回)

2025-01-21 | 持続可能的計画経済論[統合新版]

第2部 持続可能的経済計画の過程

 

第10章 経済計画の細目

(5)広域圏経済計画の構成及び細目
 広域圏経済計画は、領域圏経済計画と連動しながら、主として消費に関わる経済計画である。その意味では、世界経済計画を頂点とする経済計画全体系の中で最も末端の需要に関わる特殊な経済計画である。そのような消費計画の中心を成すのは、日常消費財の供給計画である。
 その点、持続可能的経済計画の消費計画においては、既定された廃棄物の量及び質から逆算的に計測された想定上の需要に対応させて、環境的な持続可能性に適合する量及び質の消費財が計画的に供給されることになる。
 そうした廃棄物の量的及び質的な制御は全世界的な規準をベースに各領域圏において策定する必要があるため、廃棄物規制規準は、世界経済計画及び領域圏経済計画の中で示され、その規準をベースに広域圏経済計画が策定される。その限りでは、広域圏経済計画は持続可能的経済計画全体系上の三次的な計画を構成する部分である。
 その細目としては、基軸となる基本的な日常食糧品を中心に、現代的生活に欠かせない電化製品、調度品、衛生用品といった基幹的消費財の項目ごとに供給計画が提示される。食糧品の中でも、農水産物は領域圏経済計画中の計画Bと連動しているため、領域圏経済計画によって制約されることになる。
 また、電化製品や調度品の中でも大型で粗大廃棄物となりやすい製品については、リユースによる貸与制によって供給される。貸与品と譲渡品の比率は、廃棄物規準によって算出される。
 さらに、広域圏経済計画には、主として災害非常時を想定した余剰生産に基づく備蓄消費財の供給計画も盛り込まれる。備蓄消費財の供給には廃棄物の量的規定規準が適用されない反面で(質的規準は適用)、平常時にはその放出が禁じられることは当然である。

 

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持続可能的計画経済論[統合新版](連載第48回)

2025-01-20 | 持続可能的計画経済論[統合新版]

第2部 持続可能的経済計画の過程

 

第10章 経済計画の細目

(4)領域圏経済計画の構成及び細目
 領域圏経済計画は世界経済計画を大枠として策定される各領域圏単位での二次的な経済計画であり、持続可能的計画経済全体における中核を成す計画である。
 古典的な経済計画で言えば、各国ごとの中央経済計画に相当するものであるが、世界経済計画に枠づけされている点、策定単位の領域圏は排他的な主権国家ではない点で、古典的な計画経済とは大きく異なることが改めて留意される。
 後者に関連して、領域圏の中でも、複数の領域圏が協働して経済計画を策定することを主要な目的として緩やかに結合する合同領域圏にあっては、経済計画も合同の構成領域圏ごとではなく、合同領域圏単位で策定することになる。
 こうした合同経済計画をも含めた領域圏経済計画の細目は世界経済計画と相似形を成すので、基本的には世界経済計画のそれに沿ったものとなり、エネルギー計画に始まって、生産計画の細目が提示される(計画A)。その細目が地球環境の主要素である大気・土壌・水資源・生物資源のいずれに負荷のかかる業種かにより分類される点も同様である。
 もっとも、エネルギー計画に関しては、自領域圏内で産出できないエネルギー源は世界天然資源機関を通して包括供給を受けることになること、同様に、自領域圏内で生産できない製品に関しては、他領域圏からの輸入供給を受けることになる点で、領域圏経済計画の細目は各領域圏ごとに多様化される。
 また、領域圏経済計画の細目として、農林水産分野の経済計画(計画B)が別枠で策定されることも重要な点である。世界経済計画は地域的な生態系や食習慣の相違により偏差の大きい農林水産分野の計画を含まないため、この分野に関しては、領域圏経済計画が一次的な経済計画となり、農業・林業・漁業の各分野ごとの細目が提示される。
 さらに、経済計画の全体概要の根拠となる環境上の指針を別表として明示することは、世界経済計画の場合と同様である。その指針は基本的に世界経済計画に示された指針の縮約版であるが、世界経済計画上の指針より厳しい指針を設定する場合は詳細に記述する必要がある。
 なお、領域圏経済計画の三本目の柱となる製薬計画(計画C)は薬剤という製品の性質上特殊な構造を持つため、本章の最終節で改めて記述する。

 

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持続可能的計画経済論[統合新版](連載第47回)

2025-01-19 | 持続可能的計画経済論[統合新版]

第2部 持続可能的経済計画の過程

 

第10章 経済計画の細目

(3)世界経済計画の構成及び細目
 持続可能的計画経済の中軸を成す世界経済3か年計画は、世界全体のグローバルな計画として、世界共同体を構成する各領域圏における経済計画の規準となるものである。そのため、それは各領域圏における計画の雛型でもある。
 ただし、世界経済計画は、生産目標というよりも、各領域圏における生産活動の上限を示すキャップのような意義を持つから、その記述は大綱的なものとなる点で、各領域圏経済計画の序論に当たるような計画と考えてよい。
 その構成として、まず冒頭で3か年計画の全体像を示す総論が提示される。これは計画の各細目への導入部であると同時に、3か年計画の要約ともなる部分である。
 続いて、エネルギー計画が提示される。これは、持続可能的計画経済が地球環境の持続可能性を担保するために実施されることを反映して、環境破壊の主因でもあるエネルギーの持続可能な計画供給を実現するための土台となる部分である。世界経済計画においては主要部分と言ってよい項目である。
 その中心点は再生可能エネルギーの供給計画であるが、留意すべきは化石燃料の供給も排除されないことである。化石燃料は供給をおよそ排除するのではなく、再生可能エネルギーの補充として、計画的かつ縮減的に供給されていくことになる。その点で、資本主義経済におけるエネルギー構成とは逆転的である。
 続いて、生産計画の細目である。ここでは、業種別の産業分類によるのではなく、前回も見たように、地球環境の主要素のいずれに負荷のかかる業種かによって分類されることが、持続可能的計画経済の要諦である。
 すなわち、大気負荷産業・土壌負荷産業・水資源負荷産業・生物資源負荷産業といった分類基準となる。複数要素にまたがる包括的な負荷産業は、重複的に分類される。
 この生産計画の細目は世界計画経済の各論に当たる部分である。その策定に当たっては、世界共同体における五つの汎域圏ごとの地域的な計画量が考慮されるが、汎域圏同士の分捕り合戦とならないよう、生産計画を汎域圏ごとに分割することはしない。
 なお、世界経済計画の別表として、世界共同体の直轄自治圏(及び信託代行統治域圏)の経済計画が付属する。直轄自治圏(及び信託代行統治域域)は一般の領域圏とは異なり、世界共同体が直轄するため、その経済計画も世界共同体が直接に策定するのである。その内容は、領域圏経済計画に準ずる。
 また、各次世界経済計画にはその全体概要の根拠となる環境上の指針を直接に盛り込むわけではないが、別表として明示することで、根拠を明確にするとともに、事後的な評価及び中途での修正にも対応できるようにする。

 

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持続可能的計画経済論[統合新版](連載第46回)

2025-01-18 | 持続可能的計画経済論[統合新版]

第2部 持続可能的経済計画の過程

 

第10章 経済計画の細目

(2)産業分類と生産目標
 経済計画の策定に当たっては、産業分類とその項目ごとの計画期間における生産目標を数値的に明示することが求められることから、計画の細分化された枠組みとなる産業分類が重要である。
 産業分類と言えば、英国の経済学者コリン・クラークによる第一次から第三次までの産業分類が著名であるが、これは農林水産業を軸とする第一次産業から、工業を軸とする第二次産業を経て、無形的なサービスを軸とする第三次産業への経済発展を説明する道具概念として提唱された。
 クラーク産業分類自体はごく粗い分類であり、計画経済の枠組みとはならないが、持続可能的計画経済にあっては、第一次産業に係る経済計画(生産計画A)は、それ以外の経済計画とは区別されて策定されることになる。
 ちなみに、日本ではクラーク産業分類をベースに、より業種を細分類した標準産業分類が政府により公式に採用されている。これは三次の粗いクラーク分類を廃して、大分類・中分類・小分類・細分類の四段階で下位区分しており、生産活動に関わる全業種を総覧するには有効である。
 しかし、標準産業分類も経済統計上の分類であり、その中には文化関連事業や医療福祉関連事業その他持続可能的経済計画では計画外の自由生産となる業種も含んでいるため、計画経済における枠組みとして直接に使用することはできないが、自由生産領域を含めた経済統計分析においては有効性を持つ。
 これらの産業分類は、まさに分類することそれ自体を目的とした分類であるが、計画経済における産業分類は、より動的に計画生産の具体的目標を明示するうえでの基準となる分類枠組みである。
 その点、ワシリー・レオンチェフによる産業連関表は元来、マルクスが資本の再生産及び流通が円滑に進行していく過程を分析するために考案した再生産表式にヒントを得て新たに考案したものであるが、その使用目的は、現実の生産・流通活動におけるインプット/アウトプットの分析である。
 このようなインプット/アウトプットの予測計算は、各計画期間における生産目標を立てるうえで不可欠のプロセスであるから、産業連関表は持続可能的計画経済においても、大いに活用されることになる。
 もっとも、マルクス再生産表式に由来する生産財製造部門Ⅰと消費財製造部門Ⅱという大分類は、ソ連の経済計画において大きな二部門を分ける際に応用され、部門Ⅰを偏重する工業化が強力に推進されたのであった。
 しかし、われわれの持続可能的計画経済では、生産財部門Ⅰと消費財部門Ⅱのいずれに重点を置くかという発想ではなく、一般消費財に係る経済計画は全土的な一般経済計画からは区別され、地方ごとの消費計画として策定されるのであった。
 また、生産活動全般の動力源となるエネルギーに関しては、エネルギー計画として別途前提的な計画が策定されることになる。
 一般経済計画の策定に際しての細分枠組みとなる産業分類としては、特に環境的な持続可能性に最大の比重を置くことを反映して、大気・土壌・水資源・生物資源のいずれに主たる負荷を加える業種かという観点から分類することが考えられる。
 そうすると、単純に生産物の種類に応じた機械工業、金属工業、化学工業・・・といった分類ではなく、各業種の生産活動に対する環境科学的な詳細分析をもとに、大気負荷産業、土壌負荷産業、水資源負荷産業、生物資源負荷産業といった環境負荷の対象を基準とする大分類のもとに整理されることになるだろう。
 その点、目下最大の焦点となる温室効果ガスを生産過程で、またはその生産物が多く排出する業種は大気負荷産業に分類されることになり、これに分類される業種が最も多いであろう。また、重複分類される業種も存在し得る。

 

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持続可能的計画経済論[統合新版](連載第45回)

2025-01-17 | 持続可能的計画経済論[統合新版]

第2部 持続可能的経済計画の過程

 

第10章 経済計画の細目

(1)生態学的持続可能性ノルマ
 持続可能的計画経済の出発点は、地球全域での経済計画の策定である。その際、世界経済計画の前提部を成すのは、生態学的持続可能性目標である。この点で、旧ソ連型の経済開発を最優先とする開発計画経済においては、経済計画の前提部に生産ノルマとなる目標値が提示されていたこととは対照的である。
 こうした生態学的持続可能性目標は、単なる環境保護政策の目標ではなく、具体的な各次経済計画の前提的な規準を成すという意味で、各次経済計画全体を規定する規範的な性質を持ったノルマである。従って、生態学的持続可能性は規範的な数値として各次経済計画の冒頭で明示される。
 その具体的な項目構成としては、さしあたり以下のようなものが考えられるが、環境科学の研究の進展に応じて、さらに新たな項目が追加されたり、各項目ごとの指標が細分化または精密化されるといった改良的変更が加わる可能性を排除しない。


①気候変動:温室効果ガス排出指標
②オゾン層破壊:オゾン層破壊物質消費指数
③富栄養化:水圏及び土壌への窒素・リン排出量
④酸性化:酸性化物質排出指標
⑤有害物質状態:重金属・有機化合物排出量
⑥都市域大気状態:都市域の硫黄酸化物・窒素酸化物・揮発性有機化合物排出量
⑦水資源:水資源利用強度(採取量/利用可能資源量)
⑧水産資源:漁獲量
⑨森林資源:森林資源利用強度(実伐採量/生産能力)
⑩土壌劣化(浸食/砂漠化):農業への潜在的及び現実的な土地の利用量
⑪各種廃棄物:一般廃棄物、産業廃棄物、有害廃棄物、核廃棄物の各排出量
⑫生物多様性:多様性保護区面積、絶滅危惧種等の生息回復目標個体数

 
 実際の世界経済計画では、これらの各項目指標の3か年ごとの規範的目標数値が提示されることになる。従って、例えば、気候変動項目に関しても、現行の国際的な目標数値のように、遠大な長期目標として示されるのでなく、向こう3か年ごとの温室効果ガス排出規制目標が規範的に示されることになる。

 

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持続可能的計画経済論[統合新版](連載第44回)

2025-01-15 | 持続可能的計画経済論[統合新版]

第2部 持続可能的経済計画の過程

 

第9章 計画化の時間的・空間的枠組み

(5)領域圏経済計画の地理的適用範囲
 一連の連関したスケジューリングに従いつつ、世界共同体の世界経済計画の大枠に基づき、各領域圏ベースで策定される経済計画(領域圏経済計画)は、基本的に領域圏の施政権が及ぶ地理的範囲に適用されることになる。
 その点に関して、領域圏の政治的な構制に応じて、単立領域圏と複数領域圏の合同から成る合同領域圏とでは、領域圏経済計画の地理的適用範囲が異なることが留意される。
 単立領域圏の場合、領域圏経済計画は当該領域圏の施政権が及ぶ地理的範囲と一致する。ただし、領域圏の構制として、連邦的な連合型と、より集権的な統合型の二類型があり、連合型の場合、連合領域圏を構成する準領域圏(州)ごとに独自の経済計画を策定するかどうかは、各連合領域圏の自主的な判断に委ねられる。
 準領域圏が独自の経済計画を策定する場合には、領域圏の計画経済は地方分権化されることになる。このような地理的な分権化の問題点として、各準領域圏ごとの利益配分競争が生じかねないことがある。これは、かつて連邦国家だった旧ソ連の計画経済システムにおいて地方分権化改革が実施された際にも生じた問題である。
 利益配分競争が激化すれば、汚職等の構造要因となるほか、領域圏経済計画の策定スケジュールにも遅れが生じる恐れがある。こうした弊害を回避するには、連合型領域圏でも、経済計画に関しては集権を貫くことが望ましいが、たとえ準領域圏が独自の経済計画を策定するとしても、それは連合全体の経済計画の枠内でのことであるから、準領域圏経済計画は領域圏経済計画の一部を組成することに変わりはない。
 以上に対し、合同領域圏は単独で経済計画を策定するには産業的な基盤が不十分な中小の領域圏が合同し、各領域圏の経済的な特性を生かしつつ、分業の形で合同共通の経済計画を策定することが、その制度的な主旨の一つである。従って、この場合の共通経済計画は、合同を構成する各領域圏のすべてに共通的に適用されることになる。
 ちなみに、より広い大陸的なまとまりから成る汎域圏は経済計画の策定主体とはならず、単に域内での経済協力その他の相互協力の地理的な構成体である。従って、汎域圏内の経済協力自体は域内協定であって経済計画ではないが、領域圏経済計画を補充するものとして、言わば各領域圏経済計画の外延部分を成す。

 

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持続可能的計画経済論[統合新版](連載第43回)

2025-01-14 | 持続可能的計画経済論[統合新版]

第2部 持続可能的経済計画の過程

 

第9章 計画化の時間的・空間的枠組み

(4)領域圏経済計画のスケジューリング
 領域圏における経済計画は計画経済の最前線を成すものであるが、それはかつての旧ソ連における「一国社会主義」における一国単位での経済計画とは異なり、グローバルな世界経済計画を大枠とする支分的な経済計画であるから、その策定スケジュールについても、世界経済計画が優先する。
 そのため、計画期間のサイクルはともに3か年であるが、世界経済3か年計画と領域圏経済3か年計画とでは、3か年の起算点がずれ、領域圏経済計画が後行することになる。
 その場合、領域圏経済計画の策定プロセスは、世界経済3か年計画が世界共同体総会で可決・成立し、発効した時点から始まる。そこから、およそ3乃至4か月程度の期間をかけて、領域圏経済計画を策定し、各領域圏民衆会議で可決・成立のうえ、第1計画年度が開始される。
 そうした一連のスケジュールの具体例として、例えば世界経済計画の発効をわかりやすく1月に設定すると、領域圏経済計画の策定プロセスは同月から始まり、同年4月乃至5月までには可決・成立のうえ、領域圏経済計画の第1計画年度がスタートするといったスケジュールとなる。
 ところで、領域圏経済計画は、一般生産計画(計画A)と農林水産計画(計画B)、製薬計画(計画C)、さらには地方ごとの消費計画をも包含する形で重層的に編成されるわけであるが、全計画の基盤として、エネルギー計画がある。
 エネルギー計画を前提に計画Aが策定され、さらにその余の計画Bや計画C、消費計画は計画Aを基準にして編成される。そのため、実務的な策定作業においては、まずエネルギー計画及び計画Aが優先し、それらに照応して、その余の計画の策定作業が後続する関係にある。
 さらに、地方ごとに編成される消費計画は、領域圏全体に係る計画A及びB、とりわけ消費計画の中で中核を占める食料品の供給との関わりで計画Bと不可分の関係にある。そのため、消費計画は計画Bとほぼ並行的に策定されていくことになろう。
 なお、連邦型の連合領域圏において、各準領域圏(州)が独自に経済計画を策定する構制を採用した場合は、各準領域圏の経済計画が領域圏(連合)の経済計画のサイクル内に納まらなければならないから、領域圏経済計画と各準領域圏経済計画の策定作業が同時並行で行われる複雑な仕組みとならざるを得ない。

 

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持続可能的計画経済論[統合新版](連載第42回)

2025-01-13 | 持続可能的計画経済論[統合新版]

第2部 持続可能的経済計画の過程

 

第9章 計画化の時間的・空間的枠組み

(3)計画の全般スケジューリング
 およそ計画経済においては、策定スケジュールの設定とその着実な履行が健全な経済運営の鍵となる。その点、そうした計画のスケジューリングにおける時間的な枠組みとなるのが、計画のサイクル期間である。持続可能的計画経済にあっては、3か年であった。
 そして、原初の経済計画となる3か年計画に始まり、後続3か年計画の各サイクルが三年ごとに積み重ねられていくわけであるが、これらの各サイクルは第一次経済計画に始まり、第二次、第三次・・・・というように、序数をもって累積されていく。
 各次3か年の内部は、第1計画年度・第2計画年度・第3計画年度と区分けされるが、これらは形式的な区分けにすぎず、各計画年度ごとに計画の実施内容が異なるというわけではなく、全体として3年を1サイクルとする計画が組まれるのみである。
 この3か年という1サイクルは、各次計画の実施期間であるので、各次計画の策定は当然、3か年の起点である計画第1年度の開始月より前に着手されていなければならない。その点、世界共同体‐領域圏‐領域圏内広域地方という三層の空間にまたがる持続可能的経済計画においては、これら三層それぞれのスケジューリングが有機的な連関をもって組まれなければ機能しない。
 その際、すべての計画の出発点となる世界経済3か年計画の策定は、その多岐にわたる計量的な作業の負担を考えると、今次計画が終了する1年前(前次計画が存在しない最初の第一次3か年計画の場合も、それが開始する1年前)には開始する必要がある。
 そして、それをベースとする領域圏経済計画の策定過程のスケジュール的余裕を考慮すれば、このプロセスは遅くとも6か月以内に世界共同体総会の議決をもって完了させる必要がある。
 ここで、世界経済3か年計画の開始月をわかりやすく1月に設定すると、今次計画第3計画年度が開始する1月に次期計画の策定を開始し、同年度の7月には、次期3か年世界経済計画が完成していることになる。
 ここで完成した世界経済計画をベースとして、各領域圏における経済計画の策定プロセスが開始されていく。このプロセスは領域圏経済計画(基幹生産計画)と領域内の広域地方経済計画(消費計画)の二層から成るが、これを今次計画第3計画年度の後半6か月の間に完了することになる。

 

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