7月 21日

　　　　　　　　　　　（　　合歓の花・花合歓　　）



虹飛んで来たるかといふ合歓の花 　　　　　　　　　　　　細見 綾子



花合歓の紅いくつ見き朱鷺の郷 　　　　　　　　　　　　　石田章子



良寛の小さき持仏やねむの花　　　　　　　　　　　　　　　鈴木みすず



夕の雨含みて重し合歓の花　　　　　　　　　　　　　　　　夏目悦江



師を偲ぶ虹の光の合歓の花　　　　　　　　　　　　　　　　国枝隆生



合歓の花母と連れ立つ宿の下駄 　　　　　　　　　　　　　　中村衣江



合歓戦ぐ皇女降嫁の峠道　　　　　　　　　　　　　　　　　坪野洋子



山里は水車の音に合歓の花 　　　　　　　　　　　　　　　　清水青瓢



合歓の花沖には紺の潮流る　　　　　　　　　　　　　　　　　沢木欣一

7月 20日

　　　　　　　　　　　　　　（　　棉の花　　）



棉の花音といふものなき所 　　　　　　　　　　　　　細見綾子



棉の花しづかに深く地熱吸ふ　　　　　　　　　　　　下里美恵子



酒田穀倉まま炊く人に棉の花 　　　　　　　　　　　　磯貝碧蹄館



無戸室の跡を標して棉の花 　　　　　　　　　　　　　吉田亜司



塔二つ遠くに見えて綿の花 　　　　　　　　　　　　　鈴木 灰山子



船著きの小さき郭や棉の花 　　　　　　　　　　　　　　正岡子規

7月 19日 （ 梅雨明け ）

　　　　　　　　　　（　　梅雨明け　　）


関東甲信・東海・近畿・中国・四国が梅雨明けとなりました


梅雨明けの潟の光が街裏に　　　　　　　　　　　　　　沢木欣一



嬰に会ひに妻梅雨明けの海渡る　　　　　　　　　　　　栗田やすし



富士かけて梅雨明け雲の深さかな 　　　　　　　　　　　大場白水郎



病む妻へ玉子粥炊く梅雨の明　　　　　　　　　　　　　石原筑波



癒え兆す夫の笑顔や梅雨明くる　　　　　　　　　　　　前田史江



若冲の鶏の白さよ梅雨明くる　　　　　　　　　　　　　栗田せつ子



傘乾して我が家梅雨明け宣言す 　　　　　　　　　　　　吉岡春府



あるきたる足拭いて梅雨上りけり 　　　　　　　　　　　長谷川双魚



茹卵つるりと剥けて梅雨明くる　　　　　　　　　　　　　篠田法子



子の目にも梅雨終りたる青嶺立つ 　　　　　　　　　　　谷野予志

7月 18日

　　　　　　　　　　　　　　　（　　夏の海・夏の潮・夏の湖・夏の波　　）



夏潮に足浸けしのみ離島去る　　　　　　　　　　　　栗田やすし



夏潮を蒼し蒼しと盥舟　　　　　　　　　　　　　　 　桂 信子



塔白く塗られ近寄る夏の潮 　　　　　　　　　　　　中戸川朝人



夏の海見んとて砂丘ひた登る　　　　　　　　　　　　下里美恵子



水平線真青や夏の海暮るる　　　　　　　　　　　　　砂川紀子



夏海や朱の回廊に釣燈籠　　　　　　　　　　　　　　市原美幸



原色のサーフボードや夏の海　　　　　　　　　　　　太田滋子



日の入りしより夏潮の匂ひ濃き 　　　　　　　　　　　中村清子



夏潮にジェットスキーの水脈眩し　　　　　　　　　　小栁津民子



巫女が舞う緋の色冴えて夏の海　　　　　　　　　　　沢木欣一

7月 17日 （ 海の日 ）

　　　　　　　　　　　　（　　仏桑華・琉球むくげ・ハイビスカス　　）



蘂つたひ露の玉落つ仏桑華 　　　　　　　　　　　　　沢木欣一



トカラ馬ハイビスカスを髪飾り 　　　　　　　　　　　吉川一竿



仏桑華航跡海をまつぷたつ 　　　　　　　　　　　　　橋本榮治



壕出でし目にしむ赤き仏桑花　　　　　　　　　　　　鈴木みすず



軍機とぶ遙拝の地や仏桑花　　　　　　　　　　　　　平　千花子



紬織る筬の間遠やハイビスカス 　　　　　　　　　　　細川晋士子



水牛の角に一輪仏桑華　　　　　　　　　　　　　　　丸山貴美子



ひめゆりの塔にハイビスカス捧ぐ　　　　　　　　　　　武藤光晴



断崖へ来て海に投ぐ仏桑華　　　　　　　　　　　　　　栗田やすし

7月 16日

　　　　　　　　　　　　　　　（　　夕顔・夕顔棚・夜顔　　）

　　
　　「心あてにそれかとぞ見る白露の光そへたる夕顔の花」　　源氏物語　五十四帖内　四帖　

夕顔は本来ウリ科の干瓢をとるための植物、植物分類上「夜顔」が正しいとのこと
ただ俳句では夕顔として詠まれていることが多いようです



百姓の渋きしわぶき夕顔棚　　　　　　　　　　　　　 　　細見綾子



夕顔やひときは荒き山の星 　　　　　　　　　　　　　　　佐野美智



夕顔を見るに肘つく文机 　　　　　　　　　　　　　　　　大峯あきら



夕顔の地に触れて咲く雨上がり　　　　　　　　　　　　　　丹羽康碩



夕顔や連歌師来たる滝之坊　　　　　　　　　　　　　　　　中川幸子



夕顔の襞解くまでのうすみどり　　　　　　　　　　　　　　平松公代



葉がくれに咲く夕顔のうすみどり 　　　　　　　　　　　　軽部烏頭子



夕顔の男結の垣に咲く 　　　　　　　　　　　　　　　　　小林一茶



夕顔に西行も来よ宿かさん 　　　　　　　　　　　　　　　 正岡子規

7月 15日

　　　　　　　　　　　　（　　溝蕎麦　　）



溝蕎麦の溝よりあふれ出て咲ける 　　　　　　　　　　　江藤 都月



溝蕎麦や土橋明るく田をつなぐ 　　　　　　　　　　　　三輪千代子



町中に溝蕎麦の堰く流あり 　　　　　　　　　　　　　　　高浜年尾



溝蕎麦に狭められたり飛鳥川 　　　　　　　　　　　　　　国枝洋子



溝蕎麦や峡田乏しき水をひき 　　　　　　　　　　　　　　平松草太



舟着場跡や溝蕎麦一面に　　　　　　　　　　　　　　　　　岸本典子



溝蕎麦の花引き抜きて測量す 　　　　　　　　　　　　　　広瀬恵美



溝蕎麦の白埋め尽す城の堀　　　　　　　　　　　　　　　　矢野孝子



溝蕎麦へ瀬音やさしき飛鳥川　　　　　　　　　　　　　　　林　尉江



溝蕎麦の花のさかりや木偶の里　　　　　　　　　　　　　　倉田信子

7月 14日

　　　　　　　　　　　　　　　（　　向日葵　　）



向日葵や這ふ児の黒き膝頭　　　　　　　　　　　　　　栗田やすし



向日葵の迷路どこまで波の音 　　　　　　　　　　　　　小野恵美子



向日葵の一茎一花咲きとほす 　　　　　　　　　　　　　津田清子



向日葵や兎当番鐘鳴らす　　　　　　　　　　　　　　　　奥村ひろ子



帽子跳ね向日葵畑のかくれんぼ　　　　　　　　　　　　　大原悦子



向日葵や若牛の乳ほとばしる　　　　　　　　　　　　　　雪村富江



向日葵の花束ダイヤモンド婚　　　　　　　　　　　　　　遠藤斎子



行進曲のごとし向日葵群立つは 　　　　　　　　　　　　　早崎 明



向日葵の立ちたり焼却炉のほとり 　　　　　　　　　　　　沢木欣一

7月 13日

　　　　　　　　　　　　　　（　月見草・待宵草・大待宵草　　）



月見草咲けり鮎焼く石の竈　　　　　　　　　　　栗田やすし



月見草鎌の穂先に聚る海　　　　　　　　　　　　沢木欣一



月見草足裏に痛き川原石　　　　　　　　　　　　菊山静江



月見草白き一輪夕暮るる　　　　　　　　　　　　今泉久子



月見草鉄橋ながく鳴りわたる 　　　　　　　　　　林　徹



汽車煙熱きがかかる月見草 　　　　　　　　　　　鷹羽狩行



月見草霧の中より波つぶて 　　　　　　　　　　　今瀬剛一



小浜線通ればゆれて月見草 　　　　　　　　　　　大峯あきら

7月 12日

　　　　　　　　　　　（　　百日紅・百日白　　）



藁草履買ふ山麓の百日紅　　　　　　　　　　　　　　　栗田やすし



女来と帯纒き出づる百日紅 　　　　　　　　　　　　　石田波郷



百日紅空の青さの衰へず 　　　　　　　　　　　　　　西村和子



管で摂る母の食事や百日紅　　　　　　　　　　　　　　沢田充子



百日紅雨に明るし石光寺　　　　　　　　　　　　　　　長江克江



胃検診朝から揺るる百日紅　　　　　　　　　　　　　　小長哲郎



百日紅一樹が炎ゆるたよりかな　　　　　　　　　　　　沢木欣一







星生る百日白の花の上 　　　　　　　　　　　　　　　粟津松彩子



渡殿は百日白に折れ下る 　　　　　　　　　　　　　　山田弘子



百日白近江の空こそ縹色 　　　　　　　　　　　　　　増田十王