黒崎依子という女の子の日常に起きる些細な出来事を不条理な会話で紡いでいく前田司郎さんの脚本は、最終回にとっておきのセリフを依子に言わせた。
未来は想定内だと思っていたけど、それは過去の経験から想像した未来であって実際に来る未来とは違う。未来はまだ来てないんだから、希望がないはずがない…
僕も40代半ばを過ぎた今まで、何かをやろうとしても「どうせ…」という思いが前に出ていた。でも、その思いは過去に経験したことによるバイアスがかかっていたりする。だから、失敗ばかりしていたら「次も失敗してしまうのではないか」としり込みしてしまうこともしばしばだ。だから、石橋を叩き割って端から諦めてしまったほうがいいと考えがちだ。
依子のセリフを聞いて、僕も変われるのではないかと思った。せめて「どうせ…」と思うのを止めよう。
さて、このドラマでは田中麗奈さんの魅力を再確認した。先日も書いたけど、「なっちゃん」でデビューした彼女をいいなあと思ったのが、大河ドラマ『平清盛』で源義朝の妻・由良を演じた時だった。あの「…と、父が」というツンとした感じが彼女のシャープな顔立ちによく合っていた。でも、この『徒歩7分』では「彼氏なし、友達なし、仕事なし。」で、だらだらと一人暮らしを始める主人公を、これまた彼女しかいないと思えるくらいに演じていた。
放送終了後にアップされた演出の中島由貴さんによるスタッフブログで、依子が描いていた漫画の原稿などが実際に田中麗奈さんによるものだと知り、この作品に対する麗奈さんやスタッフのみなさんの意気込みを改めて感じた。麗奈さんもご自身のブログで、最終回を迎えたこのドラマに対する思いを語られている。そう、これを読んでディレクターの中島由貴さんが女性だったと知った。『平清盛』はそれぞれの回が印象的だったが、ホラー作品のような恐ろしいエンディングの「そこからの眺め」などを担当されていたんだね。そして、前田司郎さん脚本の『お買い物』と『迷子』も中島さんが演出されていたんだ…
そう遠くないうちに再び2人がタッグを組んだ作品を観たい。