踊る小児科医のblog

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インフルエンザの予防接種 10月から開始 接種量が変更に

2011年10月21日 | 予防接種
 ご案内が遅くなりましたが、例年通りインフルエンザの予防接種が10月から始まっています。今年から接種量が変更になっています。

生後6カ月~2歳 0.25ml 2回(2~4週間隔)  2,500円
3歳~12歳   0.5ml 2回(2~4週間隔)  3,500円
13歳~64歳   0.5ml 1回 or 2回(1~4週間隔)  3,500円
           (小児には2回接種をお勧めしています)

 昨年までの「0歳:0.1ml、1~5歳:0.2ml、6~12歳:0.3ml、13歳~:0.5ml」という方法は根拠が乏しく、接種量が少ないために効果が不十分なのではないかと指摘されていました。今年からの新しい方式がWHOの推奨量であり、小児科医の間でも長年要望してきたことが実現したものです。なお、接種量の増量に伴い、接種料金も一部変更になっておりますのでご了承下さい。

 お伝えした通り、2009年の「新型」は今年の春から「A/H1N1 2009」という「季節性」扱いになっており、今年のワクチンにも含まれています。

 65歳以上の高齢者への定期接種は従来通り1回で、自己負担1000円(または無料)です。(当院では八戸市のみ受託)

(院内報 2011年10月・11月号より)

日本脳炎 接種もれの方(H7~H19年生まれ)も接種可能に

2011年10月21日 | 予防接種
 日本脳炎ワクチンは、標準的には3歳で2回(1期初回)、4歳で1回(1期追加)、9歳(小4)で1回(2期)の合計4回接種することになります。

 平成17年度から平成21年度まで実質的に定期接種が休止状態となり、その年代の子は接種しそびれたままになっていましたが、7月から定期接種(無料)で受けられるようになりました。接種間隔についてはわかりにくいところもありますが、標準的な間隔にとらわれず合計4回接種するようにします。個別にご相談の上スケジュールを決めていきますので、受付にお申し出下さい。

対象 平成7年6月1日~平成19年4月1日生まれ(4歳以上20歳未満で接種)

接種回数
1)全く受けていない方
 第1期初回分:6日から28日までの間隔で2回接種             
 第1期追加分:初回接種2回終了後、1年経過後に1回接種
 第2期分:追加接種後、6日以上の間隔で1回接種
  ※第2期分は9歳以上で接種
2)1~3回受けている方
 前回接種から6日以上の間隔で残りの回数分を接種 
  ※1回毎に6日以上の間隔を空けること
  ※第2期分は9歳以上で接種

(院内報 2011年10月・11月号より)

不活化ポリオ 来年度導入へ 当院では輸入接種は実施せず

2011年10月21日 | 予防接種
 すでに秋のポリオ集団接種が実施されていますが、ポリオ生ワクチンによる麻痺の副反応が報道等でも取り上げられ、接種率も下がっているようです。

 この問題については以前にもお伝えしましたが、基本的には「生ワクチンから不活化ワクチンへの早期の切換えを望むが、不活化ワクチンの個人輸入は国の承認のない薬であり、万一の場合の補償がないまま一般の医療機関で実施することは難しい」と考えております。国内ワクチン承認までの間に、海外のワクチンを国が承認して緊急輸入すれば問題は解決できたのですが、それも期待できない状況です。現時点では不活化ワクチン接種開始は来年度後半になる可能性が高く、春の集団接種までは生ワクチンになるものと予想されます。

 ご自分で考えて判断する際に前提となる知識や状況を整理してみます。

1) ポリオは国内での自然の流行はないが、世界的にはまだ根絶されていない。

2) ポリオが根絶されれば、ワクチン接種の必要もなくなるが、それまでの間、免疫を維持するために接種を続ける必要がある。

3) ポリオ生ワクチンは効果が高いが、従来から数百万接種に1例程度で麻痺の副反応が発生していた。ここ数年では年1例程度の頻度で、百万接種に1例程度なのかもしれない。ワクチンの危険性が増加したとは考えられていない。

4) 不活化ワクチンは4回の注射が必要で、三種混合との混合ワクチン(四種混合)になる予定。切換え時の混乱を防ぐためにポリオ単独ワクチンも準備中。

5) 不活化ワクチンも絶対安全なわけではなく、他のワクチンと同様に、紛れ込み事故を含めて数百万接種に1例程度の重篤な副反応が起こる可能性がある。

6) 接種率が低下したために国外から持ち込まれたポリオの流行が懸念されている。実際に海外では散発的な流行が発生し、根絶までの期間を延ばしている。

7) 生ワクチンを接種した子から排出されたウイルスに感染する危険性もある。

 こういった複雑な状況にあるため、断定的に「こうするべき」とお伝えすることが難しくなっています。全てのワクチンはリスク(副反応)よりもベネフィット(病気を防ぐという利益)の方が圧倒的に高いことが前提となっています。ポリオ生ワクチンもその条件に合致していたのですが、国内発生ゼロが続いている中では、麻痺が1人でも発生すれば許容し難い状況にあります。不活化ワクチンを望む場合は個人輸入している医療機関で接種していただくことになりますが、現時点では八戸市内にはありません。あと1年待つことのリスク(流行や生ワク接種児からの感染)は、非常に高いと言う程ではなくても、大丈夫とも言えません。この状況でもし自分の子どもだったら生ワクチンを飲ませるとは思いますが、強くお勧めすることもできません。3つの選択肢のどれも間違いとは言えません。その他の情報なども参考にしてご判断下さい。

(院内報 2011年10月・11月号より)

子宮頸がん予防HPVワクチン サーバリックスとガーダシル

2011年10月21日 | 予防接種
 供給不足となっていたHPVワクチン「サーバリックス」は現在通常通りの予約・接種が可能となっております。

 新たに承認された「ガーダシル」も9月から接種可能になりました。いずれも中1~高1の女子には公費、その他の年齢には自費での接種となります。

 違いは、サーバリックスがHPVの16型と18型(高リスク型)の2価、ガーダシルは16・18型に加えて6・11型(低リスク型)の4価ワクチンとなっている点です。子宮頸がんに対する効果に違いはなく、ガーダシルは外陰部のイボなどへの効果が加わっているとのことです。接種間隔にも違いがあります。

 サーバリックス 初回、1カ月後、初回の6カ月後 0.5ml筋注
 ガーダシル   初回、2ヶ月後、初回の6カ月後 0.5ml筋注

 いずれのワクチンも、接種すれば100%子宮頸がんを防げるわけではなく、成人後の検診も欠かせないという点では変わりはありません。

 当院ではサーバリックスを主体に接種しておりますが、ガーダシルに関して何らかの問題があるからというわけではありません。ガーダシルをご希望の方はお申し出下さい。公費接種が来年4月以降延長されるかどうかは未定です。

◎「サーバリックス接種後死亡1例」心疾患によるもので因果関係認められず

「10代女子。2日後に死亡。心室頻拍の基礎疾患があり、致死性不整脈で死亡と推定。ワクチン接種との因果関係は不明」←妥当な判断と思われます。

(院内報 2011年10月・11月号より)

肺炎球菌・ヒブワクチン 4月1日から接種再開しています

2011年06月02日 | 予防接種
 小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンの接種が3月に一時見合わせとなりました。これは接種後1週間以内に死亡した子が全国で数名あったことから、因果関係などを検証するまでの間とられた措置です。検討会の結論としては、これらの事例は、紛れ込み事故や因果関係について証明されないケース、先天的な心臓病などの基礎疾患があるケースなどで、安全性について新たな問題が生じたとは考えられないとの判断で、4月から接種再開となっています。

 これらの死亡事例が2種類または3種類のワクチンの同時接種であったことから、同時接種の影響についても検討されましたが、世界的にも長年接種されている方式であり、特に同時接種の安全性に問題はないとの判断となりました。ただし、希望する方は同時接種ではなく単独で接種することも可能です。

 当院では3種類の同時接種は実施しておりませんが、2種類の同時接種(主に肺炎球菌とヒブワクチンの組み合わせ)は再開しております。スケジュール等については個別にご相談下さい。

(院内報 2011年4月・5月号より)

4/1より肺炎球菌・ヒブワクチン接種再開 Q&A

2011年03月31日 | 予防接種
#お知らせしていた肺炎球菌・ヒブの接種再開が正式に決まりました。ヒブは入荷の見込みが不透明ですので、接種スケジュールについては状況に応じて相談しながら決めていきます。予約は再開しております。以下、厚労省のQ&A(PDF)をテキスト化して掲載しておきます。

小児用肺炎球菌ワクチン及びヒブワクチンの接種の再開について
http://www.mhlw.go.jp/stf/kinkyu/2r98520000013zrz.html
 小児用肺炎球菌ワクチン(販売名:プレベナー水性懸濁皮下注)及びヒブワクチン(販売名:アクトヒブ)を含む、ワクチン同時接種後の死亡例が3月2日以降報告され、接種を一時的に見合わせることとしていましたが、3月24日にとりまとめられた薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会及び子宮頸がん等ワクチン予防接種後副反応検討会「小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンの安全性の評価結果について」を踏まえ、4月1日から接種を再開することといたしました。

一般向けQ&A(PDF:KB)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000016yw1-img/2r98520000016yxi.pdf

小児用肺炎球菌ワクチン及びヒブワクチン接種の再開についてのQ&A
平成23年3月29日版

健康局結核感染症課
医薬食品局安全対策課

問1 なぜ、小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンの接種を一時的に見合わせたのですか。

平成23年3月2日から4日までの間に、報告医によれば因果関係は評価不能又は不明とされていますが、小児用肺炎球菌ワクチン及びヒブワクチンを含むワクチン同時接種後の死亡例が4例報告されました。また、その後に、3件の死亡例が報告されました。(これらの7例には、過去に生じた例を含みます。)

情報を収集し専門家による因果関係の評価等を実施するまでの間、念のため接種を一時的に見合わせることとし、3月4日から3月31日の間、接種を一時的に見合わせました。

※その後、平成23年4月1日から、接種を再開することとしています(【問2、3】を参照)

問2 どのような根拠に基づいて、小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンの接種が再開されたのでしょうか。

3月24日の専門家の会議においては、今回の死亡例や、国内外の様々な情報を集めて検討が行われ、【問3】に示す理由から、安全性上の懸念はないとの評価がなされました。この評価に基づいて、小児用肺炎球菌ワクチン及びヒブワクチンの接種を再開することとなりました。

問3 小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンの接種は安全なのでしょうか。

これらのワクチンは、海外で広く用いられているワクチンであり、我が国でも発売以来それぞれ100万人から150万人程度の子供に接種されたと推定されています。

国内においても、接種後の死亡例について報告がありましたが、3月24日の専門家の会議においては、今回の死亡例や、国内外の様々な情報を集めて検討が行われ、以下のような理由から、安全性上の懸念はないとの評価がなされました。

・ 小児用肺炎球菌ワクチン及びヒブワクチンの接種と一連の死亡との間に、現時点では、直接的な明確な因果関係は認められないと考えられる
・ 小児用肺炎球菌ワクチン及びヒブワクチンの接種後の、国内での死亡報告の頻度については、諸外国で報告されているものと大きな違いはみられず、国内でのワクチン接種の安全性に特段の問題があるとは考えにくい
・ 国内外の調査研究によれば、これらのワクチンを含む複数のワクチンを同時に接種した場合、発熱や注射した部位の腫れなどの軽い副反応が増加するという報告もみられるが、重篤な副反応の増加は報告されていない。

なお、一般に、予防接種にはある程度の割合で発熱や注射した部位の腫れなどの軽度な副反応が、極めてまれに重篤な副反応が発生することがあることから、接種に当たっては【問4】に示す点について注意をお願いします。

問4 小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンの接種の際には、どのような点に気をつければよいですか。

一般に、ワクチンの接種は、発熱がなく、急性疾患にかかっていないときに行うべきものであり、医師による問診・診察や検温などを受けた上で行う必要があります。普段からお子さんをよく知っているかかりつけの医師がいれば、その医師から接種を受けたり、その医師に相談するとよいでしょう。

複数のワクチンの同時接種の安全性については【問5】、基礎疾患(持病)を有する方への注意については【問6】、接種を受けた後の注意については、【問8】をお読みください。

問5 小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンとの同時接種や、これらのワクチンと、DPT(ジフテリア、百日せき、破傷風)3種混合ワクチンなどの、他のワクチンとの同時接種は安全なのでしょうか。

国内外の調査研究によれば、小児用肺炎球菌ワクチンやヒブワクチンを含む複数のワクチンを同時に接種した場合、発熱や注射した部位の腫れなどの軽い副反応が増加するという報告もみられますが、差がないとする報告も見られます。同時接種による重篤な副反応の増加は報告されていません。欧米においても同時接種の安全性については問題ないとされ、同時接種は通常の方法として広く行われています。

このため、同時接種について、現在の知見からは、安全性についての問題はないと考えられます。
ワクチンの同時接種は、早く免疫をつけたり、接種を受けるための受診回数を少なくするために行われ、医師の判断と保護者の方の同意によって行うことができます。

なお、それぞれのワクチンを一つずつ単独で接種することもできます。別の日に接種するには、原則として、小児用肺炎球菌・ヒブ・DPT(3種混合)などの不活化ワクチンの接種後は6日以上、BCG・ポリオなどの生ワクチン接種後は27日以上の間隔をおくことになっています。

問6 子どもは基礎疾患(持病)を持っています。ワクチンの接種はやめた方がよいのですか。ワクチンの接種をすることができますか。

基礎疾患を持っているお子さんは、一般に、健康な乳幼児よりも感染症にかかると重症化するリスクが高く、髄膜炎や敗血症などの重い感染症を早期に防ぐことが重要である一方、ワクチンによる副反応についても、より注意が必要です。

例えば重い心疾患など、重い基礎疾患のある子どもへの予防接種は、日頃から基礎疾患の状態についてよく知っている主治医や、主治医と連携し予防接種の経験のある医師などが、子どもの体調をよく確認して、接種を受けるのに適した時期を判断し、慎重に接種を行います。

複数のワクチンの同時接種は、単独接種も考慮しつつ、医師が慎重に判断しますので、主治医とよくご相談ください。複数のワクチンの同時接種は、早く免疫をつけたり、受診回数を少なくする等を考慮して行われるものですが、同時接種で重篤な副反応が増えるわけではありません。万一重い副反応が生じた際などに、単独接種の方がどのワクチンの接種後に起こったのかが分かりやすくなることなども考慮されます。

問7 接種の見合わせの期間中に、2回目(3回目)の接種予定日が過ぎ、接種の間隔が空いてしまいましたが、接種できますか。

接種の一時的な見合わせのため、接種の予定の日が過ぎてしまったり、決められた接種間隔を守れなくなったりした場合も、ワクチン接種を受けた後の免疫への効果には問題がないとされています。

病気から身体を守る免疫をつけるためには、間隔が多少ずれたとしても、なるべく早く接種を受けましょう。

※ なお、ヒブワクチンは、異物混入により製品の一部が回収された影響で、地域によっては、一時的に供給量が不足している可能性があります。接種を希望する際には医療機関にご確認ください。
問8 ワクチンの接種を受けた後には、どのくらいの期間、どのようなことに気をつけたらよいですか。

ワクチンの接種を受けた後、軽い発熱や注射した部位の腫れなどが、起きることがあり、ごく稀ですが重篤な副反応が生じたり、あるいはたまたま別の病気になったりすることがあります。ヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンなどの不活化ワクチンによる発熱・腫れなどの副反応は、たいていは接種当日から数日以内に起こり、自然に治ります。血小板減少性紫斑病など、極めてまれな副反応が、接種から3週頃までにあらわれることがあるとされています。

もし、高熱、ぐったりしている、けいれん・ひきつけ、意識がないなどの重い症状がみられる場合は、医師の診察を受けてください。

問9 接種を受けた後に、もし病気になった場合には、どうしたらよいですか。また、その病気がワクチンの副作用かもしれないと思ったときには、どうしたらいいですか。

ワクチンの接種を受けた後には、【問8】に示すような副反応が起こることがあります。

もし、高熱、ぐったりしている、けいれん・ひきつけ、意識がないなどの重い症状がみられる場合は、医師の診察を受けてください。

万が一、ヒブワクチン・小児用肺炎球菌ワクチンの接種によって重い副反応や障害が残ったような場合には、ワクチン緊急接種促進事業を実施している市町村は健康被害に関する保険に加入していますので、市町村にご相談ください。また、「医薬品副作用被害救済制度」の対象になることもあります。

小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンの安全性の評価結果について(厚生労働省)

2011年03月25日 | 予防接種
#昨晩お伝えした「4月から再開」は最終決定ではないようで厚労省のページには記載されていませんが、ほぼ決定事項であるとのことですから、このまま再開に向けて準備をしていきたいと思います。なお、ヒブワクチンは多くのロットが自主回収となったため、在庫が多くないようです。単独接種、同時接種の組み合わせ等もそれぞれの患者さんの接種スケジュールと入荷状況などによって個別に相談して決めていくことになります。

小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンの安全性の評価結果について(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000167mx.html

(以下は、PDFファイルをテキスト化したものです)

小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンの安全性の評価結果について
平成23年3月24日

医薬品等安全対策部会安全対策調査会
子宮頸がん等ワクチン予防接種後副反応検討会

1 報告された7例の症例評価について

平成23年3月2日以降、小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンを含むワクチン同時接種後の乳幼児において7例の死亡例が報告されている。平成23年3月8日の合同会議以降報告された6・7例目の死亡例を含め、解剖所見、カルテ等から疾病の経過や疾病の重篤度について詳細な情報を入手し、改めてこれらについて評価を行った。

(1) 7例は0歳から2歳代の乳幼児で、基礎疾患を有するものが3例、基礎疾患が明確でないものが4例であった。

(2) 接種から死亡までの期間は、翌日死亡が3例、2日後死亡が1例、3日後死亡が2例、7日後が1例であった。

(3) 7例の死亡例の経過等の概要及び死因等についての専門家の評価は別紙のとおりである。

(4) 現在得られている各症例の経過や所見に基づいて評価したところ、報告された7例については、現段階の情報において、いずれもワクチン接種との直接的な明確な因果関係は認められないと考えられる。なお、例えば重い先天性の心疾患などの重篤な基礎疾患を有する患者は、その状態によっては、十分な注意が必要である。

2 諸外国の状況について

① 小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンのいずれにおいても、米国での使用成績に関する論文や企業が収集した副反応報告からみて、接種後に一定頻度の死亡例が報告されている。

② 海外での死亡例の報告頻度は、小児用肺炎球菌ワクチンでは概ね対10万接種で0.1~1程度、ヒブワクチンでは概ね対10万接種で0.02~1程度である。

③ 諸外国の死亡報告の死因では、感染症や乳幼児突然死症候群が原因の大半を占めており、いずれもワクチンとの因果関係は明確ではない。国内で今回見られている死亡報告の頻度(両ワクチンとも対10万接種当たり0.1~0.2程度)及びその内容からみて、諸外国で報告されている状況と大きな違いは見られず、国内でのワクチン接種の安全性に特段の問題があるとは考えにくい。
(参考)国内においては、平成23年以降、接種者数の増加傾向が見られている。

3 同時接種について

① 厚生労働省が実施した電子メールによる調査(866医療機関から回答)によると、平成23年2月の1か月間では、小児用肺炎球菌ワクチン及びヒブワクチンの接種のうち、何らかのワクチンとの同時接種が約75%以上を占めている。また、製造販売業者の調査でも、同様の傾向が見られている。

② 製造販売業者の国内での市販後調査/臨床試験では、小児用肺炎球菌ワクチン・ヒブワクチンそれぞれとDPTワクチンの同時接種、小児用肺炎球菌ワクチン・ヒブワクチンの同時接種において、副反応発現率は単独接種に比べ高い傾向がある。一方、鹿児島大学の調査では、小児用肺炎球菌ワクチン・ヒブワクチンの同時接種と単独接種の副反応発現率に有意差はない。
いずれの調査でも、同時接種により重篤な副反応の発現は増加していない。

③ 現時点までの国内での基礎疾患を有する患者に対する接種実績等からみても特に安全性上の懸念は報告されていない。

④ 欧米においては、小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンの同時接種において、局所副反応や発熱を増加させるが、重篤な副反応は単独接種と比べて差はみられないとする報告があるなど、同時接種の安全性については問題はないとされ、推奨されている。

以上からみて、今回調査した国内外のデータからは、小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンの同時接種における副反応の発現率は、単独接種に比べて高い傾向があるとする報告もあるが、重篤な副反応の増加は認められておらず、特に安全性上の懸念は認められない。

4 ワクチンの検定結果と品質管理について

国立感染症研究所が実施したワクチンの検定においても、これらのワクチンの死亡報告のあった症例に投与されたロットについての試験結果は、全て変動域内にとどまり、逸脱は認められなかった。宝塚例と西宮例で小児用肺炎球菌ワクチンのロットが同一であったことについては、製造工程等の逸脱等について確認した結果、問題となる点は認められなかった。

また、ヒブワクチンの異物混入問題については、懸念される安全性の問題は局所刺激程度であり、回収対象ロットが接種された死亡例では異物混入はなかったと報告されており、死亡症例との関連性はないと考えられる。

5 今後の対応について

(1) これまでに収集した症例に関する情報、国内外の情報を踏まえると、現時点では、小児用肺炎球菌ワクチン及びヒブワクチンの接種と死亡例との間に、直接的な明確な死亡との因果関係は認められないと考えられる。

(2) 両ワクチンの同時接種に関する情報等からは、安全性上の懸念はないと考えられる。そのうえで、小児用肺炎球菌ワクチン及びヒブワクチンの使用に際して、慎重を期して、下記の事項に留意することが適当である。

① 小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンについては、同時接種により、短期間に効率的に予防効果を獲得できるメリットが期待されると同時に、それぞれ単独接種が可能であることを示した上で、同時接種を行う場合には、その必要性を医師が判断し、保護者の同意を得て実施する。

② また、重篤な基礎疾患、例えば重篤な心疾患のある乳幼児については、髄膜炎等の重症感染症予防のためにワクチン接種が望まれるものであり、状態を確認して慎重に接種する。その際、単独接種も考慮しつつ、同時接種が必要な場合には、医師の判断により実施する。

(3) 小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンの接種事業の副反応報告は、報告者からワクチン接種との「関連なし」「評価不能」の場合でも有害事象を報告することを明示しているなど従来の副反応報告制度よりも、ワクチンとの因果関係がない場合でも実質的に広く報告を求めるしくみとなっている。

(4) したがって、今後もワクチン接種後数日以内の死亡例が報告されることが想定されるが、ワクチン接種後の死亡例が報告された場合には、引き続き可能なかぎり詳細な情報を収集し、ワクチン接種との関連性について専門家による評価を速やかに行っていくことが適当である。

(5) その場合、諸外国でのワクチン接種後の死亡例の報告状況を勘案し、例えば6カ月の対10万接種あたり死亡報告数が、因果関係の有無に関わらず0.5を超えた場合に、専門家による調査会等の評価を行い、対応を速やかに検討することが適当である。

(6)また、死亡や重篤な有害事象とワクチンの関連性の検証のためには、関係者の協力を得て、今後、積極的疫学調査を行う仕組みを構築すべきである。

ヒブワクチン自主回収(3/11)接種者には連絡済み

2011年03月24日 | 予防接種
3月11日にこの知らせが入り、ロット番号と接種者の番号を確認していたときに地震が起きてしまいました。

医薬品自主回収のお知らせ(アクトヒブ)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000014f5h.html

ワクチンを溶かす溶液に異物混入が2件あったため、「あらゆるリスクを排除するため」同一工程で製造されたワクチンを自主回収することにしたとのことです。

全部で13のロット番号が回収の対象となりましたが、そのうち2種類が当院で接種されており、診療を再開した14日より全員に連絡を終えており、健康に問題は生じておりません。

なお、その前に肺炎球菌、ヒブ、三種混合のいずれかを同時接種した子の中から接種後1週間以内に死亡例がみられたとのことで肺炎球菌とヒブの接種が停止しておりますが、本日行われた厚生労働省の委員会で、4月からの接種再開が決定しました。詳しくは別にお知らせします。その中でも、この自主回収されたヒブワクチンと死亡との因果関係は否定されたとのことです。
(1例が該当ロットに相当したのですが接種1週間後に死亡したケースで紛れ込み事故と考えられます)

死亡6例目?「紛れ込み」とすら言えない…

2011年03月10日 | 予防接種
行政とマスコミは、『新型インフルエンザ』騒ぎのときに、1人死んだ、また1人死んだと毎日毎日国民に恐怖を植えつける発表と報道を繰り返し、終わってみれば例年の「季節性」よりもずっと少ない死亡数に終わったことに全く何も学んでいないようです。(季節性のときには誰が何人死のうと関心すら寄せなかったくせに)
これは最初に書いたことですが、この国の現状ではどうもならん。おそらく未来も。。

「6例目」というこのケースは接種7日後の死亡例であり、生ワクチン(弱毒ウイルスが体の中で増殖して免疫を得る)ではなく不活性化ワクチンでは関連性はほとんど考えられません。例によって重要な途中経過の情報が欠落しているので判断材料が不足しているのですが。。

東奥日報の報道では「7日後」という一番大事な情報すら落としている。こうなると意図的に悪意を持って報道しているとしか考えられません。どこまでレベルが低いのか。。

このケースでも「紛れ込み事故」として認定することはあり得るのかもしれませんが、それは予防接種事業を進めるために必要な経費としてであって、医学的な意味合いはほとんどありません。
もちろん、死亡の原因を究明することは当然のこととして。。

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ヒブワクチンを含むワクチン同時接種後の死亡報告について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000014ac1.html

今般、ヒブワクチン(販売名:アクトヒブ)を三種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風・百日咳)と同時接種した事例において、接種7日後に死亡したとされる症例の報告がありましたので、情報提供いたします。
本報告のワクチン接種と死亡との因果関係は、報告医によれば評価不能とされており、現在詳細な調査を実施しています。
本報告についてのワクチン接種と死亡との因果関係の評価についても、次回に開催する医薬品等安全対策部会安全対策調査会と子宮頸がん等ワクチン予防接種後副反応検討会の合同会議において合わせて検討を実施する予定です。

症例一覧(3月10日現在)(PDF:105KB)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000014ac1-img/2r98520000014adi.pdf

Q&A 肺炎球菌・ヒブワクチン 3月9日版

2011年03月10日 | 予防接種
小児用肺炎球菌ワクチン及びヒブワクチン接種の 一時的見合わせについてのQ&A(3月9日改訂)(PDF:193KB)
http://www.mhlw.go.jp/stf/kinkyu/2r98520000013zrz-img/2r985200000149fp.pdf

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小児用肺炎球菌ワクチン及びヒブワクチン接種の一時的見合わせについてのQ&A

                   平成23年3月9日版
                   健康局結核感染症課
                   医薬食品局安全対策課

問1 なぜ、小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンの接種を一時的に見合わせたのですか。

 3月2日から4日までの間に、報告医によれば因果関係は評価不能又は不明とされていますが、小児用肺炎球菌ワクチン及びヒブワクチンを含むワクチン同時接種後の死亡例が4例報告されました。
 情報を収集し専門家による因果関係の評価等を実施するまでの間、念のため接種を一時的に見合わせることとしたものです。
 なお、その後、1例の死亡例が報告され、合わせて5例について情報を収集し、専門家の評価を進めているところです。

問2 接種後に亡くなった5人の方は、どのような症状・状況だったのですか。

 接種後に亡くなった方々の症状や状況については、3月8日の専門家の会議の資料として、厚労省ホームページに公表しています。
 (http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000141ko.html の資料1をご参照ください。)

問3 最近、子どもが小児用肺炎球菌ワクチン又はヒブワクチンを接種したのですが、大丈夫でしょうか。どのようなことに気をつければよいでしょうか。

 海外で広く用いられているワクチンですが、我が国でも発売以来それぞれ100万人から150万人程度の子供に接種されたと推定されており、特に著しい問題は生じていないことが先日行われた調査会で確認されております。また、今回の報告については、接種翌日(3例)、2日後(1例)または3日後(1例)に生じており、接種数日を経ている方についてはご心配ないものと考えられます。また亡くなられたお子さまの状況についての予防接種との関係については、現段階の情報では、直接的な明確な因果関係は認められないと考えられると評価されましたが、更に調査を行っているところです。
 特に接種直後から数日以内に、高熱、ぐったりしているなど、普段と異なる症状が見られる場合には医師に相談してください。

問4 小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンを同時接種する場合ではなく、いずれか一方を接種することも見合わせているのでしょうか。

 ワクチンとの関連を評価するまでの間は、念のため、単独での接種も見合わせることといたしました。

問5 DPT(ジフテリア、百日せき、破傷風)3種混合ワクチンの接種は見合わせていないのですか。

 DPTワクチンは従来から定期接種ワクチンとして広く使用されているワクチンであり、これまでの我が国での接種の実績からみて接種を見合わせることとはしていません。
 一方、小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンは我が国での発売以降の期間がそれぞれ1年又は2年程度と短く、また、昨年11月から開始した接種事業により接種者数がそれ以前に比べ増加している状況にあるため、評価を行うまで念のため一時見合わせることとしました。

問6 接種の見合わせはいつまで続きますか。

 専門家の会議を3月8日に開催し、報告された5例について、現段階の情報では、いずれもワクチン接種との直接的な明確な因果関係は認められないと考えられると評価されました。
 ただし、外国での状況や、同時接種に関する情報などについて早急に収集したうえで、再度検討を行うこととされました。近く改めて専門家の会議を開催することとしており、少なくともそれまでの間は接種の見合わせをお願いいたします。その後の対応は、検討結果を踏まえて速やかに決めたうえ、改めてご案内いたします。

問7 来月、次回の接種を予定していますが、接種できますか。

 3月8日に専門家の会議が開催されましたが、さらに情報の収集が必要であるとされましたので、近く改めて専門家の会議を開催することとしており、その結果を速やかに公表する予定ですので、その結果をご参考にしてください。専門家会議の開催日程についても決まり次第お知らせするようにいたします.

問8 既に小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンの1(2)回目の接種を済ませていますが、今後の接種が遅れても大丈夫ですか。

 今後、小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンの接種が再開された場合には、標準的な接種スケジュールから遅れても、接種できることとする方向で検討しています。ワクチン接種後の免疫への効果については、仮に接種が多少遅れたとしても、一般に、大きな差はないとされています。
 なお、DPT(ジフテリア、百日せき、破傷風)3種混合ワクチンおよびその他のワクチン(BCG、ポリオ、麻疹、風疹、日本脳炎など)については、現在も接種できますので、予定通り接種していただくようお願いします。

問9 DPT(ジフテリア、百日せき、破傷風)3種混合ワクチンと、小児用肺炎球菌ワクチン・ヒブワクチンとの同時接種を予定していましたが、全て接種を見合わせた方がよいですか。

 DPTワクチンについては、現在も接種できます。(問5をご参照ください。)
 DPT(ジフテリア、百日せき、破傷風)3種混合ワクチンについては、乳児期にこれらの病気になるのを防ぐために、予定通り接種していただくようお願いします。

問10 3月8日の専門家の会議の結果はどのような内容だったのでしょうか。

3月8日の会議の結果については、
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000146lh-img/2r985200000146my.pdf
をご参照ください。

肺炎球菌・ヒブワクチン「接種見合わせ」続く 更に2週間程度?

2011年03月09日 | 予防接種
 以下が8日に開催された厚労省検討会の検討結果ですが、このブログ上でこれまで限られた情報から解析した判断とほぼ同じと言っても良いかと思います。この状況で「接種見合わせ」を継続することになれば、何を根拠にして「安全宣言」を出して接種再開することができるのか、あるいは危険だから接種中止と判断するのか、一小児科医には「わからない」としかお伝えすることができません。

(追記:今回の症例の検査結果などの追加情報や海外の情報なども含めて、2週間後を目安に情報を集めて再開するか再度検討することになるようですが、これまで認可の段階でも検討されているはずだし、海外でもワクチンとの関連が疑われた死亡例はあるようですが因果関係なしまたは不明と判断されているようです。次回で再開するかどうかの判断が決まるはずですが、それ以上のことは書けません。)

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「小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンの安全性について」のとりまとめについて
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000146lh.html
小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンの安全性について(PDF:111KB)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000146lh-img/2r985200000146my.pdf

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   小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンの安全性について

             平成23年3月8日
             安全対策調査会
             子宮頸がん等ワクチン予防接種後副反応検討会

1.報告された5例の症例評価について
 平成23年3月2日以降、小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンを含むワクチン同時接種後の乳幼児において5例の死亡例が報告されており、これらについて評価を行った。
(1) 5例は0歳から2歳代の乳幼児で、基礎疾患を有するものが3例、基礎疾患が明確でないものが2例であった。
(2) 接種から死亡までの期間は、翌日死亡が3例、2日後死亡が1例、3日後死亡が1例であった。
(3) 現在得られている各症例の経過や所見に基づいて評価したところ、報告された5例については、現段階の情報において、いずれもワクチン接種との直接的な明確な因果関係は認められないと考えられるが、さらに入手可能な情報を次回までに収集する。
(4) なお、例えば先天性の心疾患などの基礎疾患を有する患者は、その状態によっては、十分な注意が必要である。

2.ワクチンの検定結果について
 国立感染症研究所が実施したワクチンの検定においても、これらのワクチンの死亡報告のあった症例に投与されたロットについての試験結果は、全て変動域内にとどまり、逸脱は認められなかった。なお、宝塚例と西宮例で肺炎球菌ワクチンのロットが同一であったことについては、製造工程等の逸脱等について確認する必要がある。

 その他、諸外国での状況や同時接種の安全性、接種者数等の情報について、早急に情報を収集し、次回検討することとする。また、死亡例とワクチンの関連性の検証のためには、関係者の協力を得て、今後、積極的疫学調査を行う仕組みを構築すべきである。

子宮頸がんHPVワクチン 高1の初回接種は4月以降(高2)も無料で

2011年03月07日 | 予防接種
肺炎球菌・ヒブワクチン接種見合わせだけでなく、子宮頸がんHPVワクチンは供給不足で新たな接種ができない状態になっていますが、現在高1の子には初回接種が4月以降になっても無料で接種できることになりました。

なお、当院に現在予約している方、1回目を接種した方への2回目までのワクチンは確保しております。それ以降についても、入荷次第順次接種するようにしますので、予約は引き続きお受けしております。当面、現在高1の子に優先されることになりますので、該当の方は早めにご連絡下さい。中学生の予約も受け付けております。実際に接種できる時期はこちらから連絡いたします。

(以下、国から県への通知)
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事 務 連 絡
平成23年3月7日

各都道府県 衛生主管部(局) 御中

               厚生労働省健康局結核感染症課
               厚生労働省医薬食品局血液対策課

 子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業の円滑な実施について

 子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業の実施については、平素より格段の御協力を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて、今般、子宮頸がん予防ワクチン製造販売業者からの当該ワクチンの供給量が逼迫しているとの連絡を受けたところです。
 子宮頸がん予防ワクチンの供給については、市場流通に基づいており、製造販売業者によれば、当初は十分な供給量が確保されているとのことでしたが、急速な需要の増大に対応できず、供給不足となり、出荷の制限等を実施しているとのことです。
 このため、厚生労働省としては、早期に供給不足を解消するため、引き続き、製造販売企業に対し、安定供給の確保に努めるよう要請していくとともに、子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業の円滑な実施を確保するため、「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業の実施について」(平成 22 年 11 月 26 日健発 1126 第 10 号厚生労働省健康局長通知及び同日付け薬食発 1126 第3号医薬食品局長通知)を改正することも含め、以下のような方針で対応する予定ですので、管内市区町村等への周知方お願いいたします。

        記

1 今年度に事業を開始し高校1年生を事業の対象としている市町村においては、平成23年3月末までに1回目の接種をできなかった高校1年生が、平成23年4月以降に1回目の接種をした場合であっても、当分の間、事業の対象とできることとする。

2 ワクチンの供給状況を踏まえ、当分の間、初回の接種者への接種を差し控え、既に接種を開始した者への2回目・3回目の接種を優先するよう、市区町村及び関係機関にお願いする。

以上

「接種後死亡」4例の情報 「見合わせ」や「再開」の根拠は 肺炎球菌 ヒブ

2011年03月07日 | 予防接種
これまで書いたことと重複しますが、予防接種後の死亡4例について、厚労省や保健所の発表と報道を合わせた限られた情報の中で、再度まとめて解析してみます。(推測が混じっているので確かなことは何も言えませんが)
→4症例の情報PDF(厚労省)

1)宝塚市 2歳男児 ヒブ+肺炎球菌 基礎疾患あり(心室中隔欠損症、慢性肺疾患、気管支喘息、てんかん) 翌日死亡 「容態が急変」とだけ報道されていて直接の死因や経過は公表されていない

2)西宮市 1歳女児 三種混合+肺炎球菌 基礎疾患なし 翌日死亡 呼吸停止状態で発見
<経過>
 3月1日 小児用肺炎球菌ワクチンとDPTワクチンを接種
      夜中に39℃の発熱
 3月2日 午前9時過ぎ 接種医療機関を受診
      軽度の咽頭扁桃発赤のみで全身状態良好
      午後1時半頃家族が呼吸停止に気づく
      救急車到着時、心肺停止状態
      午後2時56分、死亡確認

3)川崎 6ヶ月未満 女児 三種混合+ヒブ+肺炎球菌 基礎疾患調査中(報道では基礎疾患なし) 接種後3日で死亡
<報道より抜粋>
 2月17日接種 3日後の20日午前8時ごろ呼吸停止状態で発見、救急搬送後死亡確認

4)京都 6ヶ月以上1歳未満 女児 三種混合+ヒブ+肺炎球菌 基礎疾患あり(右胸心・単心室・肺動脈閉鎖) 接種翌日死亡 

(以上のお子さんについて、ここでは症例●という表現をさせていただきます。)

 このうち川崎の症例3は、接種後の経過が明らかになっていないのでそれにより判断が違ってきますが、接種後3日経っているので直接の因果関係は考えにくく、いわゆる「紛れ込み事故」の可能性の方が高そうです。生後6ヶ月未満という月数と、基礎疾患のない乳児が突然死を起こしている経過からは乳幼児突然死症候群(SIDS)の可能性がありますが、SIDSの診断には剖検が必須とされているので断定的なことは言えません。すでに半月以上経っていることから、剖検の結果も明日の検討会で出てくるのではないか推測されます。(もし「紛れ込み事故」の可能性が高くても予防接種副反応の救済措置の対象とすべきだとは思いますが。)

 西宮の症例2は一番経過が明らかになっていますが、前にも書いたように接種当日の発熱についてワクチン接種との関連の可能性はあるものの、翌日朝の受診時に「全身状態良好」であったにも関わらず、その後数時間で突然死を起こしており、その数時間の間に前日接種したワクチンの影響によって急激に悪化して突然死するというのは医学的には考えにくいストーリーです。発熱などの経過があるのでSIDSとは言えないと思いますが、発熱後に突然死を起こすウイルス性心筋炎やインフルエンザ、ロタウイルスによる脳症などを示唆する剖検所見や検査結果がないかどうかもポイントになってくるかと思われます。

 宝塚(症例1)と京都(症例4)の子には比較的重い基礎疾患があり、それが影響していたことは確かだろうと思いますが、そこに接種が何らかの影響を及ぼして引き金(トリガー)になったということも当然考えられます。その両者のウェイトがどれくらいということは、数値的に表すことは不可能ですが、接種前の一般状態、基礎疾患の経過や程度などによって判断は異なってきます。

 基礎疾患のある子に対する予防接種は、接種すべきでないということではなく、むしろ感染すると悪化しやすいことが多いため、主治医の判断により、状態の安定している時期に主治医の元で注意深く行われるのが普通です。この2症例もそうだったものと推測されますが、不幸にして死亡という転帰を迎えたことについて、それを健康な子への接種にまで一般化して解釈することは難しいものと思われます。

 突然死の2症例については剖検やその他の検査結果が、基礎疾患のある2症例については主治医による総合的な判断が必要になってくるものと考えられますので、現時点での推測はここまでとしておきます。

 繰り返しになりますが、予防接種と副反応とされる事例との「因果関係を証明」することも、「因果関係を否定」することも一般には非常に困難であり、その間のグレーゾーンの中で、シロに近いグレーなのか、クロに近いグレーなのか、どの程度の濃さか判断できない場合なのかなどの判断がなされることになります。

 もし「シロ」であることが証明できないと再開できないとしたら、全ての予防接種ができなくなってしまいます。予防接種についてはあらゆる国で行われているように、リスクとベネフィットを勘案して、適切に判断がなされることを望みます。

 亡くなったお子さんの親御さんにとっては、確率という数字上の問題ではなく、ご自分のお子さんが亡くなったという100%の問題であり、予防接種によって亡くなったという受け止め方をするのは当然のことと思います。それに対して真摯に受け止めてできる限りの原因究明や救済措置がなされるべきと思います。

 ただし、今回のケースについて接種見合わせが続くにせよ再開されるにせよ、他のワクチンを含めて、今後も同じようなケースがゼロになるわけではないことも知っておく必要があるでしょう。

接種後24時間(48時間)まで 副反応の注意期間

2011年03月07日 | 予防接種
肺炎球菌、ヒブワクチン一時見合わせについて、接種済みの方でご心配の方がいらっしゃるようですが、不活性化ワクチンの場合、発熱などの反応がある可能性は接種後24時間、長く見ても48時間であり、すでに3月4日までに接種された方はその時期は過ぎております。アナフィラキシーなどの直接の重篤な反応は、接種当日(それも30分以内など)早くに現れるものです。

なお、国の検討会は明日(8日)開催されてそこで今後についても議論になりますが、発表になっている情報の範囲内でのコメントを再度別の記事に書いておきます。

一つ前に書いた、
「Q&A 肺炎球菌・ヒブワクチン一時的見合わせ」
もご覧下さい。

Q&A 肺炎球菌・ヒブワクチン一時的見合わせ

2011年03月05日 | 予防接種
小児用肺炎球菌ワクチン及びヒブワクチン接種の一時的見合わせについてのQ&A(PDF:116KB)
http://www.mhlw.go.jp/stf/kinkyu/2r98520000013zrz-att/2r9852000001402a.pdf

小児用肺炎球菌ワクチン及びヒブワクチン接種の一時的見合わせについてのQ&A

平成23年3月5日

健康局結核感染症課
医薬食品局安全対策課

問1 なぜ、小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンの接種を一時的に見合わせたのですか。

 3月2日から4日までの間に、報告医によれば因果関係は評価不能又は不明とされていますが、小児用肺炎球菌ワクチン及びヒブワクチンを含むワクチン同時接種後の死亡例が4例報告されたため、至急調査をしているところです。
 情報を収集し専門家による因果関係の評価を実施するまでの間、念のため接種を一時的に見合わせることとしたものです。
 なお専門家による会議は3月8日に開催させていただく予定です。

問2 最近、子どもが小児用肺炎球菌ワクチン又はヒブワクチンを接種したのですが、大丈夫でしょうか。どのようなことに気をつければよいでしょうか。

 我が国でも発売以来それぞれ100万人から150万人程度の子供に接種されたと推定されており、特に著しい問題は生じていないことが先日行われた調査会で確認されております。また、今回の報告については、接種当日(3例)または3日後(1例)に生じており、接種数日を経ている方についてはご心配ないものと考えられます。またこれらの亡くなられた子どもさんの状況についての予防接種との関係については、現在至急調査を行っているところです。
 接種直後から数日以内に、高熱、ぐったりしているなど、普段と異なる症状が見られる場合には医師に相談してください。

問3 小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンを同時接種する場合ではなく、いずれか一方を接種することも見合わせているのでしょうか。

 ワクチンとの関連を評価するまでの間は、念のため、単独での接種も見合わせることといたしました。

問4 DPT(ジフテリア、百日せき、破傷風)3種混合ワクチンの接種は見合わせていないのですか。

 DPTワクチンは従来から定期接種ワクチンとして広く使用されているワクチンであり、これまでの我が国での接種の実績からみて接種を見合わせることとはしていません。
 一方、小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンは我が国での発売以降の期間がそれぞれ1年又は2年程度と短く、また、昨年11月から開始した接種事業により接種者数がそれ以前に比べ増加している状況にあるため、評価を行うまで念のため一時見合わせることとしました。

問5 接種の見合わせはいつまで続きますか。

 因果関係の評価を行う専門家の会議を3月8日に予定しており、少なくともそれまでの間は接種の見合わせをお願いいたします。その後の対応は、検討結果を踏まえて速やかに決めたうえ、改めてご案内いたします。

問6 来月、次回の接種を予定していますが、接種できますか。

 3月8日に開催する予定の、専門家の会議の結果を速やかに公表する予定ですので、その結果をご参考にしてください。