踊る小児科医のblog

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東奥日報「未熟な研修医」でっちあげ事件

2012年06月23日 | こども・小児科
東奥日報6月19日夕刊の東奥春秋「医者の一言」が問題になっています(というか問題にしたのは私ですが)。このコラムの記者が言うことに根拠があるのならともかく、文章の趣旨を180度誤読した記者が、「患者の気持ちを考えない未熟な研修医」なるものをでっちあげて、公器である新聞紙上で批判し始めたのですから、元の文章の著者にとっては身に覚えのない冤罪事件と言っても過言ではないでしょう。

(この著者は、むしろ記者が主張しているように患者の気持ちを思いやって、上手く行かないことを内心焦りつつ、、という気持ちを行を空けて表現したものと思われますが、その程度のニュアンスも理解できずに正反対に解釈して、正義の味方にでもなったつもりで筆を振り下ろしたようです。)

しかも、元の文章は一般には公開されていない(新聞社にだけ情報提供の意味で配布されている)会報ですから、この記事を読んだ読者は原文にあたって確かめようがなく、「そんな未熟な研修医には診て欲しくないな」と記者の主張を鵜呑みにして一方的に判断してしまう可能性が高い。

こちらから反論する手段もないし、もし反論して受け入れたとしても訂正される見込みはない。メディアによる文章の暴力というのはこういうことなのだろう。今回は実害はほとんどないと思われるが、その研修医にとっては心穏やかではいられないだろう。

どちらの文章も全文引用はできないのでこれだけ読んでも判断できない人がほとんどだと思いますが、元の文章は編集校正段階でチェックされているし、記事のあとに読み直した人(いずれも同業者)も「問題ない」と口を揃えています。

HP更新:院内報6・7月号掲載、健診画像更新、急病診療所予定追加(くば小児科クリニック)

2012年06月21日 | こども・小児科
院内報6・7月号
http://www.kuba.gr.jp/info/ih.html
 院内版感染症情報 ~2012年第24週(6/11~6/17)
 ヒブ・肺炎球菌・HPV(子宮頸がん予防)だけが定期化へ
 ポリオ 6月は生ワク 9月から不活化単独 11月から4種混合
 受動喫煙防止条例の制定は急務 行政・政治の不作為は深刻
  2012年のWHO世界禁煙デーのテーマは「タバコ産業の規制妨害を告発する “Tobacco industry interference” 」です
  県庁舎のみならず、すべての自治体庁舎・施設の早急な屋内全面禁煙の実施を求めます
  受動喫煙防止条例の早急な制定を求めます
  受動喫煙防止条例には「分煙不可・例外なし・罰則あり」の3条件が求められます
  タバコ産業による広告・スポンサーシップ・社会貢献(CSR)活動はFCTC違反です
  世界禁煙デー記念フォーラム2012 in 青森「健康寿命アップ タバコのない青森を」を6月17日に開催 →街頭配布チラシ
 「タバコのない青森へ 10の提言」
 6月~7月の診療日、急病診療所、各種教室、相談の予定
  6月の予定表 7月の予定表

健診画像
http://www.kuba.gr.jp/kenshin/index.html

急病診療所当番予定:6/23(土)、6/29(金)、7/9(月)、7/21(土)、7/30(月)
http://www.kuba.gr.jp/

『日本の地震地図 東日本大震災後版』とNewton別冊『地震列島と原発』より 地震の基礎(お勉強メモ)

2012年06月14日 | 東日本大震災・原発事故
Newton別冊『地震列島と原発』

震災後も懸念される大地震:東北地方太平洋沖地震の震源域の周囲、北と南ではプレート境界地震、東ではアウターライズ地震、西では福島のような内陸の地震。ただし、この地域だけで発生するわけではない。

プレート境界地震:房総半島沖と青森沖。「余効変動」地震の後も続く大地の変動。「余効すべり」地震による急激な動きと同じ方向に断層がゆっくり動く。二つのプレートが地震前と同じようにかたく結びついていない。

房総半島沖:1677年にM8クラスの地震が発生、房総半島の太平洋側で高さ約10m、茨城~宮城で数mの津波が押しよせたと推定。青森県沖にも似たような状況はあてはまる。

アウターライズ地震:アウターライズ=海溝の「外側が」「隆起した」地形。海側のプレート内部の断層で発生。正断層型が多い。プレートが引っ張られることで発生。東北地方太平洋沖地震の40分後に沖合でM7.5のアウターライズ地震が発生。

アウターライズ地震:プレート境界地震からかなりの期間が過ぎても発生する場合がある。過去にはM8クラスも。2006年11月千島列島沖でM8.3、2007年1月にM8.1のアウターライズ地震。

アウターライズ地震:1896年M8.2~8.5の明治三陸地震、37年後の1933年にM8.1の昭和三陸地震。チリ地震(1960年、M9.5)の余効すべりは数十年継続した。

アウターライズ地震:震源域が遠くなるのでゆれによる被害よりも津波による被害に注意。昭和三陸地震。ゆれの大きさだけで津波の大きさを判断しないように。

スラブ内地震:海のプレートが深く沈み込んだ場所でプレートが圧縮されることで発生。逆断層型(なかには正断層型ものも)。2011年4月7日の宮城県沖M7.4の地震は、気象庁は広い意味での余震に含めているが、プレート境界ではなく逆断層型のスラブ内地震。

スラブ内地震:陸に近いため強いゆれになる場合もある。津波の心配はない。

内陸の正断層型地震:地殻変動と余効すべりにより北アメリカプレートが引っ張られることで発生。福島県浜通りで頻発。今後もある程度の長期間、正断層型地震が発生しやすい状況が続く。

地震発生の確率が低いと考えられていた断層(双葉断層など)も、周辺で誘発されている地震の影響を受ける可能性がある。

北海道大学・日置幸介教授:東北地方太平洋沖地震発生のおよそ1時間前から震源域の上空の電子数が増加していた。


「トラフ」海溝よりも浅い溝状の地形。南海トラフのプレート境界地震:90-150年間隔。宝永地震(1707年M8.6)は三連動、過去最大の地震。1605年の慶長地震:津波地震=海溝よりやトラフよりのプレート境界で発生。

池に残された2000年前の巨大地震の痕跡。三連動+南海トラフ寄りの地域で同時に地震(M9クラス)が発生すると、ゆれはこれまでの想定と大きな変化はないが、津波の高さはおおむね2倍に。琉球海溝でもM9クラスの可能性。喜界島の海岸段丘。

プレート境界にエネルギーが蓄積されるモデル。「宮城県沖地震」などのエネルギー放出は完全でなく、蓄積されたまま次の地震サイクルが繰り返され、蓄積されたエネルギーが一気に放出されたのが東北地方太平洋沖地震。

プレート境界に沈み込んだ海山が巨大地震を誘発(仮説):防災科学技術研究所の熊谷博之主任研究員。1994年のインドネシアの地震(Mw7.6)。東北地方太平洋沖地震も。

「高レベル放射性廃棄物」の有害性は減らせるか? 「分離変換技術」日本原子力研究開発機構・大井川宏之。ADS:加速した陽子で大量の中性子を発生させ、マイナーアクチノイドの核変換を起こす。一種の原子炉。未臨界で運転される。

放射線で青く光る安価なプラスチック。ペットボトルを改良した放射線探知素材。シンチレックス。京大・放医研・帝人。

地震調査研究推進本部地震調査委員会:2011年11月25日発表。三陸沖北部から房総沖の想定地震と発生確率。http://www.jishin.go.jp/main/index.html

三陸沖北部から房総沖の海溝寄り:Mt8.6-9.0:30年以内に30%程度程度(津波地震)、50年以内で40%、Mt8.3前後:4-7%(正断層型)。三陸沖北部:Mt8.2前後:0.7-10%、繰り返し発生する地震以外の地震 Mt7.1-7.6:90%前後。

Mw(モーメントマグニチュード):規模が大きな地震で周期の長いゆれも考慮して算出。Mt(津波マグニチュード):津波の大きさからマグニチュードを算出。

東北地方太平洋沖地震は869年の貞観地震との1000年周期ではなく、過去2500年間に、紀元前3-4世紀、4-5世紀、貞観地震、15世紀頃、今回と計5回起きていたことを確認。

地震の発生確率が高まった可能性のある活断層(地震調査委員会):糸魚川-静岡構造線断層帯(中部/牛伏寺断層)、立川断層帯、双葉断層、三浦半島断層群、阿寺断層帯(主部/北部 萩原断層)

11の活断層帯で地震の発生率が10倍以上に(東京大学地震研究所・石辺岳男特任研究員):横手盆地東縁断層帯(約28倍)、真昼山地東縁断層帯(約11-44倍)、長町-利府線断層帯(約57倍)、長井盆地西縁断層帯(約33倍)、六日町断層帯南部(約10倍)、十日町断層帯西部(約22倍)、高田平野東縁断層帯(約13倍)、北伊豆断層帯(約70倍)、牛伏寺断層帯(約27倍)、境峠・神谷断層帯主部(約66倍)、猪之鼻断層帯(約11倍)

首都圏:元禄関東地震(1703年)と大正関東地震(1923年)が同じ相模湾フィリピン海プレートのプレート境界型地震と特定。その他は発生間隔が特定されているものはほとんどない。地震調査研究推進本部(2004年)、今後30年間にM7級の地震の発生確率を70%と評価。震災後、98%に。

首都圏:1)プレート境界地震(陸側のプレートとフィリピン海プレート) 2)フィリピン海プレート内部の地震(スラブ内地震):どこで発生するかわからない 3)プレート境界地震(フィリピン海プレートと太平洋プレート) 4)太平洋プレート内部の地震:震源が深いため大きな被害をもたらす地震は少ないと考えられている。どこで発生するかわからない 5)陸側のプレート内部の地震:「活断層」首都圏近辺で5つが知られている。「地下に隠れた断層」どこにあるかわからない。

中央防災会議(2005年):南関東地域で発生する地震:19の断層面を仮定→被害が最も大きくなるのは「東京湾北部の地震」(M7.3):フィリピン海プレート上面で発生する逆断層型の地震。最悪の場合、1万1000人の人的被害と112兆円の経済損失。

首都直下地震…なぜ被害想定が1.5倍に? 最新の観測で、震源が浅くなると考えられたためです http://www.yomiuri.co.jp/job/biz/qanational/20120606-OYT8T00921.htm

最新津波浸水予測:神奈川県「明応型地震」「慶長型地震」「元禄型関東地震と神縄・国府津-松田断層帯の連動地震」を想定(2011年12月8日):明応地震(1498年):東海・東南海連動型、海岸から1キロの鎌倉大仏殿まで津波が達した。慶長型:鎌倉市で従来想定の2倍、最大14.4mの津波。


『日本の地震地図 東日本大震災後版』防災科学技術研究所 岡田義光

「あなたのまちの地域危険度-地震に関する地域危険度測定調査(第6回)」(平成20年2月公表・東京都都市整備局)http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/chousa_6/home.htm

日本の国土面積(約38万km^2)は、地球の全表面積の約0.07%、周辺の海域を含めて1%程度だが、世界中で起きる地震の約10%は日本とその周辺で発生している。明治以来、地震災害でなくなった方はおよそ20万人。

大きな地震も小さな地震もその発生場所はいつも同じところで起きている。

「海溝型地震」「プレート内地震」「内陸型地震」

海溝型は通常はM8級、100年から200年程度の間隔で何度も繰り返し発生。
内陸型はまれに濃尾地震(M8.0)のような巨大地震になることはあるものの通常はM7くらいまで。繰り返し周期は数千年から1~2万年程度と大変に長い。

ひとたび内陸型地震を起こした断層は再び地震を引き起こす傾向が強く、最近数十万年の間に繰り返し地震を発生させ、現在もその能力を維持していると思われる断層は、とくに「活断層」と呼ばれている。

大小合わせて2000近い活断層の存在が知られている。

日本列島の活断層分布 活断層研究会編「新編日本の活断層」東京大学出版会1991

地震の発生予測
2005年3月 地震調査研究推進本部 http://www.jishin.go.jp/main/index.html
調査の対象とする活断層帯は110に拡大

地震発生の規則性がある程度わかっている地域では、次に地震の発生時期を統計的に予測することができる。(地震の発生確率は時間とともに変化していく)
地震発生の規則性がよくわからない地域では、地震がランダム(不規則)に起こるものとして発生確率の評価がなされる。(地震発生の確率はいつでも同じ)

100~150年の間隔で繰り返す海溝型地震は別として、活断層型の地震の発生間隔は数千年~数万年と長く、地震発生確率は非常に小さな値になる。

3%以上のもの「高いグループ」、0.1%以上3%未満のもの「やや高いグループ」 各々活断層全体の約1/4ずつ
地震発生確率の高い順番に発生するわけではない

青森県付近では、青森湾西岸断層帯が「やや高い」、津軽山地西縁断層帯と折爪断層が「不明」

地震動予測地図
防災科学技術研究所「地震ハザードステーション」 http://www.j-shis.bosai.go.jp/

わが国の周辺で最近111年間に発生したM7以上の地震は118個、平均ほぼ1年に1個。
北海道や東北地方の沖合が圧倒的に多い。
1000人以上の死者をともなった地震は10例。
10例中、1923年関東地震、1933年三陸沖地震、2011年東北地方太平洋沖地震を除いた7例はすべて近畿地方の周辺。
近畿地方周辺ではM7以上の地震はめったに起こらないものの、ひとたび発生すれば大きな災害をもたらす場合が多い。

北海道
地震予測
千島海溝沿いのM8級海溝型地震
十勝沖・根室沖・色丹島沖・択捉島沖 単独ではM8.1、7.9、7.8、8.0前後
十勝沖・根室沖連動でM8.3程度
1839年以降、それぞれ3回、2回、2回、2回 平均活動間隔72.2年
今後30年以内の発生確率 0.3-2%、40-50%、50%程度、60%程度

千島海溝沿いのM7級海溝型地震
十勝沖・根室沖 1900年以降5回 平均発生間隔17.5年
2004年釧路沖1回
色丹島沖・択捉島沖 1963年以降4回 平均発生間隔10.5年
特に規則性はなく不規則に発生 今後30年以内の発生確率 80-90%

十勝沖・根室沖連動の場合の津波については触れられていない

東北・新潟

東北地方西方沖の日本海東縁部では、東北地方をのせた北米プレートと日本海の下のユーラシアプレートとが青森県沖から新潟県沖にかけて新しいプレート境界をつくりつつある
特殊なタイプの地震が発生 1964年新潟地震、1983年日本海中部地震

東北地方・新潟県周辺で起きる地震
1)三陸沖から福島県にかけて発生する海溝型地震
2)東北地方とその太平洋側沖合の下で発生するプレート内地震
3)東北地方内陸の浅いところで発生する内陸型地震
4)青森県沖から新潟県沖にかけての日本海東縁部で発生する地震

地震予測
東北地方太平洋沖地震の型の広域地震 紀元前3-4世紀、4-5世紀、869年貞観地震、15世紀と過去4回発生
平均発生間隔600年程度 近いうちに発生する確率はほぼ0%

三陸沖北部 M8.0前後の巨大地震
最近約400年間で1677年、1763年、1856年、1968年と4回発生 87.8-111.8年 平均約97年
前回1968年十勝沖地震 43.6年前 今後30年以内に0.7-10%

M7級地震 1885-2011年の127年間に9回(...1994年、2011年) 平均14.1年
特に規則性はなく不規則に発生 今後30年以内の発生確率 90%程度

三陸沖南部海溝寄り M7.9前後
1793年(宮城県沖と連動 M8.2)、1898年(単独 M7.7)、2011年の3回
平均109年程度 今後30年以内ではほぼ0% M7級では50%

津波地震
三陸沖北部から房総沖まで
1600年~2011年の412年間に4回発生 1611, 1677, 1896, 2011
103年間隔 不規則に発生
全領域のどこかで今後30年以内に津波地震が発生する確率 30%程度
特定の地域では412年ごと 今後30年以内に7%程度

正断層型 全領域で1933年三陸沖地震(M8.1)1つしかない
400-750年の発生間隔で不規則に発生するとして
今後30年以内に4-7% 特定の領域では1-2%

関東地方・伊豆地方
1)関東地方内陸の浅いところで発生する内陸型地震
1)’伊豆半島や伊豆諸島などで発生する内陸型地震
2)相模湾から房総半島南方沖にかけて発生する海溝型地震
3)関東地方の下のフィリピン海プレート内部で発生するプレート内地震
4)茨城県沖から房総半島東方沖にかけて発生する海溝型地震
5)関東地方の下の太平洋プレート内部で発生するプレート内地震

(以下省略)

「大丈夫と言ってはいけない」と「安全ではない」と「危険だ」は違う リスク比較批判

2012年06月14日 | 東日本大震災・原発事故
前の2つの文章を補うものですが、「大丈夫と言ってはいけない」と言うと、「危険性を煽っている」「子どもたちの不安を助長している」などと批判を浴びることになります。

「大丈夫と言ってはいけない」=「危険」ではないことは日本語の表現としてすぐにわかることだとは思います。。

「大丈夫と言ってはいけない」の意味は「必ずしも大丈夫とは言えない」ということですが、この「必ずしも~言えない」というニュアンスには、言う人によっても受け取る人によってもかなりの幅があり、オーバーラップもあるかと思います。

 「安全」
  ↑ 安全だ 大丈夫
  | 大丈夫とは言えない 直ちに危険はない
  | 安全ではない
  | 危険性がある
  ↓ 危険だ
 「危険」

「必ずしも大丈夫とは言えない」と言うと、非現実的だ、世の中には「絶対大丈夫」などありえない、とか、
(その口で「原発は絶対安全」と言っていたくせに)
ゼロリスクを求めるのは理性的でなく感情論だとか。。

そこに登場してくるのが「リスク比較」。数字で比べてこんなに安全と。
これが非常に素人(あちらの言葉で言うと「理性・理論で考えられない頭の弱いお母さん方」)を馬鹿にしたものだった。

医学・医療の世界では、「絶対大丈夫」だの「ゼロリスク」などというものはハナから存在しません。私たちは(別に疫学の専門家でなくても)、意識するまでもなくリスク比較、リスク評価という世界の中で仕事をしてきています。

リスク比較の議論に接する時には「リスク比較そのものが、説得して丸め込むために存在するのではないか」という疑問を必ず考慮しないといけない。
(これは医学の世界にあてはめることも無論可能)
ここで数字の議論の入り込むと、「どこかおかしい」という最初の感覚が忘れ去られて、「この数字が理解できないヤツは馬鹿だ」という結論に陥ってしまう。

(数字そのものについては議論の基礎となるものだとわきまえた上での話であり、これを無闇に否定してまわるのは無意味ですが、放射線被曝の問題ではその数字の根拠すら相当に怪しいのだからその先はどうにでもなりうる。)

多くの人は、それでも、原発事故後の政府や専門家の言動に胡散臭さを感じ、リスクを回避する行動をとった。(取らなかった人も多かったが)

そもそも、あの有名な「直ちに健康に被害を生ずることはない」という言葉が、「必ずしも大丈夫とは言えない」という意味そのものなのですから。。

リスク比較の議論で注意しなくてはいけないのが、必要性と代替性、避けられるものかどうかという側面が(ある時は意図的に)抜け落ちていること。

その典型がタバコ。放射線と喫煙のリスク比較。
これを持ち出してくる人は信じない方が良い。簡単な見分け方。

(勿論、低線量被曝に比べて喫煙や受動喫煙のリスクが桁違いに高いのは当然なので、もし親がタバコを吸いながら子どもの被曝を心配してるとしたら論外ですが。)

タバコは必要性もメリットもゼロで、喫煙しなければリスクはゼロ。
受動喫煙も本来はゼロに出来るし、ゼロにしなくてはいけないもの。
(国が規制を怠っているために飲食店や職場、家庭などでの受動喫煙のリスクが非常に高くなっている現実は大問題だが、それを逆手に取って放射線被曝を正当化する理由にはならない。)

ちなみにJTは裁判で「受動喫煙の健康被害は証明されていない」と主張して、政府も「同じ被告の立場で」それを追認している。
受動喫煙など取るに足らないと。

だから、その受動喫煙よりもずっとリスクの低い放射線被曝の健康影響はあり得ないと。
だから、もし福島の子どもが重い病気になったとしても、放射線との因果関係は認められず、危険論者に危険性を煽られて避難したストレスによる可能性が高いと。
(裁判で勝つ見込みはないものと考えるべき)

自然放射線や医療被曝、バナナのカリウム40なんかを、バナナの叩き売りのような受け売りの弁舌でまくしたてるにわか仕立ての輩も後を絶たず。
(バナナ星人とかカリウム星人と言うのだそうな。今日初めて知った。)

自動車事故とのリスク比較なんて持ち出してきたら、この人はオツムが弱い人なんだと軽く聞き流してあげるだけでOK。

今までなんとなく「この人は信用できる人なのかな」と思っていた人の化けの皮がはがれたのもプラスに受け止めるべきだろう。単に自分が無知で騙されやすかっただけ。

岩田健太郎
野口 健 ← 東電とJT(原発とタバコ)がスポンサー
川口淳一郎
寺島実郎
江川紹子
香山リカ

話を戻すと、原発事故の危機的状況において、放射線被曝の危険性を訴えて避難を呼びかけるのではなく、このくらい被曝しても大丈夫だから逃げなくても良いと呼びかけて何の反省もない医学界については、歴史的な犯罪行為であり決して許されるものではない。
(たとえ結果的に福島の子どもたちに全く健康被害がなかったとしても)

ただし、これは今に始まったことではなく、水俣病でも薬害エイズでもタバコ病裁判でもこの手の御用学者が、患者の命を救うのではなく、被害者を増やして命を奪う「悪魔の医師」として暗躍したことを国民は知っておくべきだった。。

タバコは老化促進剤/受動喫煙は放射能より危険/タバコ産業による規制妨害を阻止しよう 禁煙デー配布資料

2012年06月09日 | 禁煙・防煙
6月17日の「世界禁煙デー記念フォーラム2012 in 青森」終了後に、青森駅前で配布する予定のチラシ(PDF)をHPにアップしました。

→ Download PDF file

プリントアウトしてご家族、親戚、友人・知人にも見せてあげて下さい。



1. タバコは老化促進剤!

タバコを吸うとシミ、肌あれや、深いシワが増え、しわがれ声になり、老化が進みます
20歳の双子の20年後 どちらが喫煙者?(BBCのCGシミュレーション)
実際に30年吸い続けたらこんな差が...(NHK番組で放送)



2. 受動喫煙は放射線被曝より危険

10万人あたりの生涯死亡リスク
 日常生活の受動喫煙 10万人あたり1万~2万人死亡(10~20%)
 放射線100mSv被曝 500人(0.5%)
 食品中ダイオキシン 100人
 アスベスト敷地境界基準 6人
 放射線1mSv被曝 5人
 環境汚染物質許容基準 1人

この四角の大きさは生涯その環境で暮らした時にそれが原因で死亡する人の数をあらわしています



3. タバコをめぐる5つのウソと誤解

タバコはストレス解消になる
→ ニコチン切れのイライラが解消されるだけでニコチン依存症という病気です

禁煙はつらく苦しいので無理だ
→ 禁煙補助薬により楽に禁煙することができます。医師・薬剤師に相談を

分煙で受動喫煙は防止できる
→ 喫煙室や分煙装置で受動喫煙が防げないことはWHOや政府も認めています

タバコ税で社会に貢献している
→ 医療費や死亡による損失などで税金の倍以上も社会に負担をかけています

祖父はタバコを吸って長生きした
→ そういう人はわずかな例外で喫煙者の半数近くは70歳まで生きられません



4. タバコ産業による規制妨害を阻止しよう WHO世界禁煙デー2012

5月31日はWHO世界禁煙デーです

タバコは世界中で喫煙者を毎年500万人以上、受動喫煙でも60万人(子ども16万人)も殺している「商品」です

タバコ会社はこの「商品」で金儲けを続けるために、世界中で規制を妨害して骨抜きにしようと暗躍しています

WHOタバコ規制枠組み条約(FCTC)によりタバコ会社の広告・協賛・社会貢献活動はすべて禁止されています

FCTC 受動喫煙防止ガイドラインで2010年までに屋内全面禁煙の法制化が日本政府に求められていました

青森県の飲食店や観光地では受動喫煙放置状態が続いています。青森県でも受動喫煙防止条例の制定が必要です

青森県タバコ問題懇談会 http://aaa.umin.jp/

なぜ小児科医が「福島の子どもは大丈夫」と言ってはいけないのか(2)

2012年06月07日 | 東日本大震災・原発事故
前掲の『なぜ小児科医が「福島の子どもは大丈夫」と言ってはいけないのか』に対して、(いまの日本では)違和感や反発を感じる人の方が多いのかもしれません。

私自身は、事故直後に医療者が適切な情報発信を行って避難を促すことができなかったことに対して痛切な責任を感じています(自分自身はその立場にも無かったし事実上不可能だったことを言い訳にしたくない)。その後も、福島は安全だから避難しなくても良いと講演してまわった「専門家」や、それを現在まで追認して何の疑問も感じない医学界全体にも深く絶望しています。

放射線被曝の危険性を知っているはずの医師が、福島の被曝線量は医療被曝と比べて全然大したことない、逃げなくても良いと強調していた政府を批判するのではなく支持したのですから。

当時の政府、メディア、専門家の言動について、事故検証委員会だけでなく、物理学や人文科学などの分野では痛烈な反省や検証作業が行われています。

ひとり医学界だけが、何の反省も検証作業もなく、「福島の子どもたちは大丈夫だけど念のため一生検査します。医療費もタダにするから福島から逃げないように」という政府や県の政策も問題なしと追認している。これは一体どういうことなのだろうか。

線量の基準については、既にこのブログだけでなく多くのサイトで触れられているように、放射線管理区域の基準が約0.6μSv/hで、その中で暮らすことは勿論、未成年が入ることも法律で禁じられていること。国の除染基準が0.23μSv/hであること。単純にそれだけで判断できるはずです。

早川教授も0.25と0.5を判断の基準としているようですが、このブログではそれを少し緩めて0.3で除染、0.6で子どもや妊婦はまず避難、1.0では移住権利をと呼びかけてきました。前述のように1年以上経った現在では、呼びかけをする時期は過ぎたと感じていますが、判断基準は変わりません。

このブログにも何度か書きましたが、私自身も、2人の子どもが除染対象地域で暮らしている被害者の一人であり、事故直後に(ある程度の知識があったはずなのに)適切な判断が下せなかったことを繰り返し悔いています。(そのレベルで被害者と言うのであれば、福島だけでなく東北関東の数千万人、あるいは日本全体が被害者でもあり、福島だけを特殊化することには無理があります。この言説にも批判があることを承知の上で。)

まして、その何倍、何十倍もの苦渋の念を抱いている福島のお母さん方の気持ちを察するに余りあります。もし福島の危険性を外から煽っているかのようにとられるたのであれば片腹痛い思いです。

前掲の「なぜ小児科医が…」に書きそびれましたが、小児科医が「福島は大丈夫」と言うことが、避難を妨げて子どもの被曝線量を増す方向に作用するだけでなく、政府や東電の補償負担を少なくし、福島原発事故が「大したことのない事故だった」かのごとき風化を促し(それが政府の目的)、結果的に原発再稼働へと連綿とつながっているという現実があります。

その現実を直視せずに、構文を逆にして「反原発の急進派が原発を止めるためにあえて福島の危険性を強調している」と取られているとしたら、論理的で説得力があるとは言えないのではないでしょうか。

福島の危険性を針小棒大に騒ぎ立てて不安を煽りたいなどという目的は毛頭ありません。ただし、最初に書いたように、結果的に「杞憂に過ぎなかった」のかどうかがわかる頃には、私たちには責任を持てないし、そもそも責任の取りようがありません。

福島県には2年だけですが初期研修でお世話になり、浜通の原発立地地域も何度か車で往復したことがあり、福島の子どもたちに何もできないことを心苦しく感じてはいますが、それは自分自身で受け入れるしかありません。

子どもは親の生き方に強く影響され、それに対して小児科医の力など無力であることなどわかっているつもりです。しかし、小児科医は「子どもに代わって発言する(advocacy)」などといった幻想をかすかに信じていた一人としては、現状に異を唱えることだけはしておきたい。

おそらく戦前の日本はこんなんだったんだろうなと思いつつ。。
(言論の自由がある分だけマシなのではなく、言論の自由がある分だけひどくなっている。)

↑この文章は全ての方に対して書いたものですが、主張や呼びかけなどと言うほどのものではなく、私が痛切に後悔し毛嫌いしていたはずの「アリバイづくり」の独り言に過ぎません。

なぜ小児科医が「福島の子どもは大丈夫」と言ってはいけないのか

2012年06月02日 | 東日本大震災・原発事故
昨年3月13日(停電回復)から17日まで、私がこのブログに書いたことを読み返してみました。
言いたいことは今も全く同じです。
ただし、今は事故直後ではなく時間が経ちすぎて取り巻く状況も変わってきているので、「福島は危険だからすぐに避難して」とまで言う気はなくなりましたが。。

1)私もあなたも誰もかも、子どもたちの30年後に責任は持てないこと。

2)もし疫学的に何らかの差が検出されたとしても、一人一人の子どもについて因果関係を証明することは不可能なこと。それを逆手に取って、国が救済措置をとらないことは目に見えている。(そもそもお金をもらったとしても健康は取り戻せない)

3)被曝との関係が有る無しに関わらず、ある一定の割合で白血病や悪性腫瘍、その他の重い病気にかかる子どもが出てくる。その時に、親は「あのとき早く避難させていれば良かったのではないか」という悔恨の念にかられることになる。これは数字や理性でどうなるものではない。ただし、1年経った今から避難することに意味があるかどうかはわからないし、もう考えられない。

4)小児科医が「安全だ」ということにより、親はそれに反論することが難しくなり、結果的に避難する人を減らす作用に働き、子どもの被曝量を増やすことにつながる。あるいは、避難した家族内や地域の人たちとの間の軋轢を増す方向に作用する可能性がある。

5)低線量の内部被曝については、歴史的に過小評価され国家や専門家により否定され続けてきたこと(原爆入市者やチェルノブイリ、劣化ウラン弾、核実験場周辺など)。日本だけでなく世界中で。そもそも内部被曝については事故直後には全くその危険性が伝えられていなかった。これだけ大きな原発事故で放射能が大量に放出されたのだから、地域や国全体として健康被害が全くないということはあり得ない。

6)津波と同じで考える前にまず安全なところに逃れること(これは事故直後の話)。福島の子どもたちは「津波」(放射能)が来ていることすら知らされなかった。

他のリスクファクターとのリスク比較や、リスク比較という手法そのものについては、既にこのブログに何度か書いたのですが、いま探すのが面倒なので後にします。

東奥日報が脱原発を撤回し県庁御用達「原発再稼働・核燃サイクル堅持」転向を宣言した3.11の「特別評論」

2012年06月01日 | 東日本大震災・原発事故
#私たちが鎌田さんや山本さんと歩いて、あらためて3.11フクシマの惨事を繰り返さないために原発・核燃のない日本を誓ったあの日に、東奥日報は一旦は宣言した脱原発路線を撤回し、「原発再稼働・核燃サイクル堅持」への転向を高々と宣言したのがこの「特別評論」だ。社説にする勇気もなく、報道部長のただの署名記事に過ぎないものを、あの鎮魂の日にひっそりと忍び込ませた愚劣さ。

震災1年 特別評論/脱原発の近未来/本社報道部長 福井透/産業創出し自立県に(東奥日報 2012年3月11日)

 巨大な地震と津波が、原発の安全性に対する国民の認識の甘さを根底から揺るがした。あれから1年。日本のエネルギー政策は大きく方向転換を迫られている。原子力政策に協力、共存を図ってきた本県にとっても、将来の産業構造をどのように築いていくのか、慎重に方向を見定めていく必要がある。

 大震災は、原発事故を誘発し、結果、電力は無尽蔵ではないという現実を知らしめた。全国に54基あった原発は順次定期検査に入っており、4月下旬には全ての原発が停止する。国内の電力供給の約3割を担ってきた原発がこのまま1基も再稼働しなかった場合、果たして今夏の需要ピークを乗り切れるのか。

 仮に液化天然ガスなどを緊急輸入し続け火力発電を稼働したとしても、輸入相手国の政策に左右される化石燃料を安定供給とは言い難い。地球温暖化にも逆行する。

 何よりも、日本が自前でエネルギーを安定供給するために進めてきた核燃サイクル政策そのものを白紙に戻すことになる。その場合、六ケ所村の再処理工場や全国の原発にたまっている使用済み核燃料は一体どうするのか。ガラス固化にしろ直接埋設にしろ処分地が定まらない現状で、核燃サイクルの技術やコストの選択肢が議論されているが、本県が最終処分場にならないことは国との確約事項である。

 直ちに原発をゼロにするという議論は、こうした現実を全く見ていないと言わざるを得ない。

 国内のエネルギー供給体制は深刻である。企業の生産性が低下すれば景気は一気に冷え込む。その影響は産業基盤が弱い地方ほど大きく表れる。雇用が失われ、少子高齢化が進む一方で、医療や福祉などの住民サービスは低下する。税収が落ち込み自治体運営はさらに厳しさを増す。

 政府は原発の原則「40年運転制限」を打ち出した。順次廃炉にする方針とも言え、「脱原発依存」を達成するまでの数十年後へのカウントダウンとも言える。安全性の確認の下に再稼働できる原発を耐用年数まで使用し、その間に、再生可能エネルギーの発電効率を高める研究を進め、将来の電力需要を見越して化石燃料とのベストミックスを図る?。原子力委員会が夏以降に決定する新原子力政策大綱の最も現実的な方向性だろう。

 本県には定期検査入り後に停止した東北電力東通原発1号機、工事や試験が中断している東京電力東通1号機、電源開発大間原発、使用済み燃料の再処理工場や中間貯蔵施設が立地する。

 これらの施設や計画によって国や事業者から本県にもたらされてきた交付金や補助金、寄付金、核燃税、固定資産税などの経済効果は莫大(ばくだい)だ。さらには雇用や関連産業への寄与も大きい。

 原子力政策の方針転換によって、これらの施設の方針が変われば、原子力と共存共栄を貫いてきた本県の産業や自治体の行財政運営が大きく揺らぐ。数十年後の原発のない社会をにらみ、原子力に頼らなくていい産業構造をどう築くのか。国の食料基地の一翼を担う優位性だけでなく、自立でき活力ある産業をいかに創出するか。官民挙げて全力で取り組み始める元年にしなければならない。

(このentryは記事に対する批評を追加する予定です)