踊る小児科医のblog

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「福島のメル友へ 長崎の被爆者から」をみて 「福島の人間だからできること」とは何か

2012年08月25日 | 東日本大震災・原発事故
録画しておいたNHK「福島のメル友へ 長崎の被爆者から」をみた。
(8/5放送、再放送も8/12に終わってます)
http://www.nhk.or.jp/etv21c/file/2012/0805.html
以下は気になった部分のメモであり番組全体の要約ではありません。

この番組、いろいろな断片、側面が切り取られていて、制作意図が読み取りにくい。
現実を追っていったら現実の複雑な様相をそのまま映し出したのだろうと思いますが。
この女子高生達は、福島の小児科医の講演と母親の説明にも関わらず、「低線量被曝の影響は殆ど無いに等しい」とは受け止めていない。(当然だが)
最後の「福島の人間だからできることがある」というのは難しい問題提起で、人によって逆方向の解釈も可能かもしれない。

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福島の女子高生の母親が学校の講演会に。

福島県小児科医会・市川陽子医師「昨年から今まで確かに要らぬ放射線を私たちは浴びています。実はそれは将来に不安を残すような健康被害を起こす可能性というのはもうほとんどないに等しい。将来結婚して妊娠された場合に赤ちゃんを産んで大丈夫だろうかという心配はほとんどないに等しいと考えて下さい」

この後、母が娘に「一度に100mSvは少し影響は出るが1mSvは超えても気になることはない」と説明。
http://pfx225.blog46.fc2.com/blog-entry-1297.html

4月、信夫山、母娘で花見。2mSv/h。
これまで放射線量の高いところを避けてきたが思い切って気分転換。
今まで通りの故郷の景色。。
(撮影のためではないだろう、他に誰も映っていないが)メールでは「他に人もたくさんいた」と。。
進学先を福島県内にするかどうか。。

(女子高生同士の会話)
大学に行く時に福島から来たと言えない。感染症じゃないのに。
芸能人も岩手や宮城の方に行って福島にはあまり来ない。

(過去のニュース映像)被爆者が結婚を反対され自殺。

(長崎の被爆者の団体)
福島のために何ができるか。手紙を出したらどうか。何を書いたら。。

長崎の被爆者が福島の高校生に送った手紙。
福島の高校では生徒に見せていなかった。
先生方で回覧。過剰に心配しすぎるのではないかと。
手紙の中には将来のガンや低線量被曝の影響を強調する部分も。

広瀬さん(長崎の被爆者)と女子高生の直接対話。
結婚も難しいのか。生まれてくる子どもは。。
低線量被曝の実験の対象になっているのでは、と。

広瀬さん「被爆者手帳は黙っていて手に入ったものではない。20年30年と検査し続けて未然に発見していくために福島の人が声を上げて」

福島の女子高生(友人3人)からのメール
「福島の人間だからできることがある。どんな第一歩を踏み出せばいいのでしょうか」
自ら行動を起こそうとする強い意志が芽生えていた。

広瀬さん
心が通じた。これで終りではなく始まり。
放射能に正面から向き合って生きる心の輪が広がり始めている。

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低線量長期被曝は全部修復できるという「山下・市川説」はDNA損傷メカニズムから説明できない机上の空論

2012年08月17日 | 東日本大震災・原発事故
多くの人は、何となくおかしいような気がするけど、そうなのかな、たぶん専門家が言うからそうなんだろうと納得させられている(納得できないでいる)のではないかと思います。

簡単に言うと、1回の高線量で100の細胞が障害されると、99個は修復できても1個は完全に修復できずに将来がん化する可能性がある。一方、低線量長期被曝なら細胞が1個ずつ障害されても、一つずつ完全に修復できるので何年住み続けてもがんは増えないという理論。(仮説と言っても良いだろう)

こんなの証明されているのかと思い色々読んだけど、そんな説明はどこにも出て来ない。例えば1つの細胞レベルで「1/100の確率で修復エラーが起こる」と仮定すれば「100個×1/100」も「1個×100×1/100」も同じ1のはず。算数の問題。ペトカウ効果では低線量長期被曝の方が危険。

低線量長期被曝はほとんど全て修復できるという「山下・市川理論」が正しければ自然放射線の危険性は考える必要がないということになる。そんな荒唐無稽な話はない。だから1mSvという基準がある。1mSvですら「原発が爆発したんだからそれくらい我慢しろ」という理不尽は話。

福島県立医大・福島市の小児科医・大川小学校の演題から 東北学校保健・学校医大会報告(7/7青森市)

2012年08月14日 | 東日本大震災・原発事故
 7月に開催された標記の学会の出張報告を転載します。(「八戸市医師会のうごき」掲載予定)
 なお、以下の要約が演者の意図と異なっている部分がある可能性があることをおことわりしておきます。

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第24回東北学校保健・学校医大会
 平成24年7月7日~8日 青森市 ホテル青森

「すこやかな子ども達の成長を願って~学校健診のあり方~」をメインテーマに開催された。
 青森県からは、一般演題で国立病院機構青森病院の和賀忍院長による「成育医療研修会活動について」の発表があり、シンポジウム「これからの学校健診と健康教育」では弘前大整形外科・石橋恭之准教授による「岩木地区小中学校における運動器検診の取り組み」が紹介された。
 ここでは震災関連の講演・演題のみを報告する。

「震災・原発事故と子どもの健康について」
    福島県立医科大学小児科学講座 細矢光亮 教授

 震災後、超急性期(~3日)、急性期(~14日)を経て、放射線被曝対策を中心とした慢性期が現在進行形で続いている。当初は水の確保から、DMAT拠点としての機能、避難地域からの患者の中継基地、医療従事者の放射線被曝対策などに追われたが、小児の救急患者は目立たなかった。5日目頃からガソリン不足の中で各チームによる巡回診療などを実施した。
 SPEEDIでは甲状腺等価線量100mSvの範囲が北西に広く分布した。文部科学省による学校20mSv基準と内閣参謀の辞任発言が県民の不安を助長した。現在、約20万人が避難し、4万人が県外に避難しているが、住民票を移していない人も多数いるものと推定される。
 原爆やチェルノブイリの経験から、福島では甲状腺がんリスクの増加だけに注意が必要であり、他の疾患は増えないものと想定されている。
 県民健康管理調査は震災時に県内に居住していた全員に基本調査を行い、小児36万人には3年間で甲状腺超音波検査を実施し、2年毎にフォローする。リスクの高い地域から順に検査が行われ、コロイド嚢胞や結節が一定の割合で検出されているが、要再検となった少数例以外は放射線の影響とは関係のない元々あった所見であり、本格調査は3年後からとなる。(数値のメモや公表は控えるよう求められた)
 県外に避難している人も各地域で検診が受けられる態勢になる。生活スタイルの変化による影響や心の健康度についての調査・対応も実施し、心身の健康を見守る態勢を整えている。

(追記:36万人の内訳は、浪江・飯館・川俣の先行調査4千人、避難地域3万6千人、全県民の子ども32万人であり、小児36万人ということではないようです。)

「学校管理下に子どもを亡くした保護者に対するグリーフ・ケアの経験 ~石巻市・大川小学校の事例に基づいた提言~」
    宮城県医師会:たかだこども医院 高田 修 先生

 多くの児童が死亡し行方不明となった大川小学校において、共感を元としたグリーフ・ケアが必要とされるはずだが、遺族の間でも事情の違いがあり、学校・教育委員会側の説明も二転三転するなどの難しい状況にあった。
 NPOのサポートチームの活動を通じて、学校管理下で子どもの命が最優先に守られるべき状況で起こった惨事であることを共通認識として、子どもの存在を中心において、まず事実を知り理解することによって、背負いきれない荷物を整理して少しずつ前に進むことにつながってきている。

「震災後の心身の健康を守るために ~福島県の小児科医として~」
    福島県医師会:いちかわクリニック 市川陽子 先生

「放射線と子どもの健康」講演会を通して、予想以上に正しい情報が伝わっておらず、安全情報はウソだという思い込みがあることを感じた。
 放射線被曝は蓄積されずほとんどは修復されること、福島の子ども達には下痢や鼻出血などの症状はあり得ないこと、日本の食品の暫定基準値は旧ソ連の事故直後よりも遥かに低いこと、チェルノブイリとは事故の規模、対応、医療・経済事情が異なり、福島の子ども達に甲状腺がんやその他の健康被害が出る可能性は極めて低く、胎児への影響もないことなどを伝えている。
 可能性の低いリスクを強調するよりも、放射線以外のリスクを少なくする生活を心がけることが大切である。
 県内の健康調査の結果、外部被曝は90%以上が年間1mSv以下で、避難地域の一部に高めの住民もいたが、妊婦・子どもは含まれていなかった。内部被曝も99.9%が預託実効線量で1mSv未満であり、将来への健康影響は極めて低いことが明らかになりつつある。

2011年度の禁煙外来治療成績 禁煙成功率56.3% 男性62.0% 女性50.0%

2012年08月04日 | 禁煙・防煙
2011.4.1-2012.3.31

禁煙外来受診患者 80名

保険外(自費) 2名
保険診療   78名 ①

5回受診終了者 44名 ②
   禁煙成功 44名 ③

5回受診せず禁煙成功 1名 ④

禁煙成功率 =(③+④)/① = 45/78 = 57.7%

※保険診療受診者の禁煙成功率は6割を目安にしていますが昨年度はわずかに届きませんでした。

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保険外診療の2名はいずれも禁煙成功せず 0%

全受診者中の禁煙成功率 = 45/80 = 56.3%

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保険診療の78名中

男性 50名 禁煙成功 31名 62.0%
女性 28名 禁煙成功 14名 50.0%

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禁煙外来 女性患者の割合

年度   全 男 女 割合
2002-
2006  56 34 22 39.3%
2007  35 23 12 34.2%
2008  49 37 12 24.5%
2009  31 27 14 34.1%
2010  83 51 32 38.5%
2011  80 51 29 36.3%
2012  28 16 12 42.9% (4-7月)

※全喫煙者中の女性の割合は33.9%(2011年JT調べ)なので、女性の方が相対的に禁煙外来を受診する率が若干高い傾向にありそうです。

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受診回数と禁煙成功率

1回 0/8 0%
2回 0/12 0%
3回 0/7 0%
4回 1/7 14.3%
5回 44/44 100%

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