踊る小児科医のblog

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水際対策は「時間稼ぎ」になったのか

2009年05月23日 | 新型インフルエンザ
対策が見直されて現実に近づいたことは評価できますが、迅速さが求められる感染症対策で、この程度の変更に1か月もかかるとは。。
しかも、まだまだ過剰な対策のままで、もし東京が蔓延状態だとしても青森で「第1例」が見つかったら隔離入院となります。

水際対策、機内検疫が「時間稼ぎ」になったとおっしゃる方がいますが、不思議です。
神戸の高校生の流行からすると、GWの前半には侵入していたものと思われます。
(接触歴不明なのでその間に2~3人は介していたもの考えて)
成田検疫で「第1例」とその周囲の拘束をしながらその成果を誇っていたうちに。。

あの「機内検疫」の恐ろし気な映像と、発見例に対する政府とマスコミの過剰反応が、この国の人々の心理にどれだけマイナスの影響を及ぼしたか。。現在の状況は不要な「対策」によって政府とマスコミが作り出したパニックと言えます。
そしてその「誤り」を認めずに、その段階が過ぎたから縮小すると言い逃れる。
(誤解のないように、入国時フリーパスにせよというのではなく、簡易問診票と啓発で十分だったはず)

首都圏「第1例」の女子高生は、熱があるのに簡易検査陰性だからそのまま帰した。
検疫官がやる気をなくしていたとしか考えられません。。(^_^;)
(…それを責めるつもりで書いているのではなく)

京都の大学が一斉に休学。。そんなに大学生と小学生の交流が盛んなの?
さすがに日本の知性の最高峰である京都大学では休校にしてませんが、そんなことで褒められたいとは思わないでしょう。(…失礼しました)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news5/2009/090520_2.htm

「発熱相談」「発熱外来」が混乱や感染拡大を防いでいるのか不明。
「発熱外来」の先生方の疲労をまねいているだけでは(大変申し訳ない)。。
世界中で「発熱外来」なるものを設けているのは日本だけ。
殺到する患者の大半は政府やマスコミが生み出した「不安病」であって、
本来かかりつけ医を受診すべき不要な患者ではないのか?
(発熱外来の分析データが出てないので正確には不明)

現実に関西では一般の医療機関でインフルエンザの診療をしています。
伝えられている「発熱相談」の硬直的な対応、、
非蔓延地の保健所でも「PCRしない」ことで患者ゼロを維持しようとしてる。。
(私もその方が良いと思いますけどね、現在のこの状況では)

今回の流行第一波は、メキシコやアメリカ、神戸をみてもインフルエンザとしては「小流行」で終わるでしょう。
八戸に入ってきたとしても、夏までには爆発的な流行には至らない。
慌てる必要は全然ない。。
(しかも一番慌ててバタバタしているのが○○なんだから笑えない)

秋以降は「季節性」として、変異しながら流行が繰り返され、数年以内に国民の多くが感染することになります。。
「感染しないこと」や「死亡例をゼロとすること」を目標とするのは、目標設定が間違っています。。
→舛添厚労相「死亡者が出たらどうするつもりなのか」
その答弁は間違いで、標準的な感染拡大防止の対策(例えば全県一斉休校ではなく感染者の学級閉鎖)をとりながら、患者が重症化しそうであれば個別に重点的な医療を行うのはどの場合でも同じです。

日本感染症学会緊急提言「一般医療機関における新型インフルエンザへの対応について」(2009.5.21)
http://www.kansensho.or.jp/news/090521soiv_teigen.pdf

その後の経過(強毒性への変異など)はもちろんわかりませんが、
これまでの経過で国内流行1か月、感染数千人規模で死亡例の報告はゼロ。
それどころか入院適応の重症例すらほとんどない。
(もちろん診断されずに基礎疾患の合併症で死亡した例の可能性は否定できませんが)
季節性インフルエンザでは超過死亡が毎年1万人。。でも誰も騒がない。。

そして、今回の騒ぎによる経済的・社会的損失は莫大。。
国連に行った子どもたちの心を深く傷つけたこの国の大人社会って何?

今回誰も感染者がいないのに1週間も休校にした学校は、毎年の季節性インフルエンザの時に同じことをするつもりなのか。来季は新型+旧型の混合流行も考えられます。

で、いつから「新型」が「季節性」になるのでしょう。
その切り替えの定義はどこにもありません。。とすると秋以降もこの状況が続く可能性も。。
今回の「新型」を2類感染症の「新型インフルエンザ」指定から外すしかないのですが。

【石原知事会見詳報】新型インフル「ちょっと騒ぎすぎじゃないの」
http://sankei.jp.msn.com/politics/local/090522/lcl0905221832003-n1.htm

新型インフルエンザ対策をアメリカ人に爆笑される理由(新型インフルエンザ対策の達人)
http://newinfluenza.blog62.fc2.com/blog-entry-472.html

発熱相談センター・健康観察からの患者発見率約0.003%(新型インフルエンザ対策の達人)
http://newinfluenza.blog62.fc2.com/blog-entry-468.html

喫煙者は新型インフルエンザで重症化しやすい

2009年05月22日 | 禁煙・防煙
喫煙者は季節性インフルエンザやSARSでも罹りやすかったり重症化しやすいことは知られており、新型インフルエンザでも全く同じです。
考えるまでもなく当然のこと。
マスクをつけたりはずしたりしながらタバコを吸うなんて、ご自分で何してんだろうと疑問に感じませんか?>喫煙者の方

1957年生まれ以前に免疫? 新型インフルエンザ

2009年05月21日 | 新型インフルエンザ
実はこのデータが出て来るのを待っていたのですが、残念、1957年か。。
1957年(昭和32年)生まれは現在52歳(誕生日以降)。
もちろん、まだ確定的なデータとは言えないし、高齢者でも基礎疾患のある場合に罹患すると重症化する可能性はありますので、単純に年齢で区切って安心とか心配とか判断することはできませんが。。

「ソ連かぜは、1977年から1978年にかけてソ連で流行したA/USSR/90/77 (H1N1)によって起こったインフルエンザのエピデミック(局地流行)である。 よく似た株によるインフルエンザが1947年から1957年にも流行したため、免疫を持たない23歳未満の子供や青年に感染した。パンデミックと言われることもあるが、主に青年のみに感染したため厳密にはパンデミックではない。」(Wikipediaより)

この「1947年から1957年にも流行」したウイルスに感染した人だと、今回のA/H1N1に交差免疫があるのかもしれません。その後の「ソ連かぜ」の免疫ではダメなんだろうか?

【新型インフル】57年以前生まれに免疫か(2009.5.21 10:52)
http://sankei.jp.msn.com/life/body/090521/bdy0905211056015-n1.htm

 米疾病対策センター(CDC)のジャーニガン・インフルエンザ部副部長は20日の記者会見で、1957年より前に生まれた人の一部に、新型インフルエンザに対する免疫がある可能性を指摘した。
 さまざまな年齢層から採取した血液の分析で、57年より前の世代の血清から、新型インフルエンザのH1N1型ウイルスに対する免疫反応を示唆する結果が得られたという。詳しくは近く公表されるCDCの週報に掲載されるという。
 ジャーニガン副部長によると、米国の入院患者のうち50歳以上は13%で、高齢者が重症化する傾向のある季節性インフルエンザとは特徴が異なるという。(共同)

すでに全数カウントする意味がなくなっています

2009年05月21日 | 新型インフルエンザ
患者数…すでにA型陽性でも神戸では確定検査がされずに治療されていたり、東京ではノーリスクでA型陽性1人だけの場合は検査されない方針ですので、一つ前にも書いた通り、発表されている数倍から十数倍(このあたりは目分量ですのでわかりませんが千人~数千人)のレベルに達しているのではないかと思われます。

今回の経験は、いろいろな意味でのこの国の特徴(世界の常識からかけ離れた特異性)を表すものとして、きちんと記憶に留めておく必要があるでしょう。

「仙台方式」岩崎副市長の冷静な視点

2009年05月21日 | 新型インフルエンザ
岩崎恵美子先生(前仙台検疫所長・医師)は日本で唯一エボラの患者を直接治療し、SARSの時には八戸港で疑い患者を診察された経験を持つ専門家で、八戸でもSARSのあとに二度ほど講演していただき、拝聴する機会を得ました。新型インフルエンザ対策でも、日本で唯一「仙台方式」と称される現実的な対策を「強毒性」が想定される段階から構築して注目されてきました。

■視点・新型インフル
◇早期治療こそ公の責任--元仙台検疫所長の岩崎恵美子・仙台市副市長の話
http://mainichi.jp/select/opinion/closeup/news/20090520ddn003040031000c.html

 感染症の専門家として「水際対策に期待するのは間違い」と言わざるを得ない。ウイルスは人について動くのだから、鎖国しない限り、完全には防げないからだ。
 今回はゴールデンウイークの人が動く時期に海外から入ってきたと推測される。症状の出なかった人もいれば、従来型のインフルエンザと診断されて治療を受けた人もいるはずで、実際の患者数は現状の数倍はいるだろう。
 より本質的な問題は、症状が出た場合にいかに早期に治療するかという医療体制整備だ。仙台市は、水際では防げず、流行は起きるのだという前提で現実的な対策を練ってきた。流行発生時には患者が殺到するため、発熱外来は機能しない。だから通常のインフルエンザと同様に開業医らに治療を担当してもらう。2年をかけて医師会の理解と協力を得てきた。
 流行は防ぎきれないが、きちんと治療をすれば治るのだから過度に心配することはない。かかってしまったらすぐに治療を受け、会社や学校を休んで治すこと。「人にうつさないことは公の責任である」という意識を育てなければならない。

#滋賀や東京の患者で「蔓延」が危惧されているようですが、患者数の増加が鈍ったように見えるのは「検査能力を越えて蔓延しているから」であって、実際には千人以上、おそらく首都圏には相当数発生しているだろうというのが医師のほぼ一致した見解です。一例で大騒ぎする段階はすでに過ぎています。全県一斉休校は意味がありません。

なぜ対米追従しないのか? 新型インフルエンザ対策ほか

2009年05月20日 | 新型インフルエンザ
◆どうして得意の「対米追従」をしないのか?
・新型インフルエンザ対策…米国10万人蔓延の経験を全く学ぼうとしない
・タバコ規制政策…先進国唯一「国策でタバコ販売」を続けて国民を殺し続ける国
・薬害エイズ・アスベスト…欧米各国の規制を無視して国民の命より企業の利益を優先し続けてきた政府 

◆絶対に「対米追従」してはいけないことをして大失敗
・医療への市場経済導入(小泉改革)…医療大崩壊

◆世界中でどこの国もしていない特異な政策で大失敗
・20年以上にわたる医療費抑制、医師数抑制政策…地方の医師不足、医療崩壊
・後期高齢者医療制度…姥捨て山政策
・メタボ健診(特定健診)…何らエビデンスがなく国民にメリットのない愚策

こうしてみると、全く「国民のいのち」を最優先にしてきたとは言えないこの国の医療政策に嘆息。。

マスクは感染予防のためではありません

2009年05月19日 | 新型インフルエンザ
感染者が外に咳やくしゃみなどでウイルスを飛散させることを防ぐためのものです。
それによって感染拡大を防ぎ、結果的に感染者を減らす(集団としての予防につながる)ことが期待されます。

一般の健康な方が道を歩くのにマスクをしてもインフルエンザは防げません。
(というか、すれ違う程度の接触では感染しないって。。満員電車の中で目の前でくしゃみされれば別ですが)

だからアメリカでは街で誰もマスクをしていないのに、日本人だけが集団でマスクをしていて奇異な目で見られる。。
(集団でマスクをしていれば感染者の集団だと思われますから)
それに、成田に着いたとたんマスクを着けて降りてくるという意味がわからない。

昔みたいなガーゼのマスクなら加湿効果はあるかもしれませんが、あれ自体すぐに不潔になるものだし。。

それならばなぜ「個人の予防のために」すべての人にマスクをすることが推奨されているのか?
(実際には厚労省もそうは言ってないようなのですが、テレビや広報を見ればそのように理解されるのが普通だと思う)

よくわかりませんが、
マスクをしない1人の感染者から拡大することを防ぐために、全員にマスクさせれば漏れは無くなるという発想かもしれません。

感染者と濃厚接触する医療従事者のための「N95マスク」というのは、苦しくて何分も続けてつけていられないものですが(私もしたことがないし持ってません)、大阪府の発熱外来ではまだ緩和令がでていないので、ガウン、ゴーグル、N95マスク、手袋をして検体採取にあたっているようです。悲惨です。

★マスク不足に(医療系MLで紹介されたもの) …医療機関でもマスクの供給が途絶えています

・ペーパータオルでマスク作り
 http://comet.endless.ne.jp/users/katacli/mask/papermask.html

★東京都の新たな検査方針

>新型インフルエンザの広がっている国への渡航歴がないケースでも、
>同一病院の患者や職員、あるいは学校内の同一学級やクラブ内で、
>38度以上の発熱などがありA型インフルエンザに3人以上感染したと
>確認された場合、遺伝子検査を実施して新型かどうかを判明させる。

A型が1人ずつ別々の医療機関に受診しても、3人いるかどうかが確認できなければ「新型」かどうかの検査は行われないことになります。

いま一番のターゲットは東京(首都圏)ですが、すでにある程度入り込んでいると想定した方が良いでしょう。

お勧めブログ2つ:新型インフルエンザ対策

2009年05月19日 | 新型インフルエンザ
政府やマスコミの伝えることだけを鵜呑みにしていては真相は見えてきません。最近毎日のようにチェックしているブログを2つ紹介します。

・感染症診療の原則(青木眞氏)
 http://blog.goo.ne.jp/idconsult

・新型インフルエンザ対策の達人(個人ブログ=保健所医師)
 http://newinfluenza.blog62.fc2.com/

青木先生のブログでは、今回の「全県一斉休校」についても触れられています。私はもちろん青木先生のような感染症診療の専門家ではありませんが、毎日こどもたちの感染症を見続けているので、「誰も感染していない学校まで一斉休校させるのは意味がない」とごく当たり前のことを書いたつもりです。しかし、この記事にある「専門的な助言をした厚生労働省の担当者」はそうではなかったということ。。

・過剰対応後のおとしどころ 2009-05-18(感染症診療の原則)
 http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/1bb19109c5cdbb142ff9f1cc43e95b1a

(以下引用です)
まずひとりも発症者がいないのに学校を閉鎖する根拠は何か?

※報道によると自治体は限定対応をしようとし、文科省は一律対応をしなくていいといっていたのに「厚生労働省の担当者が『県内全域に広げた方が効果的だ』という専門的な助言をした」から一斉休校になったそうです。どの国でもそんなことはいわれていないんですけどね。担当者って誰?(5月18日 読売)
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20090518-OYO1T00677.htm?from=main1

インフルエンザの場合はまず症例が自宅隔離(安静)をし、接触機会をたちきります。しかし数が一定数増えてきたところで学校や教育委員会が閉鎖を検討しています。(毎年一人出た!といってクラスや学校を閉鎖したりはしていません)

そして問題はいつ再開するか?です。

今回は「終わりの見えない根拠もよくわからない、しかしあとで何かいわれるのはやだなモード」が働いて検査がじゃんじゃんされることになるでしょう。
誰か過労死をしたり、予算が底をつくまでやるのか知りませんが、この先ひたすら(調べれば調べるほど)数は増えていきます。

数が増えている中で学校を再開する根拠はなんだ?になります。

今後もこういった感染症の問題はおきますので、問題処理能力としてどんな理屈で展開するの注目しましょう。
ニューヨークも3つ新たに閉鎖しましたが、学内での複数症例が探知されたからであり、地域全体ではありません。
(引用終わり)

2千人になったら?「通常インフル対応へ切り替え検討を」

2009年05月18日 | 新型インフルエンザ
「近々全数把握をやめて定点サーベイランスだけにする」という噂もあるようです。(真偽不明)

「国内感染がさらに拡大した場合は通常のインフルエンザの対応に切り替える」
一般の方は「感染拡大しているのに対策を下げるのか?」と疑問に思うかもしれませんが。

「修学旅行、駅で中止を知らされる」むごい話です。
もう少し「感染が拡大」して制限が緩和された時期だったら中止にならなくても済んだのに。
(そう言われて納得する中学生がいるだろうか)

こうなったら、早く2千人に達するのを待つしかないか。
(この2千人という数には特に根拠はないと思いますが、多分それ以上は「一杯でいちいち把握できない」という目分量でしょう)

「通常インフル対応へ切り替え検討を」与党、政府に要請(5月18日13時19分)
http://www.asahi.com/national/update/0518/TKY200905180148.html

>通常対応に切り替える目安として国内感染者が2千人に達した場合をあげる意見もあった。

新型インフル拡大「ドクターは戦場にいるような状態」(5月18日5時1分)
http://www.asahi.com/national/update/0518/OSK200905170118.html

>病院職員は「これ以上増えると救急医を発熱外来に回さなければならない。
>新型は季節性と症状も治療も変わらない。分けないで対応したいのだが」と話す。

修学旅行中止、駅で告げられた 大阪の中3「うそやー」(5月18日15時2分)
http://www.asahi.com/national/update/0518/OSK200905180093.html

>「絶対うそやー」「いややっ」。目を潤ませる生徒もいた。
>大阪市は高倉中のほか、24日までに出発予定だった小学校12、中学校40、
>特別支援学校1の計53校の修学旅行をすべて中止することを決めた。

すでに「蔓延期」/「感染拡大防止」の意味とは

2009年05月18日 | 新型インフルエンザ
兵庫県では既に「国内発生早期」ではなく「蔓延期」の対応へと切り替えを進めています。(そのような状況なのですから当然ですが)
これからは、一般の医療機関で新型インフルエンザも診療することになっていくはずです。(これまでの発見例が一般の医療機関を受診しているのですからこれも自然の成り行きで)
 注)5/18現在では従来どおり「疑われる方」は保健所の相談センターに電話する従来の体制のままです。

おそらく、一両日中に英国、スペインを抜いて4番目の「蔓延国」になると思います。
人口密度の高い大国ニッポンでの流行で、フェーズ6格上げは避けられない事態か。。
(できれば避けてほしかったのですが、、単に政治的な意味合いで)

◆「感染拡大防止」の意味とは

・流行開始までの時間を遅らせる(時間稼ぎ=水際作戦の意味)
・流行の山をなだらかにしてピークをずらす
・流行の山自体を小さくする
・それにより社会的混乱を少なくする

ことが目的であり、一例も侵入させないとか、(既に始まった)流行そのものを止めるということは最初から想定していません。
(ということを政府もマスコミも国民に説明しようとしない)

それに加えて、感染の際に重症化したり、一斉にかかると社会的機能が崩壊するおそれのある人たちに対して、

・ワクチン(今回の流行にはごく一部の人しか間に合わない)
・抗インフルエンザ薬の予防投与

によって感染しても発症を防いだり軽症で済ませるようにしたり、

・逆隔離

によって弱者の感染を防いぐための対策もとられる。

普通に感染した人には、一般的な治療(抗インフルエンザ薬)で対処。
もちろん重症化しそうな場合は、それぞれ入院など個別的に対応。

繰り返しますが、ワクチンと抗インフルエンザ薬の予防投与も「感染させない」のではなく、「感染してもごく軽く済ませて免疫を獲得させる」ことが目的となります。

「一斉休校は意味がない」と書きましたが、もちろん全く意味がないわけではなく、これから拡大する火を「一時的に」小さくしたり遅らせることはできるでしょう。
しかし、それだけ免疫のない集団が残されるわけですから、休校開けに再び感染が拡大する可能性は高い。

それがわかっているのなら良いのですが、1人も感染者を出さないことが目的と考えているのであれば、誰も感染者が確認されていない段階での一斉休校は意味がないと書いたのです。

このまま感染が拡大していけば、対応は一気に「季節性」並みに落としていかざるを得なくなり、今のアメリカのように誰もが普通に生活している状況に近づいていくはずです。。

いや、、そうなると良いのですが。。(まだまだ時間がかるか?)
橋下知事もそのように要請したようですね。舛添<ハシャギ過ぎ>厚労相に。。

流行は8週間かそれ以上続く可能性が高いので、その間、スポーツ大会もイベントも全部中止して、保育園も感染者が1人出るたびに休園にし続けることができないことには、すぐに気が付くでしょう。。
(当初の対策で全県2か月休校を想定していた県もあったようですが)

強毒性トリ「新型」の場合は、パンデミックのピークでは電車も止まったり社会機能が何割も低下して最低限の生活しかできないような状況が想定されていたわけで、それがどんな悲惨で大変な状況かがやっと理解できてきたことと思います。(私自身も頭ではわかっていたつもりでしたが…)

◆以下は、岡部先生が今回の流行が判明する前に述べた記事などの抜粋です。

◎新型インフル拡大で一般医療機関の直接診察も-感染研・岡部センター長(5月13日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090513-00000003-cbn-soci

>今後、感染が拡大して診察や投薬へのニーズが高まり、またウイルスの病原性が強く
>ないと判断されれば、一般の医療機関で直接診察する形になることも考えられるとした。

>医療機関側の対応については、病原性の強い鳥インフルエンザ(H5N1)で想定した
>ような厳重な装備で診察するなどの対応は「必要ないのではないか」とし、
>必要以上に厳重な対策を取ることに慎重な姿勢を示した。

◎検疫体制の維持に限界、国内の感染拡大防止「考えるべき」(5月11日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090511-00000002-cbn-soci

>検疫による水際対策の強化から、国内での感染拡大防止に向けた医療体制の整備
>など、「次の方策に切り替える、そういうことを十分に検討して、
>切り替える時期に来ている」と指摘。対策のシフトの「スイッチを押す」
>時期については議論中で、「遠からず」転換していくとの見方を示した。

>また、「ウイルスが国内に入り込み、検疫の強化にあまり意味がなくなった時」
>「国内体制が整ってきた時」が、対策のシフトの時期の目安になると指摘した。

◎抗インフル薬の適正使用など重要―感染研・岡部センター長(5月16日)
http://www.excite.co.jp/News/society/20090517/Cabrain_22041.html

>感染が広がった場合、すべての感染者を入院させるのではなく、
>重症患者を優先して入院させるなどの対応が必要になるとした。

>タミフルなど抗インフルエンザウイルス薬の備蓄量には限りがあり、患者数が
>さらに拡大して重症患者が発生した時に使えなくなる事態は避けるべきだと強調。

>国内でヒトからヒトへの感染が起こっている可能性が高いため、検疫など従来の
>水際対策から、国内での感染防止対策の強化へ「スイッチを切り替えるべきだろう」
>と述べた。

>対策の切り替えは、入院患者が病院に溢れてからでは遅いとし、
>「徐々に切り替えることが必要」とした。

>■感染拡大防止が最大の目標に

>軽症・重症を問わず、感染が強く疑われた全ケースで検査を実施し、
>感染が強く疑われればすべて措置入院にする。

>多くの軽症例が発生する第三段階以降(まん延期)には、病院による治療は
>重症者に集中させるほか、指定医療機関だけでなくすべての医療機関で治療に
>対応する形に切り替える。

>抗インフルエンザウイルス薬は治療への使用に集中し、予防投与は基本的に行わない。

◎新型インフル、「国内発生早期」に引き上げ-感染防止策を強化(5月16日)
http://news.cabrain.net/article/newsId/22040.html

>集会やイベントについては、「一律の自粛要請」は行わず、感染の広がりを
>考慮して開催の必要性を再検討するよう、主催者に求める。

>児童や生徒以外の患者が発生した場合にも、感染が拡大する恐れがあれば臨時休校・
>休業を求める。「確認事項」によると、休校や休業は、基本的に発生段階が回復期に
>なるまで継続するが、都道府県が疫学的情報を踏まえて1週間ごとに検討する。

自分の子だけは

2009年05月17日 | 新型インフルエンザ
(Case 1) 朝なんとなく具合が悪い。だるい。頭やノドが痛い。熱っぽいけど測ったら36.8℃。皆勤賞が大事だから学校に行かせる。学校で発熱。。

(Case 2) 土曜の夜、発熱と頭痛で急病診療所を受診する。インフルエンザ検査は陰性。「明日から修学旅行なんですけれど?」。「はぁ?無理ですよ。もし明日の朝熱が下がっていても絶対に行ってはいけませんよ」。インフルエンザや検査(偽陰性)のことや、過去の修学旅行でインフルエンザで帰された事例などを説明したが納得していない様子。

(Case 3) Case 2と同様。インフルエンザ検査は陰性だが典型的なインフルエンザ。春休み最終日「明日帰らないと始業式に間に合わない。新幹線の切符は買ってある」。だっから~「こんな熱のある状態で新幹線に乗るなんて絶対ダメですよ。インフルエンザは出校停止になる隔離しなくてはいけない病気なのに、新幹線に乗れば乗客みんなに移して回ることになりますよ」。。「あっ、下の子の入学式なんです」。。だっから~。(-_-)

人からうつされる事には過剰なまでに神経質になるくせに、学校、部活、行事、仕事を優先してちょっとぐらい具合悪くても休まない、まだ治っていないのに無理をさせようとする。
これがこの国の現実。。そこに「新型」騒ぎ。

これからは新型も季節性もその他の高熱が出るウイルスも、混在して区別がつかなくなりますから(少なくとも受診して検査するまでは)、新型だけ分けて考えるのは無意味になってきます。

一番大事なのは、新型であれ何であれ、
「具合が悪そうだったら熱がなくても休む」

新型だけおそれて、その他の「具合が悪い」は休まず登校するなどという考えはナンセンス。

もう一つ。これはほとんど守られないだろうと思いますが、
「具合が悪そうな時に、慌ててすぐに医療機関を受診しない」

特に夜間。一晩様子を見てからでも全然遅くはない。
「発熱外来」や救急病院はあっという間にパンクします。

<ボストンでの冷静な対応例>

臨時 vol 111 「新型インフルエンザ―ローカルとグローバルな視点から」
医療ガバナンス学会 (2009年5月17日 10:21)
 細田満和子(ハーバード公衆衛生大学院国際保健学部リサーチ・フェロー)
http://medg.jp/mt/2009/05/-vol-111.html

(以下引用、本文途中より)
 アメリカでは新型インフルエンザの新患数は増えているものの、致死的ではな
いmild diseaseと考えられるようになり、最も患者数の多いテキサスでは一時
800校以上の学校が閉鎖されましたが、マサチューセッツ州教育委員会からは、
症状のある生徒は自宅待機にするが学校閉鎖はしないという方針が、5月5日(火
曜日)に出されました。
 
 そのような中、娘の行っている学校の隣の小学校では、5人が新型インフルエ
ンザと診断され、風邪様の症状で20人が欠席しているという報告が、5月11日
(月曜日)に当局からありました。また、何人かの生徒に関しては、親が罹患を
心配して学校に行かせないでいるということでした。この学校の全校生徒は670
人ですが、前の週の8日(金曜日)と11日(月曜日)には90人の生徒が休みまし
たが、12日(火曜日)には70人に減ったということでした。

 二人のお嬢さんたちをその学校に通わせている友人がいるので、心配して電子
メイルを出したら、確かに新型インフルエンザに罹った子がいることは学校から
お知らせがあったけれど、彼女は子どもたちを普通に通わせているということで
した。学校閉鎖をしないことが州の方針なので、もし罹患していたら学校には来
てはいけないけれど、学校に行かせるか、あるいは予防のために行かせないかは、
親の判断にゆだねられている訳です。ちょうどこの時期3年生から8年生まで、
MCASという全州統一試験があるのですが、それも変わりなく行われているという
ことでした。(引用終わり)

国内発生早期ではない

2009年05月17日 | 新型インフルエンザ
非現実的なマニュアルの想定を「すっ飛ばして」コミュニティーでのアウトブレイクになりつつあるようで、発熱外来だのドライブスルーだの余計なことをしないで済みそうで、ある意味ほっとしています。
(↑不謹慎とのそしりは免れないかもしれませんが、現実はそうなんだから仕方がない)
このケースではたまたま見つかったようなので、多分調べればどんどん出てくるでしょう。

既に地理的にも時間的にも、誰がどこから感染したのか全然わからない状況にありますから、推測ですが2週間くらいは経っているのではないかと思われます。
だとすると、京阪神だけでなくて、全国どこでも可能性としてはあり得る。八戸でも。
もちろん別ルートも含めて。
何のリスクもないA型を全部PCRに回さなければならなくなる? 不可能でしょう。

今晩急病診療所当番でしたが、もしA型陽性になっても説明に困るだけなので「検査しない」ことに。
検査したのは1人だけ。ABいずれも陰性。(もちろん陰性だから否定はできないのはご存知の通り)
海外渡航とか接触歴とか、そういうのが意味がなくなってきてます。
報道でもいずれも一般の医療機関を普通に受診して検査してから発見されてますから。

市内全部休校なんて意味ないですよ。休校あけに1人発生したらまた1週間休むつもり?

>一方、厚労省は16日、国内感染が確認されたことを受け、
>新型インフルの国内への侵入を防ぐため強化している検疫態勢を今後、
>縮小する考えを明らかにした。
>同省担当者は「直ちにやめるわけではないが、国内感染の拡大の状況に
>応じて順次縮小を進め、国内対策に重点を置いていく」と話した。

いままで拘束されてきた高校生は「何だったんだよ」と言いたいでしょうね。

新型インフルエンザ、変わりつつある対応

2009年05月15日 | 新型インフルエンザ
この1週間で、政府、専門家、WHOなどから現状や今後についてのデータや対応の変化を示唆する発言が相次いで出されています。専門的データは次にまとめたいと思いますが、目についたニュースから。。

【新型インフル】「帰ってくるな」「謝れ」…大阪・寝屋川市や学校に中傷殺到
http://sankei.jp.msn.com/life/body/090514/bdy0905142144008-n1.htm

>仙台検疫所長などの経歴を持つ岩崎恵美子仙台市副市長は
>「差別や偏見が繰り返されるようなことがあってはならない。
>停留や隔離を解かれた人から、感染が広がることは全くない。
>普通に受け入れればいいだけのこと」と話している。
>その上で、「弱毒性であることを考えれば、国は停留や隔離などの措置を、
>もっと柔軟にすべきではないか」とも指摘している。

#岩崎先生、副市長になられたんですね。ここでも「柔軟な対応」に触れられてます。一応10日から7日に短縮にはなりましたが。。

新型インフル:休校の範囲「市町村と周辺」 政府方針
http://mainichi.jp/select/science/swineinfluenza/news/20090515k0000m010162000c.html

>今回の新型インフルエンザは弱毒性とみられるため、
>休校の範囲は都道府県の判断でその市町村や近隣にとどめる。

#青森県も「県内全校休校」の方針だったようですが、これでやっと見直されることでしょう。でも、これでもまだ過剰だと思う。自校生徒が感染、あるいは二次感染があってからでも遅くはないが(というより、誰も感染してないのに休校にする意味がわからない)、1週間はきっちり休校すること(NYの高校であっという間に鎮火した対応を見ても)。まあ、毎年のインフルエンザでもこれをやっていれば確実に小規模化できるんですけどね。。このレベルの「新型」でやって「季節性」でやらない意味がわからない。それに来シーズンからは「新型」が「季節性」になっていくんだから。。

新型インフル:修学旅行中止に冷静な対応求める 文科省
http://mainichi.jp/life/today/news/20090515k0000m040083000c.html

>修学旅行を巡っては、徳島県教委が今月9日、国内を含めた自粛を
>県立学校に要請。これを受けて、県立高校と特別支援学校8校が
>延期を決めたほか、徳島市の市立小学校31校も5~6月に
>予定していた近畿地方への修学旅行を中止した。

#まったく子どもたちにとって可哀想な話です。教育委員会を恨むしかないでしょう。上記の寝屋川の「帰ってくるな」とほとんど同じレベルですね。

タクシー全面禁煙のアンケート実施中

2009年05月14日 | 禁煙・防煙
青森県内のタクシー全面禁煙化についてのアンケートを実施しています。
オンラインで簡単に投票できますので、賛成・反対に関わらず、ご協力下さいますようお願いします。
http://ameblo.jp/aomori-aa/entry-10259893697.html
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上記ページに掲載した参考資料(全国のタクシー全面禁煙化実施状況、WHOタバコ規制枠組み条約、健康増進法の概要)や、できれば関連ページ(タクシー全面禁煙化要請)にも目を通していただければ幸いです。

「今の状況は政府が招いたパニック」

2009年05月12日 | 新型インフルエンザ
新型インフルエンザ「今の状況は政府が招いたパニック」- 厚労省検疫官・木村盛世氏に聞く◆Vol.9
「大本営発表」を繰り返す厚労省、医療者からの正しい情報発信が重要
http://www.m3.com/iryoIshin/article/97613/?pageFrom=m3.com

#現役の厚生労働省検疫官(東京空港検疫所支所・検疫医療専門職)で世界の状況を知る専門家の貴重な発言です。
#まさにこの方のいう通りだと思いますが、いつになったらこの国は今の異常な状況を「間違いだった」と認めて修正することができるのか。。

>歴史上、新型インフルエンザで封じ込め対策が有効だった例はありません。
>WHOは検疫、国境封鎖には意味がないと以前から指摘しており、
>現在、検疫を実施しているのは日本などごく一部の国です。

>幸い、今回の新型インフルエンザは弱毒性です。にもかかわらず、政府は
>「日本で一人でも、流行性感冒の患者を発生させない」という姿勢なのですから、
>不可能なことを求めているのであり、狂気の沙汰としか思えません。
>インフルエンザ対策では、「いかに集団として免疫を獲得するか」を目指すことが必要です。
>その間、健康被害の発生を最小限に抑える、つまり感染者の数を抑え、
>かつ重症者を出さないかという姿勢が重要。
>「一人も感染者を出さない」のは無理なことなのです。

#ここが重要です。
#新型インフルエンザ対策とは、実は「いかに重症例を少なくしながら、ゆっくりと国民に罹らせるか」という問題であって、「誰も感染させないか」などということは非現実的(ナンセンス)なんです。
#ということを、この国の政府やマスコミは、国民にきちんと伝えようとしていない。

>私は、ハンセン病とHIV感染、日本は過去二度も誤った感染症対策をしてきたと
>思っています。今回が三度目になる懸念を持っています。

>今の厚労省の発表は、太平洋戦争時の「大本営発表」と同じ。

>医療者には知的レベルが高い人が多いですから、WHOやCDCなど海外の
>しかるべき機関から、正しい情報を直接入手していただきたいと思います。
>そして、マスコミ、国民に正しい知識を持ってもらうよう、多くの医療者から
>情報発信をしていけば、今の状況が改善するのではないでしょうか。