踊る小児科医のblog

青森県八戸市 くば小児科クリニック 感染症 予防接種 禁煙 核燃・原発

福島県の甲状腺がん(201612)13市と3地域郡部別比較(暫定版)「地域差無し」とは言えない

2016年12月31日 | 東日本大震災・原発事故
この表の数字(マップ化する予定ですが作業未)は、1)本格検査(2巡目)についてはまだ7〜8割の段階であることと、2)市部の個々の数字については規模によって誤差が大きくなるので、この比較だけで何か言えるわけではないことを最初におことわりしておきます。
(1)については、特に会津地域の二次検診がまだ進んでいないものと思われます。)



地域別の比較の作業を以前一度試みてみたのですが、ポリシーの一貫性がなく不首尾に終わってました。
今回は、わかりやすさと継続性を重視して、福島県内の13市と「浜通り・中通り・会津」郡部の16地域に分けて比較してみることにしました。
(浜通りの中には差があることも承知していますが、人口規模を考えると個別に比較することは難しいと思いますので)

受診者数は、市部では相馬市の4,749人から郡山市の48,034人まで幅がありますが、13市合計で217,865人。
浜通りの郡部は10,797人、中通りの郡部は29,892人、会津の郡部は11,900人でした。

この表の数字は、一次検診受診者数あたりの甲状腺がん「疑い+確定」患者数を「10万人あたり」で表したものであり、前のentryで行ったような操作(先行検査ではスクリーニング効果10倍と仮定して1/10、本格検査では検査間隔を2.5年として1/2.5)を行っていない段階の、単純な「発見率(有病率)」であることにも留意してください。

(この仮定の元で増えずに一定の割合で検出されているとすると、本格検査②は先行検査①の1/4のレベルにならなくてはいけないのですが、実際にはほぼ同じレベルに達しようとしています)

マップにしてみるともう少し何か言えるかもしれませんが(…あるいは先走った誤解を助長することになるのかもしれませんが)、少なくとも「福島県内で地域差はみられない」という委員会の中間とりまとめの結論は、否定されつつあると言えそうです。

福島県の甲状腺がん 二巡目で確定44+疑い24=68人 有病率25.1→推定発症率10.0人/10万人(201612)

2016年12月28日 | 東日本大震災・原発事故
これまでの予想より上方修正して、単純計算でも先行検査に迫る有病率になることが予測されるようになりました。

● 先行検査(1巡目)
<2016年6月追補版>
確定101+疑い14=115人
有病率 38.3人/10万人
推定発症率 スクリーニング効果10倍として 3.83人/10万人・年

● 本格検査(2巡目)
<2016年9月>
確定34+疑い25=59人
有病率 21.8人/10万人
推定発症率 検査間隔2.5年として 8.7人/10万人・年

<2016年12月> 12/27発表
確定44+疑い24=68人(+9人)
有病率 25.1人/10万人
推定発症率 10.0人/10万人・年

グラフは以下の通りです。


ここで、12月のデータを「一次受診者の判定率と二次対象者の受診率が100%」として計算すると、
有病率 33.2人/10万人
という数字がはじき出されます。
あれほど「スクリーニング効果だから何の心配もない」と訴え続けてきた先行検査の「38.3人」に近い数字が、たった2〜2.5年で検出されようとしているわけです。

なお、依然として多くの方は先行検査と本格検査の患者数を累積して○人(今回は183人)になったと訴えているように思えますが、このグラフと上のグラフの違いをご理解ください。


累積患者数は10年20年と続けていけば増えていくのは必然で、その数字に意味はありません。