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福島県の甲状腺がん検診結果をどう読むか 発生率1~2人/10万人はベラルーシと同じ(某紙掲載原稿)

2013年06月11日 | 東日本大震災・原発事故
 今年2月に「福島県で甲状腺がん確定3人、疑い7人」という報道がありネット上でも大きな議論になったが、6月に入って「2年間で確定12人、疑い15人」という新たな数字が公表され波紋を呼んでいる。

 福島県の検討委員会では、チェルノブイリとの比較や年齢の高さなどから、原発事故の影響ではなく大規模な検診により早期に発見された「スクリーニング効果」であるとの見解を崩していない。本当にそれで何の疑問もないのか、数字を元にして検討してみたい。


(表1)福島県の県民健康管理調査「甲状腺検査」結果

 まず、この疑い例の解釈について、感度と特異度を変えてシミュレーションしてみたところ、穿刺吸引細胞診の特異度は十分高く(偽陽性は少ない)、感度は少し劣る(偽陰性あり)と考えると、疑い例のほとんどは甲状腺がんだと推計することができる。実際に、11年度の確定例は3例から7例に増えており、経過観察中の15例の中からも今後確定例が出て来るものと予想される。

 初年度と2年目の有病率を比べると、疑い例を含めて10万人あたり27人から12人に減少しているが、二次検診受診者からの検出率は約6%で同程度であり、受診率が上がれば有病率も上昇する可能性が高い。初年度は浪江町などの避難地域が、2年目は福島市などの中程度汚染地域が対象となっているが、汚染レベルとの関連は明らかではない。従来の常識では、原発事故から1年以内に増加してくることは考えにくいが、3年目の低汚染地域の結果を見てみないとまだ安心できない。

「従来の100万人に1~2人の発生率と比べると…」という議論も散見されるが、発生率と有病率を区別して考える必要がある。有病期間を10年と仮定して、スクリーニング効果により10年分まとめて発見されたと考えると、発生率は10万人あたり1~2人程度となり、従来の約10倍という推計になる。この数字は、ベラルーシで90年代初頭に甲状腺がんが急増していた時期と同じレベルだということに注意が必要だ。


(図1)甲状腺癌のベラルーシにおける発見率

 一方で、弘前・甲府・長崎3市における一般小児の超音波検査でも福島と同程度の頻度で嚢胞や結節が検出されており、検討委員会では「福島は安全だ」ということの根拠としているが、この結果と甲状腺がんの発見状況を矛盾なく説明することは難しい。

 いずれにせよ、二巡目以降の傾向を見てみないと判断はできない。現時点で、甲状腺がんの予想外に多い発見状況に対して、放射線被曝が原因だと大騒ぎすることには賛成できないが、この結果を受けても「チェルノブイリは4年目から増加したから…」「チェルノブイリとは被曝量も違うしヨード環境も違うから…」原発事故と関係ないと断定することの方が非科学的だと言わざるを得ない。

 問題の根源には「避難の必要なし」として適切な情報提供をせずに被曝回避策を怠った行政や医学者が、舌の根も乾かぬうちに「原発事故とは関係ない」と言っても何の信頼も得られないという現実がある。

 チェルノブイリでは甲状腺がん以外のがんや他の疾病には影響がなかったことになっているが、ヤブロコフ博士の『チェルノブイリ被害の全貌』によれば、無視できない健康影響が現在も続いていることは間違いなさそうだ。日本でも同じことが起きるというわけではないが、もし何らかの変化が生じたとしても、現在の態勢では検知することは難しい。

「脱原発を実現させたい運動家が福島の子どもたちに健康被害が出ることを願って騒いでいる」などという言説が医師の間からも出ていることを憂慮している。結果的に何の健康影響も無ければそれに越したことはないが、冷静に考えれば、放出された放射能の総量と被曝人口を考えると、全く何も無いという前提に立つことはあり得ない。甲状腺検診もそのような観点から実施されているはずだ。

 もし二巡目以降に増加傾向が明らかになったと仮定して現時点に立ち戻って考えてみても、被曝を避ける一般的な注意以外には、やはり検診を進めていくことしか無さそうだ。しかし、積極的に避難を勧める時期は過ぎたとしても、除染・帰還を推進する政府に対して、子どもを持つ親には予防原則に従って慎重な立場を崩さないでほしいと強く願う。

(青森県保険医協会新聞の「核燃リレートーク」に掲載予定)

「2025年に喫煙率ゼロ」は日本でも達成可能(その2)未成年2019年、『最後の喫煙者』は青森県の女性か

2013年06月06日 | 禁煙・防煙
(その1)より続く


一方、都道府県別の喫煙率では、青森県は男性1位、女性2位、総合2位で、平均寿命は連続して男女とも最下位という最低の状況にあります。


これまでと同様に、2004年を起点にして計算してみます。(結果はあとでまとめて表にします)


未成年の喫煙率は、青森県の調査で2007年に比べて、


2011年には激減しています。特に高3は男女とも4年で1/3程度まで低下している。


未成年の喫煙率の全国調査でも、2000年代以降は直線的に低下してきている。


以上をまとめて表にすると、
「喫煙率ゼロ」推定年は、
未成年2019年、医師2022年、
成人男性:2025年(厚労省)~2031年(JT)、
成人女性:2024年(厚労省)~2033年(JT)
という計算結果となります。

これは最初に述べたように、そうなるという予測ではなく、仮定した計算上の値であり、今後の規制政策を考える上での材料です。

ここで、政府目標の「2022年に12%」をあてはめて計算してみると、どの予測よりも先の2041年というとんでもない数字になる。

この目標値が自然低下よりも高いということは当時から指摘し批判していたのだが、JTが形だけの抵抗で矛を収めたのは「何もしない」よりも高い有名無実の目標だということを知っていたからに違いない。


同様に、都道府県別喫煙率で調べると、
全国最低の島根県では2023-24年、
全国平均で2027-2030年、

青森と喫煙率トップ争いを演じている “ライバル” 北海道でも、2024-2026年で全国平均を下回る一方で、
青森県では2029-2038年という数字がはじき出された。

昔々、筒井康隆の『最後の喫煙者』という小説があったが、このまま行政の後ろ向きの姿勢が続けば、『最後の喫煙者』が青森県の女性になる蓋然性は高い。


以上は直線的低下という仮定の下に考えた結果だが、
喫煙率の増減には、
新たな喫煙者:①未成年、②成人
喫煙を中止する人:③禁煙、④死亡
という4つのファクターがあり、


今後、①未成年の喫煙者は激減し、②成人の喫煙開始者は元々少ない上に減少、
③禁煙する人と④亡くなる人は、今後増加する一方だろう。
特に団塊世代は未成年の2倍くらい人口が多く、今後残念ながら「喫煙者を先駆けとする団塊世代の大量死時代」が到来することは避けられない。
矢印を全部足すと、喫煙者は激減する一方であり、低下速度が鈍るよりもむしろ、更に加速することの方が期待できる。

ただし、男性医師の喫煙率でわかるように、何もしなければ減少速度は鈍化してしまう可能性がある。
(最後には何を言ってもやめようとしない、どうしようもない質の悪い喫煙医師が残っているのが現状。)


喫煙率減少速度の鈍化を防ぎ、更に加速させて、早期に喫煙率ゼロを実現するためには、これまでのような「禁煙・分煙・防煙」という三原則では駄目で、


特に「分煙」が受動喫煙防止対策として不適切であるということはWHOも米国政府も、日本政府ですら公式に認めています。
禁煙と防煙の重要性が低下した訳ではないが、


今後「タバコのない青森」を実現させるためには、タバコ税大幅増税、屋内全面禁煙の法制化、広告禁止・販売法の三条件がクリティカルに重要となる。
いずれもタバコ規制枠組み条約(FCTC)に定められている政策を実現するか否か、という簡単な問題。

今年の禁煙デーのテーマは広告・スポンサー活動禁止についてであり、シンポジウムでは屋内全面禁煙について議論していただき、参加者にも十分にご理解いただいたはず。

現実に、ニュージーランドでは「2025年に喫煙率ゼロ」を目標にして、広告・販売規制の強化に乗り出している。
国際条約「FCTC」を遵守して国民の命を守ろうとする国と、国際条約を無視して国民の命をないがしろにする国。
青森県はその中でも、最も規制の緩い「喫煙天国」です。


奈良県の広陵町では、町長の一声によりたったの1年で全職員の喫煙率ゼロが達成できている。
喫煙率ゼロは夢物語ではなく、現実にいくらでも達成できる。
「できっこない、遠い将来の話」という先入観から意識転換できれば、決して難しい話ではないということが理解できるはず。


「税収よりも健康や命が大切。タバコは百害あって一利なし」という言葉は、深浦町の故・平沢町長の言葉と聴き間違うほど全く同じ。

「2025年に喫煙率ゼロ」は日本でも達成可能(その1)医師2022年、成人2025-34年、政府目標12%はまやかし

2013年06月06日 | 禁煙・防煙
6月2日の「世界禁煙デー記念フォーラム in 弘前」で発表した内容のうち、前半はこれまでの情勢と活動についてだったので省略し、後半の「喫煙率ゼロへの展望」の概要を簡単に掲載しておきます。 →PDF

まずは医師の喫煙率から。調査は日本医師会。


2012年で男性医師の12%以上がまだ喫煙しているというのも噴飯ものですが、仮にこのような直線を引いてみたら、2022年に喫煙率ゼロになるという計算結果。


同じように女性医師は2021年で喫煙率ゼロ。どちらもこれでも遅すぎるとは思うが。


計算方法はごく簡単なもので、説明は省略します。
この推計方法について、
・こんな単純な直線モデルでは科学的ではない
・起算の年を恣意的に選ぶことで結果は変わってくる
という批判があるかもしれませんが、

・これは科学的に予測して当たったかどうかを立証するための計算ではなく、仮にこうしてみたらこうだという結果を元に、今後の対策などを考えるための材料
・起算年は恣意的に選ぶことが重要。そのためには年代別の推移などを自ら見て判断する。これは十分に批判に耐え得る根拠と言える。


成人の喫煙率は厚労省とJTの調査があります。
厚労省の調査結果では、男性が1990年代前半にいったん上昇し、女性はほとんど横ばいのように見えるが、


年代別にみてみると明らかな特徴がわかる。
男性は、90年代前半「バブル崩壊・失われた10年」と言われた時代に、若者の喫煙率が急上昇。
(この時、未成年の妊娠中絶や性感染症、自殺率などの指標が同時に悪化した。その世代が今の親の世代。)
2000年代半ばにかけて、20代の喫煙率が激減。


女性はもっと明らか。
20代女性が急上昇し、2000年代半ばから20代、次いで30代も急降下している。


以上を元に、起算年を「恣意的に」男性は2003年、女性は2004年に選ぶと、男性は2025年に、あんなに横ばいに見えた女性も2024年には喫煙率ゼロになるという計算結果。

この数字は、ほとんどの人の頭にはなかったはず。
(実を言うと私自身、結構驚いた)
喫煙率ゼロなんて出来たとしても遠い将来の話で、この世の中からタバコをなくすなんてお題目ばかりで実際には非常に困難と思わされていた。。


JTの調査は1960年代から続けられており、男性は一貫して低下、女性はゆっくり低下しているようだがはっきりしない。


これを性別、年代別にしてみると、男性では同様に20代が2000年代半ばから激減。


女性は説明の必要のないほどの顕著な変化。
若い女性がタバコを吸うなんて時代は終わった。
(実はこのグラフ、2000年代半ば以降の部分は今回初めて確認し、私自身も驚いた。JTは当然知っていて、ものすごい危機感を抱いているはず。)

要するに、男女とも若者はもう吸わない。年寄りは禁煙するか喫煙者から先に亡くなっているので喫煙率は低い。
その間の30-50代も低下してきてはいるが、団子状に高止まりしている。


同様に計算して、喫煙率ゼロ推定年は男性2031年、女性2033-34年。
厚労省とJTの調査では、一貫してJTの方が喫煙率は高め、低下率も少なめに出る。
理由は知りません。調査対象の違いだろうとは思いますが。。

(その2)に続く

福島県の小児甲状腺がん:7~15人(確定~疑い)/10万人:2012年は2011年より減少傾向か:判断は数年後

2013年06月06日 | 東日本大震災・原発事故
昨日の続きです。
資料が掲載されたのでそちらの数字で計算し直してみました。

福島県 第11回「県民健康管理調査」検討委員会(平成25年6月5日開催) 
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=24809#10kentouiinkai

概要(数字が間違っていたので訂正しました)

2011年度 40764 細胞診82 確定7 疑い4 合計11 良性1
2012年度 134735 細胞診63 確定5 疑い11 合計16
合計 175499 細胞診145 確定12 疑い15 合計27

頻度(受診者10万人あたり)

2011年度 7.9~26.2人(2月発表の時点)
2011年度 17.2~27.0人
2012年度 3.7~11.9人
合計 6.8~15.4人



端数が少し変化しているだけで、昨日書いた計算とほぼ同じです。
4月に書いた「1万人あたり1~3人程度のレンジ」と比べると、2011年度は確定診断が増えたが全体では3人未満、2012年度はいずれも2011年度を下回っている。
(2012年度は二次検査の受診率が低いので今後もっと増える可能性が高い)
全体の受診数が増えたので、平均値も低下。

これが多発なのか、潜在的ながんをスクリーニングでまとめて早期発見しただけなのか、どちらにしても不可解。これは4月に書いた通りです。

→福島県外3市と福島県内の甲状腺検査結果の比較 考えられる推論2つはいずれも不可解 2013年04月03日
 http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/46d539e4482351e8ee38cd08c4f56e8a

判断は結局のところわかりません。
昨日の記者会見でも「今までにないのもと比較しろと言われても言えない」と答えていたように、今後の推移、特に2巡目の検査で今回A判定だった人の中から甲状腺がんが増えてくるかどうかをみないと何とも言えない。





(追記)

福島の小児甲状腺検査:現時点では被曝との因果関係や多発を主張する根拠は乏しい。しかし、最初から被曝の影響ではないバックグラウンド値という前提はもっと非科学的。結局、検査結果の推移を見ていくしかない。これが当たり前の考え方。

元々、一人ひとりについて因果関係を証明することは出来ない。しかし、因果関係の有無に関わらず子どもの健康に何かあれば親が自責の念に苦しむことは目に見えていた。だから避難を訴えた。これは事故直後の話。

いま甲状腺がんが発見された子どもの親は、被曝とは関係ない(明らかな因果関係は認められない)と説明されて、そう思うことで自分を納得させようとしているはず。とは言っても、頭で納得しても、ときどき溢れてくる感情まで抑えるのは難しいだろう。

一つの仮説として、1年目、2年目、3年目と線量の低い地域に移るにつれ、頻度が低下する傾向が見えてくるとしたら、2巡目以降に新たな甲状腺がん発生が増えてくる可能性がある。これが否定できるなら良いのだが、それを知るためには何年も待たなければいけない。

(しかし、タバコとのリスク比較の間違いを指摘した時もそうだったし、瓦礫問題以来、この甲状腺検査騒ぎも、危険・安全・中立いずれの人にとっても有害無益になっている。なまじfollowerや信奉者が多いだけに厄介。)

(更に追記)

福島の小児甲状腺がん:有病率「1万人あたり1~3人程度のレンジ」を注目しながら、というのは、この福島の調査から今後の推移をチェックするための目安という意味で、普通に考えれば高すぎる数字。

有病期間10年とすると有病率「1~3人/1万人(10~30人/10万人)」は発生率「1~3人/10万人」に相当する。これはベラルーシの1990年代前半の発生率。それが福島の今だというのは理解不能。

忌野清志郎『メルトダウン』のオリジナルの歌詞を読み直す

2013年06月06日 | 東日本大震災・原発事故
忌野清志郎&2・3's「メルト・ダウン」
http://www.youtube.com/watch?v=AWWrPboyMzs

1993年発表の「Music From POWER HOUSE」収録の問題曲。
このCDにはもう1曲「善良な市民」という面白い曲も収録されている。

問題の「メルトダウン」だが、各種歌詞サイトをみると、オリジナルの歌詞と細かいところが随分違っている。
神様仏様のくだりはほとんど省略されている上に、オリジナルにないキリスト様なんてのが入っていたり。。
意図的な改変や省略か、あるいは本人が改定した可能性も無きにしもあらずだが、歴史的に非常に価値のある曲となってしまったので、各種歌詞サイトが訂正するまで、ここに記録として残しておく。

※ POWER HOUSEはpower stationと同じく「発電所」のこと

『メルトダウン』

オレの脳が メルトダウン 大脳も小脳も ダウン
                    ダウン
                    ダウン
                    ダウン
     Ah  メルトダウン  メルトダウン

      恐ろしい事になってしまった

   もう だめだ 助けられない 誰も

     Ah  メルトダウン
         メルトダウン
         メルトダウン
         メルトダウン

    取り返しのつかない事が 起こってしまった

   もう だめだ 助かりゃしない もう遅い

               神様
               仏様
             阿弥陀様
              先生様
             お医者様
             ご近所様
             お師匠様
     これは これは どなた様
            MATT様
             お代官様
             お地蔵様
             お疲れ様
              お月様
        RED・KING様

     Ah  メルトダウン
         メルトダウン
            ダウン
    科学の力を 信じていたのに

             メルトダウン
             メルトダウン
                ダウン
                ダウン
                ダウン
                ダウン
                ダウン



『善良な市民』

泥棒が 憲法改正の論議をしてる
コソ泥が 選挙改革制度で揉めてる
でも 善良な市民は 参加させてもらえず
また 間違った人を選ぶ

泥棒が 建設会社に 饅頭を貰ってる
金屏風の裏で ヤクザと取引してる
でも 善良な市民は ゴールデン・ウィークに
ディズニーランドで 遊ぶしかない

泥棒が 国際貢献をしたがってる
大義名分を掲げ また 二枚舌を使う
でも 善良な市民は 見知らぬ土地で
弾に当たって 死んじまうだけさ

(中略)

どうせ 何処かで 死んじまうだけさ
弾に当たって 死んじまうだけさ



清志郎、タバコという1/2の確率のロシアンルーレットの弾に当たって、死んじまった。。

あの日以来、清志郎が生きていたらと何度思ったことか。。

「福島の小児甲状腺がん:確定12人、疑い15人」のニュースについて(現時点での判断)

2013年06月05日 | 東日本大震災・原発事故
現在開催されている委員会の資料がまだ掲載されていないので、ニュースの数字だけで比較してみます。

福島県 第11回「県民健康管理調査」検討委員会(平成25年6月5日開催) 
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=24809#10kentouiinkai

2011年度
(今年2月時点の情報) 対象 38114人 穿刺細胞診76人
  確定3人 疑い7人 合計10人 …(A)
(今回発表) 対象約4万人 二次検査205人
  確定7人 疑い4人 合計11人 …(B)
  (その他に手術施行して良性だった例が1人)
2012年度 対象約13万4千人 二次検査935人
  確定5人 疑い11人 合計16人 …(C)
合計 対象約17万4千人 二次検査1140人
  確定12人 疑い15人 合計27人 …(D)

甲状腺がん有病率
(A)2011年度:3~10人/38114人=0.79~2.62人/1万人(今年2月時点)
(B)2011年度:7~11人/約4万人=1.75~2.75人/1万人
(C)2012年度:5~16人/約13万4千人=0.37~1.19人/1万人
(D)合計:12~27人/約17万4千人=0.69~1.55人/1万人

確定例は2011年度の「確定3人+疑い7人」から「確定7人+疑い4人」に増加しており、2012年度の「確定5人+疑い11人」でも確定例は今後もっと増えるはずだ。

調査対象地域の違いがあるので増減を論じるのは難しく、時間的経過による違いがもしあるとすれば2012年度の方が多くなるはずだが、逆に低くなっている。

4月の時点でブログに「甲状腺がん有病率1万人あたり1~3人程度のレンジで網を張りながら経緯を見守る必要がありそうだ」と書いたが、今回の発表はその範囲内であり、これまでの発表について何らかの新たな知見が加わったものではなく、ただ積み上がったものと考えた方が良いだろう。

→福島県外3市と福島県内の甲状腺検査結果の比較 考えられる推論2つはいずれも不可解 2013年04月03日
 http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/46d539e4482351e8ee38cd08c4f56e8a

ただし、甲状腺がん有病率「1万人あたり1~3人」程度、あるいは約17万4千人中12~27人という数字はちょっと目がくらむほどの高さで、2012年度が少なめだからと言って安心出来る材料は何もないのだが。。

(現在記者会見中)
多発かどうか、今までにないのもと比較しろと言われても言えない。