踊る小児科医のblog

青森県八戸市 くば小児科クリニック 感染症 予防接種 禁煙 核燃・原発

昭和37年(1962年)生まれの子どもの予防接種記録 種痘含む5種類 ポリオは3回 母子手帳より

2014年09月04日 | 予防接種

母子手帳が保存されていて手元にあるので、チェックしてみた。クラシカルなデザイン。


百日咳、ジフテリア、ポリオ(急性灰白髄炎)、種痘(天然痘)、BCG(結核)の5種類しかない。
DPTじゃなくDPの二種混合。破傷風はない。
麻疹、風疹もない。

ポリオは3回。(接種欄は4回まである)
この3回目だけ別のページに「生ワク」と書いたハンコが押されているので、2回目までは不活化ワクチンだったのかも。3回目の昭和39年(1964年)が生ワクチン定期接種開始の年。

・ポリオ 1960年 不活化ワクチン勧奨接種
     1961年 生ワクチン緊急投与
     1964年 生ワクチン定期接種   

種痘があって、BCGは皮内接種だというのも歴史を感じさせる。4カ月でBCGを接種している。
赤ちゃんの結核検診で全員に(?)間接撮影をしている。

・BCGが経皮接種(管針法)になったのは1967年
・天然痘が根絶されて種痘が中止になったのは1976年

接種欄には腸チフス・パラチフスなんてのもあるが、もちろん接種してない。(当時の制度がよくわからないが)

ちなみに、

・麻疹 1966年 不活化・生ワクチン併用(任意)
    1969年 弱毒生ワクチン単独接種(任意)
    1978年 定期接種開始

・風疹 1977年 定期接種開始(中学生女子)

2020年までの風疹排除を目標に設定 厚労省・風疹小委

2014年01月24日 | 予防接種
#やっと風疹の「排除」という目標が決まったようですが、本来なら麻疹と一緒でなければならなかった。しかも、まだ具体的な方策が打ち出されていないよう。麻疹のような中高生へのキャッチアップではなく、成人への無料接種が絶対的に必要なのだが。(というかそれしか方策はない)

20年までの風疹排除を目標に設定 ― 厚労省・風疹小委 ―

 厚生労働省の「風しんに関する小委員会」(委員長=五十嵐隆・国立成育医療研究センター総長)は1月22日、「風しんに関する特定感染症予防指針(案)」の取りまとめに向けて議論し、委員長一任とすることで了承した。

 同指針案は厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の予防接種基本方針部会と同感染症部会にされた後、パブリックコメント募集などを経て3月に告示され、4月から適用される予定となっている。

 同日の会合では、同指針の目標設定が論点になった。当初の事務局案では「可能な限り早期に風しんの排除を達成するとともに、先天性風しん症候群(CRS)の発生をなくす」とされていたが、委員から具体的な期限を設定すべきとの意見が相次いだ。議論の結果、2012年の世界保健総会で世界6地域のうち5地域において20年までの風疹の排除達成が目標に掲げられていることや、20年の東京オリンピックで国外から多くの来訪者を迎えることを踏まえ、「早期にCRSをなくし、20年までに風しんを排除する」を委員会のコンセンサスとすることになった。

 CRS児への医療・保育などの提供については独立した項目を設けた。小森貴委員(日本医師会常任理事)から「事務局案では情報提供に終始しているので、手厚い支援制度を構築することを明記すべき」と指摘されたことを受け、五十嵐委員長は「どこかに書き加える方向で検討する」と引き取った。

子宮頸がん予防ワクチン積極的勧奨の差し控えの意味 接種との因果関係とワクチン成分との因果関係は違う

2013年08月07日 | 予防接種
 すでに報道などえ伝えられている通り、4月に定期接種になったばかりの子宮頸がん予防HPVワクチンが、6月から「積極的勧奨を差し控える」ことになっています。接種自体は中止になったわけではなく、非常にわかりにくい状態が続いています。

■「複合性局所疼痛症候群」とHPVワクチンの関係は? 今後の見込みは?

 問題となった複合性局所疼痛症候群(CRPS)自体が、原因も病態も不明の疾患なのですが、予防接種や外傷などの誘因がある場合以外に、明らかな先行損傷のない場合も多いようです。海外ではHPVワクチン以外にも様々なワクチン後の報告がありますが、いずれも稀で特定のワクチンとの因果関係は認められていないとのことです。

 ここで注意しなくてはいけないのは、接種との因果関係と、ワクチン成分との因果関係は必ずしも同じではないということです。 今回問題となったCRPSのケースでは接種との因果関係の可能性が想定されていますが、それが「HPVワクチンの成分が原因」という結論に直接結びつくわけではありません。

 海外ではHPVワクチン以外でもほとんどのワクチンが筋肉内注射(筋注)ですが、日本ではHPVワクチンだけが筋注で他は皮下注です。ここから先は推論になりますが、CRPSが筋肉や神経の微細な損傷と関係があるとすると、日本だけHPVワクチンが問題になっていることの説明はつくかもしれません。個人的には、筋注の接種手技(部位や局所抵抗、注入速度など)に問題があるのではないかと考えています。

 世界保健機構(WHO)でも、世界で2億本接種されたHPVワクチンの安全性について「現在までにCRPSの原因としてHPVワクチンを疑う理由はほとんどない」と総括していることから、日本だけが接種を中止する可能性は少ないと考えられます。

■ すぐに接種すべきか、待つべきか? 接種が途中までの場合は?

 現時点で、いつ頃までに判断が決まるのか情報はありませんが、接種再開か「差し控え」が続くかを決定する時期は年内の比較的早い時期になると推測しています。もし接種再開になったときには、接種が途中までで接種間隔があいてしまった場合でも、残りの接種回数を定期接種で実施できるよう配慮されるはずだと思います。

 HPVワクチンは、他の全ての予防接種とは異なり、今すぐに子どもが感染して発症し重症化するのを防ぐワクチンではないため、接種を急ぐ必要はありませんが、当院では以上のような考え方を理解していただいた上で、希望する方への接種は継続しております。ただし、国の結論が様々な要因に左右される可能性は否定できません。

風疹の流行はピークを過ぎたが… 国は「特別な対応は取らず」 個人防衛の徹底を ワクチン流通は回復

2013年08月07日 | 予防接種
 首都圏や関西などで流行していた風疹はピークを過ぎましたが、これは季節的な変動であって、成人にワクチン接種を勧める運動が効を奏したからではありません。特に青森県では流行自体がほとんどみられなかったので、感染する可能性のある人が多数残っている状態が来年以降も続くことになります。

 これまでお伝えしたように、昨年から続いている流行は20~40代の男性が中心で、ほとんどの人は予防接種をしていません。対策は予防接種以外にはありません。

 予防接種の目的として「個人防衛」と「集団防衛」の2つがあります。集団防衛とは、ほとんどの人が個人防衛としてのワクチン接種で免疫を持つことにより、社会全体で流行をなくすことです。同じMRワクチンで接種している麻疹と同様に、風疹も最終的には世界中でウイルスを根絶してしまうことが可能であり、現実に南北アメリカ大陸では風疹の流行が制圧された状態にあります。そんな中で、日本のアウトブレイクは世界から汚染国・流行国と名指しで指定される事態に至っています。

 現在、23歳以下(今年大学を卒業した人と同じ世代)はMRワクチン2回接種を済ませているはずで、接種率は不十分でも今後大きな流行に至る可能性は少ないのですが、その上の世代での流行を防ぎ、先天性風疹症候群の発生をなくすためには、国の責任で幅広い世代に対し出来るだけ短期間にワクチンを接種するしかありません(集団防衛)。しかし田村厚労相は6月に「特別な対応は取らない」と明言しています。

 流行地域だけでなく、青森県内でもいくつかの自治体で風疹予防接種の助成が始まっています。階上町でも条件を限定した助成が実施されていますが、町内の医療機関限定になります。八戸市は県内でも最も消極的です。これらの接種はいずれも個人防衛が目的であって、流行をなくすことは期待できません。流行の大小はともかく、ある程度の流行が今後も数年程度続くものと考えて、家族、会社、身近な集団などの中で、できるだけ多くの人がお互いを守るために自ら接種していくしかありません。

 なお、ワクチンの流通は回復してきたので予約はいつでも可能となっています。

「風疹の流行」はいま現実に起きている危機 赤ちゃんを救うのはワクチン以外にはない twitterまとめ

2013年04月17日 | 予防接種
「院内報2・3月号より」MR(麻疹・風疹)ワクチンは、中1・高3に5年間実施していた3・4期が終了しました。1歳と入学前の1・2期は従来通りです。現在、首都圏の成人男性を中心に風疹の流行が拡大しており、先天性風疹症候群も増加しています。青森県には流行の波は押し寄せてませんが、それだけ感染する可能性のある人が多く残っていると言うこともできます。行政の補助がないので有料になりますが、MR(または風疹ワクチン)を2回接種していない23歳以上の世代の方には男女とも接種をお勧めします。

4月16日 twitterまとめ

風疹の流行(小解説)①今年3480人というのは全国での全患者数。6割は首都圏。インフルエンザなんかで出てくるのは定点医療機関あたりの数字で、実際には百万~千万という数であり、ケタが全く違う。
posted at 16:45:32

②流行の主体は大人の男で、会社で1人、接触者が2週間後にまた1人と感染していても、普通の人が周囲に流行を感じられないのは当然。東京で1万人に1人。内科医で数人診たかという程度。
posted at 16:45:42

③風疹 発生動向調査 http://www.nih.go.jp/niid/ja/rubella-m-111/700-idsc/2131-rubella-doko.html ←速報グラフ
posted at 16:46:18

④神戸市では1年で風疹患者89名という流行の中で、先天性風疹症候群が2名も発生している。http://www.nih.go.jp/niid/ja/rubella-m-111/rubella-iasrs/3398-pr3984.html
posted at 16:46:29

⑤風疹も麻疹と一緒に制圧・根絶を目指しているが、麻疹の目標は年間120人。風疹の数千~1万人というレベルは桁違い。先天性風疹症候群や妊娠中絶が増加するのは目に見えている。
posted at 16:48:20

⑥先天性風疹症候群患者数 2000年より 1 1 1 1 10 2 0 0 0 2 0 1 5 3+。流行が拡大した2012年で5人、それを数倍上回る2013年は3ケ月でもう3人。http://www.nih.go.jp/niid/ja/rubella-m-111/700-idsc/3158-rubella-crs-20130130.html
posted at 17:01:43

⑦流行収束の条件:1)みんな罹ってしまう、2)季節性があるので収まるのを待つ、3)ワクチン接種。1)は感受性者(罹ってないしワクチンによる抗体もない人)が莫大な人数なので1年や2年では終わらない。2)も完全には収束せずまた増える。要するに、3)のワクチン接種しかない。
posted at 17:09:08

↑無論、1)2)は先天性風疹症候群が大量に発生することになる。

23歳以上の世代は、もし風疹を1回接種していても、風疹単独ではなく麻疹・風疹(MR)ワクチンで2回目を。 風疹の予防接種、1回受ければ大丈夫?http://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/400/151620.html
posted at 17:12:37

NHKストップ風疹 @nhk_stopfushin さんをフォローしました。「クローズアップ現代」の放送を今月中に予定しているとのこと。
posted at 17:19:31

NHK NEWS WEB ストップ風疹 ~赤ちゃんを守れ~ http://www.nhk.or.jp/news/stopfushin/
posted at 17:23:35

風疹単独ワクチンは入手困難なので、もし希望されても麻疹・風疹(MR)ワクチンになります。
posted at 17:32:57

「風疹の流行なんてない」「周囲に罹った人はいない」「誇大(虚偽)報道」とか言ってる人が、どうも脱原発の人たちとオーバーラップしてるみたい。頭が痛い。だから簡単に批判されちゃうんだって。あれもこれも。
posted at 17:35:56

なぜ「放射能から子どもを守れ」と言ってる人が「風疹から赤ちゃんを守れ」に反対するのか。「政府・メディア・医者を信用するな」「ワクチンは害悪」。結局リスク比較の問題になるが、原発事故でリスク比較が権力側に都合良く利用されたために、リスク比較自体を合理的に受け止める素地が失われた。
posted at 17:58:55

同時接種「注射は2つまで・リスクは同じ」、ロタワクチンの選択

2013年02月02日 | 予防接種
 字数が少ないので結論だけ書きますが、同時接種については注射は2つまで、経口のロタウイルスワクチンと合わせて3つまでとしています。同時接種のリスクはそれぞれの単独接種と同等と判断されています。進め方はスケジュールの例をお渡ししていますので参考にして下さい。

 ロタワクチンは2種類あって効果の差はないとされているので、選択しろと言われても難しい。簡単に書くと、5つのタイプが含まれて3回だけど合計金額が少し安いロタテックをお勧めしていますが、ロタリックスは少しだけ高くつくけど2回で済んで1回の服用量も少ないという利点もあります。

(院内報2012年12月・2013年1月号より)

ロタウイルスワクチン(ロタリックス・ロタテック)の接種を開始します 11月から 料金・回数・接種時期

2012年11月07日 | 予防接種
A) ロタリックス(1価) 1.5ml×2回(経口) 12,600円/回
B) ロタテック(5価)  2ml×3回(経口)   8,100円/回
 接種時期 A) 生後6週から24週未満(4週以上の間隔で) 同時接種可
  ・間隔 B) 生後6週から32週未満(   〃    )   〃

※ どちらも弱毒生ワクチンで、ロタウイルス胃腸炎による重症化・入院や死亡を減らす効果が認められています。製法等が異なるため単純な比較は出来ませんが、明らかな優劣はないとされています。主な副反応は下痢・嘔吐等で、週数が限定されているのは腸重積を増やさないためです。初回は15週未満が推奨されています。

(院内報10・11月号より)

インフルエンザ予防接種 10月から始まっています

2012年11月07日 | 予防接種
 ご案内が遅くなりましたが、インフルエンザの予防接種が10月から始まっています。 接種量、回数、間隔、料金は昨年と同じです。 流行開始前に接種し終えるためには、年明け頃がリミットとなります。早めにお申し込み下さい。

 生後6カ月~2歳 0.25ml 2回(2~4週間隔) 2,500円
 3歳~12歳    0.5ml 2回(2~4週間隔) 3,500円
 13歳~64歳    0.5ml 1回 or 2回(1~4週間隔) 3,500円
              (小児には2回接種をお勧めしています)
(院内報10・11月号より)

不活化ポリオ 単独は9月から 四種混合は11月から接種開始

2012年11月07日 | 予防接種
 不活化ポリオ単独ワクチンの接種が9月から始まっています。接種回数等については表でご確認下さい。なお、このワクチンはフランス製で針付きの注射器になっていますが、日本製と比べて針の切れが悪く、他の予防接種よりも痛みがあるかもしれません。痛みが少ないように工夫しながらやっていますが、いかんともしがたい。必要なワクチンなので全部済ませるようにして下さい。

 11月から始まる四種混合(三種混合+ポリオ)は、これまで三種混合もポリオも1回も受けていない子が対象となります。三種混合とポリオを3回接種し終えた子の追加接種が、四種混合1回で済むようになるかどうかは未定です。



(院内報10・11月号より)

生後6カ月までの予防接種スケジュール 四種混合・ロタ・ヒブ・肺炎球菌・BCG

2012年11月07日 | 予防接種
乳児期に接種すべきワクチンの種類が大幅に増えてスケジュールの組み方が大変難しくなっています。5種類12~13回のワクチンを生後6カ月までに接種できるスケジュールの例を紹介しています。

生後6カ月までの予防接種スケジュール 2012年11月1日版 くば小児科クリニック

当院では同時接種を行っていますが、次のような方針で接種しています。
1)注射は同時に2種類までとする。組み合わせは「ヒブと肺炎球菌」「三種混合と不活化ポリオ」のパターンを原則としていますが、進み方によってはその他の組み合わせも可能です。
2)BCGと他の注射は同時に接種しない。(医学的にダメなわけではありませんが)
3)ロタウイルスワクチン(ロタリックス・ロタテック:経口)については、他の4種類のいずれとも同時接種可能。ロタは原則として他と同時接種で進めることにする。したがって、1)2)の原則と合わせると、ヒブ・肺炎球菌+ロタ、四種混合+ロタ、BCG+ロタのいずれかの組み合わせになる。

例として2つのパターンをお示ししましたが、いずれも生後2ケ月から15週間7回の受診で全ての接種を終えることができます。例1(BCG+ロタを入れる)の方がロタウイルスワクチンを早く終了することができます。

なお、どうしてもご希望の方には全部単独接種も可能ですが、受診回数も多くなり終了までの期間も長くなります。

同時接種については、一つ一つのワクチンのリスクを更に高めることはないということが世界的に共通の認識となっており、日本小児科学会でも同時接種を推奨しております。

日本小児科学会の予防接種の同時接種に対する考え方(PDF)

日本脳炎と不活化ポリオ予防接種との関連を疑われた死亡事例報道についてのコメント(11/1改訂版)

2012年11月06日 | 予防接種
 10月中旬から、日本脳炎と不活化ポリオ接種後にみられた死亡事例について報道されています。詳細な情報が手元にない段階で、因果関係の証明や否定は元々非常に困難だという前提の元に、コメントしてみます。(10/26に書いた文章に、10/31の厚労省委員会の結果を受けて加筆修正しました。)

1)日本脳炎 10歳男児 10月17日 接種後5分で心停止、2時間半で死亡
 このケースは接種後5分には心肺停止していたと伝えられていますので、予防接種という行為との直接的な関係が考えられますが、アナフィラキシー(強いアレルギー反応)による経過としては少し早すぎるように思われます。

 この年齢で「接種を嫌がって逃げたところを待合室で取り押さえて接種した」ということと、何らかの疾患で薬を飲んでいたという情報から、軽度の発達障害などの基礎疾患があったと考えられますが、死亡との関係も不明です。不整脈を起こしやすい疾患や併用薬の副作用も疑われますが、原因やワクチンとの因果関係がこれ以上明らかになることはないと思われます。

 このやや特殊な1例だけを根拠に日本脳炎の接種全体を見合わせることにはならないものと予想されます。(10/31の委員会でも同様の判断でした)

2)日本脳炎 10歳未満の子ども 7月 接種後7日目に急性脳症にて死亡
 接種翌日から感冒症状、2日後に発熱、痙攣の重積、7日目に死亡。剖検はしておらず、ワクチンとの因果関係は否定できないものの、夏かぜのウイルス感染による脳炎・脳症などの紛れ込み事故の可能性が強そうに思われます。基礎疾患として甲状腺機能低下症、てんかん、発育遅延があったとのことです。

 日本脳炎は2009年に新しいワクチンで接種が再開されてから1000万接種以上で関連が疑われた死亡事例はありませんでした。なお、この2例で使用されたワクチンは阪大微研製で、当院で採用している化血研ではありません。

 また、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)はウイルス感染やワクチン接種後などに生じる原因不明のアレルギー性脱髄疾患で、現在のワクチンはより安全性が高められたはずですが、引き続き発生頻度(1/131万)に注意は必要です。

3)不活化ポリオ 6ケ月~1歳の女児 9月 接種後18日で嘔吐、翌日死亡
 これは明らかに「紛れ込み事故」と断言できます。不活化ワクチン接種後ずっと元気だったのに18日目にいきなり症状が出ることは考えられません。

 現在、日本は乳児死亡率が世界で最も低い国の一つですが、それでも千人あたり2~3人、全国で毎年100万人生まれた赤ちゃんのうち2000~3000人(毎週50人前後)が1歳前に亡くなっています。その多くは先天的な重い病気や小さな未熟児などですが、元気に育っていた赤ちゃんが突然亡くなる「乳幼児突然死症候群(SIDS)」という病気により、かつての年間500人からここ数年は年間150人程度に減ったものの、全国で毎週3人前後の赤ちゃんが突然死しているのです。(SIDS の最大の要因は父親・母親の喫煙です)

 今回の3例はSIDSではなく年長児も含まれていますが、様々なウイルス感染による脳炎・脳症や心筋炎、それまで診断のついていなかった病気などによって、元気な子どもが急激に重症化したり死亡したりすることも稀にあります。

 特に乳幼児期は多くの予防接種を短い間隔で接種している時期ですから、接種後の一定の期間に重篤な症状が出たり死亡した例が発生することは避けがたく、ワクチンとの関連が強いのか、何らかの病気によるものかを区別することは困難になります。そこで、定期接種であれば因果関係が不明な紛れ込み事故も含めて予防接種の有害事象として救済措置がとられることになるのです。

 ポリオの生ワクチンから不活化ワクチンへの切り替えの際に、マスコミは「危険な生ワクチン」「安全な不活化ワクチン」というレッテルを貼って混乱を助長しました。これまでこの院内報でもお伝えしたように、ワクチンに限らず医療には「ゼロリスク」というものはありません。不活化ワクチンでも非常に少ないとはいえ他の予防接種と同程度の頻度で急性の副反応や、ワクチンと関係のない「紛れ込み事故」が起こり得ることを理解した上で、病気にかかった場合の大きなリスクも考慮して判断していただければと思います。

 日本脳炎に関しては、人から人への感染が無いことと、青森県内にいるなら感染のリスクは非常に低いことから、もし心配なら少し様子を見てから接種しても問題は生じないでしょう。ポリオは未接種者が多く輸入感染による流行が懸念されていることに加えて、今回の死亡例と接種との因果関係は否定的なことから、接種を見合わせるべきではありません。

リンク
第7回予防接種部会日本脳炎に関する小委員会資料(2012.10.31)(厚生労働省)

日本脳炎・不活化ポリオ予防接種との関連を疑われた死亡事例報道について 現時点でのコメント

2012年10月27日 | 予防接種
 10月中旬から、日本脳炎と不活化ポリオ接種後にみられた死亡事例について報道されています。詳細な情報が手元になく、また、因果関係の証明というのは元々非常に困難だという前提の元に、わかる範囲でコメントしてみます。

1)日本脳炎 10歳男児 10月17日 接種後2時間半で死亡

 このケースは接種後5分には心肺停止していたと伝えられていますので、接種との直接的な関係が考えられますが、アナフィラキシー(強いアレルギー反応)によるショックの経過としては早すぎるように思われます。

 この年齢で「接種を嫌がって逃げたところを待合室で取り押さえて接種した」ということと、何らかの疾患で薬を飲んでいたという情報から、軽い発達の問題や基礎疾患があったことも疑われますが、それが関係あるのかどうかも不明です。不整脈を起こしやすい特別な疾患などの可能性もありますが、おそらく原因やワクチンとの因果関係が明らかになることはないでしょう。

 このやや特殊とも言える1例だけで日本脳炎の接種全体を見合わせることにはならないものと予想されます。

2)日本脳炎 10歳未満の子ども 7月 接種後約1週間で急性脳症にて死亡

 接種後の発症日数や、病状の詳細な経過なども不明で、剖検の情報もないようなので、ワクチンとの因果関係がある程度疑われるのか、ウイルス感染による脳炎・脳症などの「紛れ込み事故」の可能性が強いのかも判断できません。このケースでは厚労省による公表の遅れが不信感を増幅させてしまいました。

 日本脳炎は2010年に新しいワクチンで接種が再開されてから、接種との関連が疑われた死亡事例はありませんでした。なお、この2例で使用されたワクチンは阪大微研の製品で、当院で使用している化血研ではありませんでした。

3)不活化ポリオ 6ケ月~1歳の女児 9月 接種後18日で嘔吐、翌日死亡

 これは明らかに「紛れ込み事故」と言えます。不活化ワクチン接種後ずっと元気だったのに18日目にいきなり症状が出ることは考えられません。

 現在、日本は乳児死亡率が世界で最も低い国の一つですが、それでも千人あたり2~3人、全国で毎年100万人生まれた赤ちゃんのうち2000~3000人(毎週50人前後)が1歳前に亡くなっています。その多くは先天的な重い病気や小さな未熟児などですが、元気に育っていた赤ちゃんが突然亡くなる「乳幼児突然死症候群(SIDS)」という病気により、かつての年間500人から150人程度に減ったものの、今も全国で毎週3人前後の赤ちゃんが突然死しているのです。(SIDS の最大の要因は父親・母親の喫煙です)

 今回の3例はSIDSではなく年長児も含まれていますが、様々なウイルス感染による脳炎・脳症や心筋炎、それまで診断のついていなかった病気などにより、元気な子どもが急激に重症化したり死亡したりすることも稀にあります。

 特に乳幼児期は多くの予防接種を短い間隔で接種している時期ですから、接種後の一定の期間に重篤な症状が出たり死亡した例が発生することは避けがたく、ワクチンによるものか何らかの病気によるものかを区別することは困難になります。そこで、定期接種であれば因果関係が不明な「紛れ込み事故」も含めて予防接種に関連した死亡として救済措置がとられることになるのです。

 ポリオの生ワクチンから不活化ワクチンへの切り替えの際に、マスコミは「危険な生ワクチン」「安全な不活化ワクチン」というレッテルを貼って混乱を助長しました。これまでこの院内報でもお伝えしたように、ワクチンに限らず医療には「ゼロリスク」というものはありません。不活化ワクチンでも非常に少ないとはいえ他の予防接種と同程度の頻度で急性の副反応や、ワクチンと関係のない「紛れ込み事故」が起こり得ることを理解した上で、病気にかかった場合の大きなリスクも考慮して冷静に判断していただければと思います。

 日本脳炎に関しては、人から人への感染がないことと、青森県内にずっといるなら感染のリスクは低いことから、少し待って様子を見てからでも問題は生じないでしょう。ポリオは未接種者が多く輸入感染による流行が懸念されていることに加えて、死亡例と接種との因果関係は否定的なことから、接種を見合わせるべきではありません。なお、10月31日に厚労省の委員会で医学的な検証と検討がなされる予定で、その情報がわかりましたらまたお伝えします。

お子さんのBCG接種痕を確認してみましょう 15個以上? 正しい位置? 正常な反応と異常な反応

2012年03月08日 | 予防接種
BCGの接種部位は上腕外(伸)側のほぼ中央(三角筋下端)部に行うことが定められています
http://www.jata.or.jp/rit/rj/bcg0308.htm
 ↓
図(引用)

お子さんの接種痕の位置を確かめてみて下さい。一部の医療機関で、かなり前の方に接種していたり、三角筋(肩の筋肉)の部位に接種してたり、斜めに接種しているところまであり、大変気になります。

BCGの接種痕は大人になれば殆どわかりませんが、小児期には針痕がかなり目立つので、全18個を残して免疫をつけるのが目標であるのは当然として、2カ所を綺麗に並べて接種するよう気をつけたいものです。(針痕は平均15個以上なら問題ないとされていますが最低でも16個は欲しいところ)

また、BCG接種痕は大きくなると成長につれて2カ所の間が離れて来るので、近くなりすぎないように注意しながら、スタンプ(管針)の外側の輪っかを少し重ねるようにして接種すると綺麗に並びます。(これは公的には書かれてはいませんが個人的に工夫しているところ)

正常の反応

BCG接種痕で問題になるのは2つ。正常の反応は接種後4週頃~2ケ月位にかけて、赤く腫れて、一部が膿疱(うみのようなもの)になり、かさぶたになって、はがれる。このときにかき潰したりかさぶたをはいだりしないことが大事。普通に洗っても構わない。手で優しく。

異常な反応

結核に罹ったことのある人にBCGを接種すると、接種後3日~10日以内に赤く腫れたりが膿疱(うみのようなもの)になる反応が起こる場合がある(コッホ現象)ので、早期に出た場合には接種した医療機関に受診して確かめる必要がある。私は今までに経験していない。今の3-5M児への接種でコッホ現象がみられる可能性は限りなく小さい。経過をみて数日で治まるようなら心配ない。

Q.今からインフルエンザの予防接種をしても間に合いますか? A.効果は限定的ですが(以下本文)

2012年01月27日 | 予防接種
インフルエンザの予防接種は基本的には流行開始前に終わらせるのが原則ですので、今から接種しても現在流行中のA香港型に対する効果は期待しにくいかと思います。
ただし、流行開始後1ケ月も経ってから罹る子もいることは事実ですので、A香港型に対する効果もゼロと言うわけではないと思います。
最近の通例では、流行のピークが過ぎた後に、B型やA型の他のタイプ(この場合はA2009)との混合流行になることが多いので、そちらに対する効果はある程度期待できます。
いずれにせよ、インフルエンザの予防接種は感染そのものを防ぐのではなく重症化を防ぐことが主な目的ですので、予防効果は限定的であることを前提にしてご相談下さい。