10月中旬から、日本脳炎と不活化ポリオ接種後にみられた死亡事例について報道されています。詳細な情報が手元になく、また、因果関係の証明というのは元々非常に困難だという前提の元に、わかる範囲でコメントしてみます。
1)日本脳炎 10歳男児 10月17日 接種後2時間半で死亡
このケースは接種後5分には心肺停止していたと伝えられていますので、接種との直接的な関係が考えられますが、アナフィラキシー(強いアレルギー反応)によるショックの経過としては早すぎるように思われます。
この年齢で「接種を嫌がって逃げたところを待合室で取り押さえて接種した」ということと、何らかの疾患で薬を飲んでいたという情報から、軽い発達の問題や基礎疾患があったことも疑われますが、それが関係あるのかどうかも不明です。不整脈を起こしやすい特別な疾患などの可能性もありますが、おそらく原因やワクチンとの因果関係が明らかになることはないでしょう。
このやや特殊とも言える1例だけで日本脳炎の接種全体を見合わせることにはならないものと予想されます。
2)日本脳炎 10歳未満の子ども 7月 接種後約1週間で急性脳症にて死亡
接種後の発症日数や、病状の詳細な経過なども不明で、剖検の情報もないようなので、ワクチンとの因果関係がある程度疑われるのか、ウイルス感染による脳炎・脳症などの「紛れ込み事故」の可能性が強いのかも判断できません。このケースでは厚労省による公表の遅れが不信感を増幅させてしまいました。
日本脳炎は2010年に新しいワクチンで接種が再開されてから、接種との関連が疑われた死亡事例はありませんでした。なお、この2例で使用されたワクチンは阪大微研の製品で、当院で使用している化血研ではありませんでした。
3)不活化ポリオ 6ケ月~1歳の女児 9月 接種後18日で嘔吐、翌日死亡
これは明らかに「紛れ込み事故」と言えます。不活化ワクチン接種後ずっと元気だったのに18日目にいきなり症状が出ることは考えられません。
現在、日本は乳児死亡率が世界で最も低い国の一つですが、それでも千人あたり2~3人、全国で毎年100万人生まれた赤ちゃんのうち2000~3000人(毎週50人前後)が1歳前に亡くなっています。その多くは先天的な重い病気や小さな未熟児などですが、元気に育っていた赤ちゃんが突然亡くなる「乳幼児突然死症候群(SIDS)」という病気により、かつての年間500人から150人程度に減ったものの、今も全国で毎週3人前後の赤ちゃんが突然死しているのです。(SIDS の最大の要因は父親・母親の喫煙です)
今回の3例はSIDSではなく年長児も含まれていますが、様々なウイルス感染による脳炎・脳症や心筋炎、それまで診断のついていなかった病気などにより、元気な子どもが急激に重症化したり死亡したりすることも稀にあります。
特に乳幼児期は多くの予防接種を短い間隔で接種している時期ですから、接種後の一定の期間に重篤な症状が出たり死亡した例が発生することは避けがたく、ワクチンによるものか何らかの病気によるものかを区別することは困難になります。そこで、定期接種であれば因果関係が不明な「紛れ込み事故」も含めて予防接種に関連した死亡として救済措置がとられることになるのです。
ポリオの生ワクチンから不活化ワクチンへの切り替えの際に、マスコミは「危険な生ワクチン」「安全な不活化ワクチン」というレッテルを貼って混乱を助長しました。これまでこの院内報でもお伝えしたように、ワクチンに限らず医療には「ゼロリスク」というものはありません。不活化ワクチンでも非常に少ないとはいえ他の予防接種と同程度の頻度で急性の副反応や、ワクチンと関係のない「紛れ込み事故」が起こり得ることを理解した上で、病気にかかった場合の大きなリスクも考慮して冷静に判断していただければと思います。
日本脳炎に関しては、人から人への感染がないことと、青森県内にずっといるなら感染のリスクは低いことから、少し待って様子を見てからでも問題は生じないでしょう。ポリオは未接種者が多く輸入感染による流行が懸念されていることに加えて、死亡例と接種との因果関係は否定的なことから、接種を見合わせるべきではありません。なお、10月31日に厚労省の委員会で医学的な検証と検討がなされる予定で、その情報がわかりましたらまたお伝えします。
1)日本脳炎 10歳男児 10月17日 接種後2時間半で死亡
このケースは接種後5分には心肺停止していたと伝えられていますので、接種との直接的な関係が考えられますが、アナフィラキシー(強いアレルギー反応)によるショックの経過としては早すぎるように思われます。
この年齢で「接種を嫌がって逃げたところを待合室で取り押さえて接種した」ということと、何らかの疾患で薬を飲んでいたという情報から、軽い発達の問題や基礎疾患があったことも疑われますが、それが関係あるのかどうかも不明です。不整脈を起こしやすい特別な疾患などの可能性もありますが、おそらく原因やワクチンとの因果関係が明らかになることはないでしょう。
このやや特殊とも言える1例だけで日本脳炎の接種全体を見合わせることにはならないものと予想されます。
2)日本脳炎 10歳未満の子ども 7月 接種後約1週間で急性脳症にて死亡
接種後の発症日数や、病状の詳細な経過なども不明で、剖検の情報もないようなので、ワクチンとの因果関係がある程度疑われるのか、ウイルス感染による脳炎・脳症などの「紛れ込み事故」の可能性が強いのかも判断できません。このケースでは厚労省による公表の遅れが不信感を増幅させてしまいました。
日本脳炎は2010年に新しいワクチンで接種が再開されてから、接種との関連が疑われた死亡事例はありませんでした。なお、この2例で使用されたワクチンは阪大微研の製品で、当院で使用している化血研ではありませんでした。
3)不活化ポリオ 6ケ月~1歳の女児 9月 接種後18日で嘔吐、翌日死亡
これは明らかに「紛れ込み事故」と言えます。不活化ワクチン接種後ずっと元気だったのに18日目にいきなり症状が出ることは考えられません。
現在、日本は乳児死亡率が世界で最も低い国の一つですが、それでも千人あたり2~3人、全国で毎年100万人生まれた赤ちゃんのうち2000~3000人(毎週50人前後)が1歳前に亡くなっています。その多くは先天的な重い病気や小さな未熟児などですが、元気に育っていた赤ちゃんが突然亡くなる「乳幼児突然死症候群(SIDS)」という病気により、かつての年間500人から150人程度に減ったものの、今も全国で毎週3人前後の赤ちゃんが突然死しているのです。(SIDS の最大の要因は父親・母親の喫煙です)
今回の3例はSIDSではなく年長児も含まれていますが、様々なウイルス感染による脳炎・脳症や心筋炎、それまで診断のついていなかった病気などにより、元気な子どもが急激に重症化したり死亡したりすることも稀にあります。
特に乳幼児期は多くの予防接種を短い間隔で接種している時期ですから、接種後の一定の期間に重篤な症状が出たり死亡した例が発生することは避けがたく、ワクチンによるものか何らかの病気によるものかを区別することは困難になります。そこで、定期接種であれば因果関係が不明な「紛れ込み事故」も含めて予防接種に関連した死亡として救済措置がとられることになるのです。
ポリオの生ワクチンから不活化ワクチンへの切り替えの際に、マスコミは「危険な生ワクチン」「安全な不活化ワクチン」というレッテルを貼って混乱を助長しました。これまでこの院内報でもお伝えしたように、ワクチンに限らず医療には「ゼロリスク」というものはありません。不活化ワクチンでも非常に少ないとはいえ他の予防接種と同程度の頻度で急性の副反応や、ワクチンと関係のない「紛れ込み事故」が起こり得ることを理解した上で、病気にかかった場合の大きなリスクも考慮して冷静に判断していただければと思います。
日本脳炎に関しては、人から人への感染がないことと、青森県内にずっといるなら感染のリスクは低いことから、少し待って様子を見てからでも問題は生じないでしょう。ポリオは未接種者が多く輸入感染による流行が懸念されていることに加えて、死亡例と接種との因果関係は否定的なことから、接種を見合わせるべきではありません。なお、10月31日に厚労省の委員会で医学的な検証と検討がなされる予定で、その情報がわかりましたらまたお伝えします。